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なぜ「馬力の表記」バラバラ? みんな知ってる「PS」使わず「kW」を表記する意味とは

くるまのニュース 2024年1月11日 19時40分

クルマをちょっとでも好きなら気になってしまうのが“馬力”。その馬力の表記は、車検証上kWという単位が用いられている他、国外では表記が違ったりします。なぜ日本では一般的な馬力はカッコ書きで、kW表記を基本としているのでしょうか。今回は“馬力表記”について解説します。

■クルマ好きなら無視できない“馬力”! なぜ表記がバラバラ?

 日産「GT-R NISMO」は国産最強の“600PS”で、「ダッジ・チャレンジャーSRTデーモン170」は市販車ながらなんと“1025PS”。「ブガッティ・シロン スーパースポーツ」はさらに上を行く、最高出力1600PS。

 多くのクルマ好きは、エンジン最高出力の数字にときめきを感じることができるに違いありません。そんなエンジン出力の数字ですが、メディアなどでは「PS」という単位で表示するのが一般的だし、クルマ好きも「PS」に馴染みがあるでしょう。

 しかし、国内において自動車のカタログやウェブサイトに示されている「主要諸元」を見ると最高出力のメイン表記は「PS」ではありません。「kW」がメインで、「PS」はあくまでカッコで括られた補助的な表記に留まっているのです。

 とはいえ、多くの人はやはり「GT-R NISMOは国産最強の441kW」よりも「GT-R NISMOは国産最強の600PS」と表現したほうがイメージが湧くのではないでしょうか。

 そもそも、このカタログ表記に使われる「kW」と一般的には「PS」のほうがイメージしやすいというギャップは、どこから生まれたのでしょう。

 実は、kW(キロワット)が使われるようになった、正確にいうと「使わななければいけなくなった」のは20年ちょっと前のこと。1999年に計量法(正確に量を計るための基準などを定めた日本の法律)が大きく改正され国際単位系である”SI”単位系をしなければならなくなったからです。

 つまりカタログなどの表記がPSからKWに変わったのは「法律が変わったから」といっていいでしょう。

「PSなら世界共通では?」と思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。イギリスやアメリカではホースパワー(Horse Power=馬力)を示す「HP」で1HPが1.01387PSだし、イタリアでは現地の言葉で「馬(Cavallo)と蒸気(Vapore)「CV」で1 CVが0.98632PSとなっています。どちらも1が示す力の大きさは「PS」とほぼ同じながら微妙に異なるので、比べる際にはややこしいですよね。

 そこで、正式な技術資料などでは国際的に統一された基準である「kW」を使いましょう、というのがグローバルの流れ。それを受けて1999年に法律が改正されたというわけです。国ごとに違いのある単位ではなく、国際的に通用する単位を使いましょう、と解釈すればいいでしょう。ちなみに1PSは0.7355kWです。

 今の日本では、長さや距離を測る単位として「cm」や「m」が一般的に使われています。しかし、かつては「寸」や「尺」、そして長くなると「里」や「町」でした。また重さは「kg」ではなく「貫」や「斤」などが使われていました。
 また、アメリカでは現在でも長さは「インチ」や「フィート」、距離は「マイル」、重さは「ポンド」などが一般的に使われています。

 しかしそれは、海外から訪れた人がややこしいだけでなく、産業に関してもアメリカの設計図面や製品仕様書が海外では通じないといった弊害も生じます。

 そういった、ローカル(もしくは世界で共通化されていない)単位を世界で通用する単位に切り替えるのが、単位の標準化ということなのです。

 日本でも世界基準である「SI単位系」が使われるように法律が改正された背景には、産業におけるグローバル化で不利にならないようにという狙いもあるのです。

 話をクルマに戻すと、トルクが「kg-m」から「Nm」に移行したのも同じ理由。しかしこちらは1kg-mが9.80665N・mと、従来の表記を10倍すればおおよその計算ができるので、kWに比べるとイメージしやすいですよね。

 いっぽうで、「600PS」ならわかるけれど、「441kW」と言われてもピンとこないという人も多いことでしょう。正直なところPSのほうが大きさをイメージしやすいところです。もちろん筆者もその一人です。

 だから、今でもカタログなどには「PS」が併記され、メディアでもそれを使っている現状があるのです。

このような単位の変化はすぐには慣れないものでしょうが、日本で「尺」や「寸」が年配の人にしか活用しなくなったのと同様に、おそらく数十年たてばPSよりもkWのほうが一般的になるに違いありません。

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