クルマの運転席には、クルマが踊っているような絵が描かれたスイッチがありますが、これは一体何のために使用するものなのでしょうか。
■押して良いの!? 押したら何が起きる?
クルマの運転席まわりには様々なスイッチが備え付けられていますが、中には「これって何?」と思ってしまうような“謎のスイッチ”が存在します。
例えば、クルマが踊っているようなイラストが描かれたスイッチがありますが、これは一体何のためのものなのでしょうか。
この一見すると“クルマがダンスしている”ようなスイッチの正体は、簡単にいえば「車両の過度な挙動を抑える機能」をオフにするためのスイッチで、メーカー各社によって機能の名称は異なります。
トヨタであればVSC(ビークルスタビリティコントロール)、ホンダであればVSA(ビークルスタビリティアシスト)、日産ならVDC(ビークルダイナミクスコントロール)といった呼び方となっています。
一例としてホンダのVSAの機能を詳しく見てみると、「車輪がロックするのを防止するABS(アンチロックブレーキシステム)」と「滑りやすい路面でのタイヤの空転を抑えるTCS(トラクションコントロールシステム)」、そして「横滑りを抑制する機能」が一体となっている装置となり、作動させることで急ハンドルや急ブレーキ時でも車両の動作が安定するようにシステムがサポートしてくれるのです。
また他メーカーのシステムもほぼ同様で、旋回時や滑りやすい路面を走行する際の挙動を安定させてくれる機能と言えます。
これらの安全装置は、エアコンやデフロスターのスイッチなどと異なり、基本的にクルマが稼働しているときは常に作動(スイッチがON)している状態。
つまり機能をわざと止める(スイッチをOFFにする)方が特殊な行動に当たるため、スイッチにも「ON」ではなく「OFF」と記載されているのです。
そこでひとつ疑問となるのが、わざわざこの機能をOFFにするスイッチが存在する理由です。
なぜ、クルマの挙動を安定させることで安全性を高めているVSCやVSAをカットする必要があるのか、それは一体どのような場面なのかを自動車ディーラーの販売スタッフに質問したところ、以下の回答がありました。
「VSCやVSAなどは安全に運転するための機能なので、通常のクルマの使用環境内であれば、基本的にOFFにすることはありませんし、推奨されません。
しかし、雪道やぬかるんだ泥道にはまってタイヤが動かなくなったような状況では、この安全機能がエンジンパワーやタイヤの動きを極端に制御してしまい、上手く路面にパワーを伝えられなくなることが発生します。
そのような限られた場面においては、この機能をOFFにすることで脱出しやすくなるのです。
ただし安全のためにも、解除後は再び機能をONにすることを忘れないようにしてください(自動車ディーラーの販売スタッフ)」
このように、非常に稀な状況においては機能を切る必要があるため、手動でOFFに操作できるスイッチが設置されているということでした。
とはいえ、VSCやVSAはクルマの過度な挙動を抑え安全に運転するために役立つ機能なので、普段の運転においてあえてOFFにするシチュエーションは滅多に無いといえます。
雪道やぬかるんだ泥道でタイヤが動かなくなるなど、特定のシチュエーション以外ではOFFにしないように気をつけましょう。