ホンダ「オデッセイ」がまもなく復活します。すでに国内ミニバン市場は活気を見せていますが、オデッセイはどのようなポジションを担うのでしょうか。
■「オデッセイ」再販… ライバル多きミニバン市場でどう戦う?
ホンダ「オデッセイ」は2021年をもって国内生産を終了し、在庫も完売した2022年夏で28年の歴史に幕を閉じて日本では終了。
あとは北米(車名は同じだが車体はひとまわり大きい別モデル)や中国(ハンドル位置は違うが日本で販売していたオデッセイと基本的に同じ)など、国外で生き続けていく――はずでした。
しかし、ホンダは2023年春にオデッセイの国内再投入を宣言。すでに先行予約がはじまっており、今年4月の発表によると「発売は2023年冬」とのことなので、近日中にデリバリーもはじまることでしょう。
こうして国内に復活するオデッセイですが、フルモデルチェンジした新型かといえばそうではありません。
国内再投入されるモデルは中国の工場で作られる輸入車で、かつて日本で販売していた世代をブラッシュアップしたものとなります。
スタイリングは、グリルの水平バーが4本から5本に増えるなどさりげなくイメチェン。
一方インテリアは運転環境が少し変化しました。
ATセレクターは一般的なセレクトレバーからボタン式のギヤセレクターに変更されるほか、アクセルオフ時の減速度が3段階に切り替えられる減速セレクター(パドル)、そしてノーマルのほか「ECON」や「SPORT」が選べるドライブモードスイッチを組み合わせます。
2列目に移ると、包み込むような柔らかさが自慢のセパレートシートは4ウェイの電動調整式となり、アームレストは小物が置けるトレー付きに進化。ワイヤレスチャージャーも用意されます。
また、安全運転支援システムには近距離衝突軽減ブレーキ、オートハイビーム、急アクセル抑制機能(販売店でのセッティングが必要)などを追加。
車載通信モジュール「Honda CONNECT(ホンダ コネクト)」を搭載するなど最新タイプへアップデートされるなどナビも進化しました。
つまり販売終了以前のタイプに対してマイナーチェンジを受けて進化した仕様といっていいでしょう。
ちなみにパワートレインはハイブリッドの「e:HEV」のみで、価格は公表されていませんが480万円から517万円程度になる模様です。ガソリン車がなくなったこともあり、価格レンジは上がりました。
さて、気になるのが今回のオデッセイ復活で日本のミニバンマーケットにどんな変化を与えるかということ。
しかし、結論から言えば大きな変化はないでしょう。
■「アル/ヴェル」のような存在にはならない?
いま、ミディアムサイズを超えるミニバンの代表格といえばトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」で、今年フルモデルチェンジしたばかりです。
そんなアルファード/ヴェルファイアとオデッセイには「車体が大きめの上級ミニバン」という共通点が存在。
とはいえ、「アルファードを買おうと思っていたけれど、オデッセイの復活を聞いてオデッセイを買うことにした」とか「どちらを買うべきか迷っている」という人はほとんどいないのではないでしょうか。
アルファード/ヴェルファイアには、独自の良さがあります。
たとえば室内の広さとか、スタイルの立派さ、同等とした雰囲気など。
いっぽうでオデッセイにもアルファード/ヴェルファイアにはない独自も良さもあり、それは「走り」とか「ハンドリング」といった運転を楽しむドライバー視点での美点といえるでしょう。
ドライバーズカーとして、いかにも「箱」ではない背の低いミニバンが好きという人にとって、オデッセイはアルファードやヴェルファイアに対しても魅力が高いのです。
それを踏まえて、復活するオデッセイはどんな人が買うかといえば、まずは「ミニバンだけをドライバーとして走りを楽しみたい人」。それからオデッセイファンやホンダファンではないでしょうか。
今回の再販売は「やっぱりオデッセイでなければ」とか「ホンダの大型ミニバンが欲しい」という人に向けたものと捉えていいでしょう。
もちろん、ホンダ自身も復活するオデッセイがたくさん売れるとは考えていないでしょう。「なんとかしてアル/ヴェルを超えてやる……」という気持ちではないのです。
しかし、ラインナップをそろえることで「オデッセイが欲しい」と言ってくれるお客様にしっかり届けることが大切なのではないでしょうか。
もうひとつ、ホンダにとってオデッセイのポジションは意味があります。
いま、ホンダの国内販売は「N-BOX」や「フリード」など価格帯の低めのクルマが中心。来年春に発売される小型SUV「WR-V」もリーズナブルな価格が大きな売りとなります。
オデッセイやフラッグシップセダン「レジェンド」など高価格帯のモデル消えたままでいると、「ホンダは軽自動車とコンパクトカーのブランド」というイメージがつきかねません。
しかし、将来的には高価格帯のモデルや電気自動車などもきちんと売っていく必要があるのです。
ホンダは2040年までにエンジン付きの自動車をやめ、EVと燃料電池車だけのメーカーになることを宣言していますが、そうなるとガソリン車はハイブリッドカーを中心とする今よりも車両価格帯がアップすることは避けられません。
そんな時代に備えて、しっかりと「ある程度価格帯が上のモデル」をラインナップに用意し、それによって「安い車だけのブランドというイメージ」とならないようにする。
それが「決してたくさん売れるわけではない」ことはわかっているうえで再投入する「オデッセイ」の役割であり、同様に国内復活を果たす「アコード」の役割でもあるということです。