2023年12月3日、トランスミッションメーカーのジヤトコは、変速機能付きe-Axleを搭載したピックアップトラック日産「タイタン」を世界初公開しました。どのようなモデルなのでしょうか。
■トランスミッション付きEV! 超スゴイ「タイタン」初公開
2023年12月3日、富士スピードウェイでニスモフェスティバル2023が開催されました。ここでトランスミッションメーカーのジヤトコは「変速機能付きe-Axle(イーアクスル)」を搭載したピックアップトラック日産「タイタン」を世界初公開しました。
タイタンは、日産が北米で製造・販売するフルサイズピックアップトラック。現行モデルは、2015年に登場した2代目です。
今回世界初公開となったのは、このタイタンのエンジンやパワートレインを取り除き、バッテリーとジヤトコが開発中の「変速機能付きe-Axle」を搭載したEVコンバートモデルです。
この変速機能付きe-Axleは、モーターと変速機が一体化したパワーユニットで、3速のギアを備えます。これにより、モーターのみの「変速機なしのe-Axle」3台分のトルクをカバーできるといいます。
これにより、大きな駆動力が必要な坂道やけん引時の走行を単一のモーターで賄えるため、強力なトルクが必要とされる大型のピックアップトラックや商用車の電動化をより行いやすくすることができます。
また、1速目はトルクが必要なシチュエーションで、2速目は街中の通常走行に、3速目は高速巡航と使い分けることで、電費の向上も図れます。
変速機能付きe-Axle自体は、5月にも開催された「人とくるまのテクノロジー展2023」で世界初公開されていましたが、今回同パワートレインを搭載した車両は世界初公開だといいます。
BEV(バッテリーEV)といえば、変速機を挟まない方式が現在では一般的ですが、なぜ変速機構を盛り込む方式を開発したのでしょうか。その経緯についてジヤトコの担当者は以下のようにコメントしています。
「モーターでパワーを出そうとすれば、モーターの数を増やすか、大きくするしかありません。そしてモーターはレアメタルを多用しており、生産において地政学的リスクを大きく抱えています。
それに対して、トランスミッションを搭載すれば、少ない数のモーターで複数のモーターと同様のパワーを出すことができます。そしてトランスミッションに使用されている素材は、ほとんどが鉄。モーターと違いリスクが低くなるほか、コストの低減も考えられます」
BEVであってもトランスミッションがあれば、電費を改善させたり、多くのパワーを引き出すことが可能。モーターを多用したり、バッテリーを大型化したりするよりも、様々なリスクを減らせるといいます。
ニスモフェスティバル2023の前日に、メディア向けにこの変速機能付きe-Axleを搭載したタイタンに同乗試乗する機会がありました。
助手席でその挙動を感じることができましたが、特に大きな変速ショックを感じることもなく、通常のEV同様“なめらか”そのものでした。
今回はプロトタイプの試作モデルということもあり、登坂路の走行やけん引といった体験はありませんでしたが、こうした困難なシチュエーションで変速機能付きe-Axleがどのような効果をみせるのか、次回の試乗にも期待したいところです。
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ニスモフェスティバル2023では、今回公開されたタイタンや、MT搭載のNV100のEVコンバートモデルや、キャラバンパラメディック(救急車)、キャラバンの変速機付きEVモデルの試乗イベントが行われました。同イベントの開催理由について、ジヤトコの担当者は以下のようにコメントしています。
「もともとジヤトコは ニスモフェスティバルでCVTの体験会などをやっていました。これをやることで、若いエンジニアなどがお客さんと直接触れ、意見をいただく希少な機会となっていました。今回は“何が出せるのか”と考えたときに、開発中の変速機付きEVがありました。
EV時代における変速機の可能性を感じていただけると思います」