冬に雪が降ったとき、事前にクルマのワイパーを立てておきますが、雪が降らないときでも立てておいたほうが良い場合があるようです。どういうことなのでしょうか。
■雪が降らなくても、寒さでワイパーがダメになることがある
雪が降る地域ではワイパーを立てているクルマをよく見かけます。雪があまり降らない地域ではなじみが薄いかもしれませんが、「雪が降る前にはワイパーを立てろ」と言われます。
では、なぜ降雪時にワイパーを立てる必要があるのでしょうか。積雪や路面凍結も多い栃木県のT整備士に聞いてみました。
「栃木県では雪の降る地域とあまり降らない地域がありますが、それでも冬になると多くのクルマが駐車時にワイパーを立てています。
これは雪対策として、雪の重みでワイパーの破損を防ぐ目的がありますが、雪が降らないときでも凍結対策のためにおこなっているものです。
氷点下になると路面だけでなくフロントガラスも凍結します。ワイパーを寝かしたままにしておくと凍結してしまい、フロントガラスに固着してしまうことがあるのです」
ワイパーは、ワイパー用モーターの動力を伝える「ワイパーアーム」、ワイパーゴムをガラス面に沿うように押し付ける「ワイパーブレード」、ガラスに密着し水や汚れ、雪などを払う「ワイパーゴム(ラバー)」で構成されています。
そのなかでもワイパーゴムは、多少の添加物などを加えているものの、主に天然ゴムでできています。
そしてゴムは気温の低下とともに柔軟性がなくなり収縮し、フロントガラスが凍結するような寒さでは密着していると張り付いてしまうのです。
このときに無理に動かすとモーターに余計な負荷がかかりますし、重さでアーム部分が曲がってしまい、最悪の場合はフロントガラスに傷をつけてしまうことも。この固着を防ぐためにワイパーを立てるのが一般的になっているのだそうです。
では、ワイパーを立てるのを忘れてしまい、ゴム部分が凍結したらどう対処すべきなのでしょうか。
「いきなり熱湯などをかけると、ゴムが急激に膨張して破損することもありますし、冷えたガラスが温度差で割れることもあって危険です。
できれば日光を当てて自然に解凍するか、エアコンやデフロスター(内側の曇りを取る機能)を強めに作動させて内側から温めて溶かすほうが、ゴム部分を傷めずに済むと思います」(栃木県のT整備士)
T整備士がおすすめするのが、フロントガラス用の「スクレイパー」です。柔軟性のあるゴム素材のスクレイパーであれば、ガラスを傷つけずに氷を削り取ることができます。
また、消毒用アルコールである「エタノール」は、氷点下でも凍りにくい特性があるため、ガラス表面の凍結などを溶かす効果が期待できます。ただし、表面の油分(コーティングされた層)も分解・除去してしまうため、あくまで緊急時に限定して使うほうが良いでしょう。
またT整備士は、うっかり立てたまま走行してしまうことにも注意してほしいといいます。
「ワイパーを立てっぱなしで作動させてしまうと、急にワイパーが倒れてガラス面を傷つけてしまうこともあります。
特にリアワイパーなどは立てたままにしてしまうことも多いようですので、走り出す前に忘れずに確認しましょう」
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ワイパーゴムにはさまざまな形状や種類があり、冬用の商品が販売されています。
「一般的なオールシーズン用ワイパーと比べて、雪などの侵入や凍結を防ぐためにブレードの金属部分がゴムで覆われていたり可動部分を減らすなどの対策、ゴム自体が低温で硬化しにくい素材に変更されていたり、モーターへの負荷を減らすために少し短めになっていたりします」(栃木県のT整備士)
いざというときに備え、冬対策として雪用(冬用)ワイパーに交換しておくのも良いでしょう。
フロントのワイパーのほか、リアワイパーがあればそれも雪用に交換すると安心です。
またワイパー交換はゴム部分だけでなく、ゴムとブレードのセットでの交換がおすすめです。費用対効果で考えると、セットで交換したほうが時間と手間を短縮できるでしょう。