ガソリンスタンドでは「静電気除去シート」を見かけます。液晶パネルや音声アナウンスでも「給油前に触れるように」と案内されますが、触れることでどのような効果が得られるのでしょうか。
■静電気除去シートは引火事故を防ぐためのもの
セルフのガソリンスタンドでは「はじめにタッチ!」「はじめに触れてください」などと表示された「静電気除去シート」を見かけます。
液晶パネルや音声アナウンスでも、給油前に触れるようにと案内されますが、触れることでどのような効果が得られるのでしょうか。
冬場の乾燥した時期になると、クルマのドアに手をかけたときに静電気が発生する機会が急激に増加します。
これは、クルマの電気を感じているのではなく、自分の身体にたまった電気がクルマに流れている現象です。
衣服が擦れるとそこに電気がたまりますが、着ている人の指先が金属など電気を通しやすいものに触れると、一気に放電されて火花が起きるのです。
日常的に発生することでもあり、一瞬、手先が痛いだけということもあり、軽視される傾向にある静電気ですが、ガソリンスタンドで発生した場合は要注意です。
ガソリンは揮発性が高く、マイナス40度でも気化してしまいます。
つまり、日常的に気化しており、給油キャップを開けると、プシューという音とともに気化したガソリンが空気中に逃げていきます。
こうした場面では、仮にわずかでも「バチッ!」と静電気の火花が走ると、一瞬でガソリンに引火してしまう危険があるのです。
そこで、ガソリンスタンドでは静電気の発生を防ぐ対策をとっています。
給油場は、地下ではなく、必ず地上階の風通しのよいところに設置され、気化したガソリンが滞留しないように設計されています。
ときには、スタンド内の乾燥を防ぐために水をまくこともあるようです。
また、従業員の制服や靴は、電線を織り込むなど導電性に優れた素材を使い、衣服にたまる電気を逃がしやすくしています。
さらに、セルフ式ガソリンスタンドでは、利用者が給油する際の静電気対策も用意しています。
それが、給油機に付いている「静電気除去シート」です。
静電気除去シートは、プラスチックに金属を混ぜた導電性の高い素材でできています。
利用者がこのシートを触ることで、利用者にたまっていた電気が給油機を通して地面へ放電されるしくみです。
以前と比べて、ガソリンスタンドの形態も様変わりしました。
石油情報センターによると、2023年3月末において、全国の給油所の約4割にあたる1万721店舗が、従来のガソリンスタンドからセルフ式ガソリンスタンドへ変わっています。
セルフスタンドは年々増えており、これからの時代は、利用者自身が静電気の危険性を認識するのがあたりまえになるのかもしれません。
■冬こそ静電気除去シートにタッチが必要なワケ…
そんな静電気除去シートですが、冬場は特に絶対に1度触れてから給油を開始する必要があります。
ガソリンスタンドの担当者は、次のように話します。
「冬場は特に乾燥するので、絶対に静電気除去シートにタッチする必要があります。
ガソリンは揮発性が非常に高いため、静電気だけで引火してしまう恐れがあるからです。
特に、湿度が低く乾燥している日は注意が必要です。
火災事故も毎年、数件は発生してしまっているので、絶対に触れるようにしてください」
このように「静電気くらいで引火するのか?」と思うユーザーもいるかもしれませんが、実験によって瞬時に火が付くことも証明されており、実際に年に何件かの火災事故も起きています。
特に乾燥している日などは、電気は空気中の水蒸気を通しても逃げていきますが、湿気がなければ体にたまったままになりやすくなっています。
クルマから降りるときに衣類とシートが摩擦するため、給油する直前は体が電気をためている可能性が高くなります。
もしナイロンやポリエステルなど化学繊維の衣服を着ていると、より電気を帯びやすくなります。
では、防寒用の手袋をつけたまま静電気除去シートに触れてもいいのでしょうか。
この場合は、手袋は電気を通さないので結果として電気がたまったままになり、静電気除去シートに触れる意味はありません。
給油する際は、面倒でも手袋を外し、素手でシートに触れるようにしてください。
ガソリンスタンドでは、不意の火災事故を防ぐため、静電気を除去するほかにも利用者が守るべき行為があります。
たとえば、給油時にエンジンは停止しドアや窓も閉めなければなりません。
さらに、スマートフォンなど電子機器の操作や喫煙も禁止されています。
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衣類が擦れたり、歩くときに地面と摩擦が起きたりするので、人の体は常に静電気を帯びています。
給油する際は、ガソリンは引火しやすいことを忘れず、静電気除去シートを使って確実に体から放電しておくことが大切といえるでしょう。