タイで開催されたモーターショー「タイ・モーター・エクスポ2023」に、ホンダ「シティ」が展示されていました。タイで展開される「現代のシティ」はどのようなクルマなのでしょうか。
■ホンダ新型「シティ」実車展示! 現代に残ってる“シティ”はどんなクルマ?
東南アジアのタイで開催されたモーターショー「タイ・モーター・エクスポ2023」。会場には興味深い日本車がたくさん展示されていますが、そのなかの1台がホンダ「シティ」です。
シティは、ホンダが1981年から1995年にかけて日本で展開していた小型車の名前なので、年配のクルマ好きの中には「懐かしいね、シティ」と感じる人もいるかもしれません。初代は背の高いパッケージ、逆に2代目は低いプロポーションが印象的でした。
もちろん、タイで販売しているシティはかつてのそれとは別のクルマです。しかし、ある意味その後継的存在であると言って良いでしょう。
かつて日本で販売していたモデルとの共通点はまず、ホンダのコンパクトカーであること。今販売しているシティも、Bセグメントのコンパクトカーです。
一方で異なるのは、ボディタイプ。かつて日本で売っていたシティは2ボックスハッチバックでしたが、タイのシティはハッチバックではなくセダンのみだったのです。
実は日本のマーケットとも関連が深く、(日本で販売していたシティとは異なる)アジア向けモデルとしての歴史を見ると、初代シティは「シビックフェリオ」、2代目は「フィットアリア」、そして4代目は「グレイス」として車名を変えて日本でも販売していたのです。2代目以降は設計も含めてハッチバック「フィット」のセダン版というポジションでした。
しかし、大きく変わったのが2019年にフルモデルチェンジした5代目。それまで車名の異なる「ジャズ」として販売していたハッチバックモデルも改名し、「シティハッチバック」として販売されるようになったのです。
ところでハッチバックの「ジャズ」といえば、それは日本でいう「フィット」のことで、車体サイズもデザインも同じでした。
しかし、現行のシティハッチバックはフィットと決別。プラットフォームは共通でセンタータンクレイアウトも採用ですが、車体は日本のフィットが全長3995mm×全幅1695mmなのに対して、シティハッチバックは全長4345mm×全幅1748mmと一回り大きなサイズです。もちろんデザインもフィットとは全く違います。
なぜハッチバックの現行モデルは、(従来まで共通だった)日本のフィットに対して車体の大型化を行ったのでしょうか。
そこには、ふたつの理由が考えられます。ひとつは、ファミリーカーとしての使われ方。日本では車体が小さいことにも価値がありますが、ファミリーカーとしてフル活用する現地では、それよりもラゲッジルームの広さなどがアピールポイントとなります。そのため、フィットと同じボディだった従来よりも一回り大きくしたというわけ。
実は、現地販売されているトヨタ「ヤリス」も車体サイズは全長4160mm×全幅1730mmと、日本仕様(3940mm×全幅1695mm)よりも大きく、シティハッチバックと同じ戦略をとっていることが分かります。日本とのニーズの違いということです。
また、タイの人たちは“見栄え“を求めて大きな車体を好む傾向もあります。それも車体の大型化を進めた理由のひとつと考えて良いでしょう。
ところでシティといえば、かつて日本でブレイクした「シティ ターボ」や「シティ ターボII」をイメージする人もいることでしょう。元気の良い走りが特徴でした。
安心してください。実は現代のシティにもしっかりターボが用意されているのです。しかも「VTECターボ」で、排気量988ccの3気筒。122psを発生します(4気筒1.5Lガソリンエンジン組み合わせるハイブリッドの「e:HEV」も設定)。
そのうえ内外装をスポーティに仕立てた「RS」も存在。残念ながらMTの設定はなくトランスミッションはCVTのみですが、“最新のシティターボ”はなかなか魅力的です。
ちなみにパーキングブレーキはVTECターボ(ガソリン車)がサイドレバー式なのに対し、e:HEV(ハイブリッド車)は電子制御式にアップグレードされます。
現地での価格は、シティハッチバックのターボが59万9000バーツ(約250万円)から74万9000バーツ(約313万円)、e:HEVは84万9000バーツ(約355万円)です。
日本のフィットより高いことに驚きますが、タイは車両価格に物品税(税率は車両の仕様により異なるが2%~30%)が含まれており、日本の新車価格よりも高い傾向。そのうえ現在は為替が円安なので、日本円に換算すると高額となってしまいます。