三菱の新型ピックアップトラック「トライトン」は、トヨタ「ハイラックス」とどういった点が異なるのでしょうか。最大のライバルともいえる両車を徹底比較します。
■「ハイラックスオンリー」市場に“強敵”出現 両車の違いは
三菱は2024年2月15日に新型「トライトン」を発売します。
国内では現在、ピックアップトラックとしてトヨタ「ハイラックス」がラインナップされているのみですが、今回新たにライバルが出現する形となりました。両車を徹底比較します。
トライトンの源流は1978年に遡ります。
ピックアップトラックとして初登場した「フォルテ」をルーツとし、「ストラーダ」、トライトンと名称を変えつつも、45年・5世代にわたって累計570万台を生産。世界約150カ国で販売される世界戦略車です。
日本では初代から4代目まで販売されていましたが、市場の縮小を受けて2011年に販売を終了していました。
今回、12年ぶりに復活を遂げたトライトンは通算6代目で、内外装だけでなくパワートレインやフレームまでを全面刷新しました。
一方で、トヨタ「ハイラックス」も1968年に登場したピックアップトラックで、国内でも長らくラインナップされていましたが、トライトン同様に一時は消滅。
しかし2017年に13年ぶりの復活を遂げると、アウトドアブームなどが追い風となり、一躍人気モデルとなりました。
新型トライトンは、この「ハイラックス一強」となっていた国内ピックアップトラック市場に真っ向勝負を挑むこととなります。
両車の共通点は、ボディサイズが全長5.3m級である点、堅牢なラダーフレーム構造に4ドアキャブを装備する点、本格的な四輪駆動システムを組み合わせている点です。
まずはエクステリアを見てみます。
新型トライトンは「BEAST MODE(勇猛果敢)」をテーマに、スクエアが強調されたスタイリングで、ボディサイドのフェンダーアーチも水平基調にすることで力強さを演出しています。
フロントフェイスは「ダイナミックシールド」を取り入れながら、3連LEDを配した2段スタイルのヘッドライトを装備。ライト中心部からボディ下部にかけては縦の加飾があしらわれ、プロテクター感が強調されたアンダーガードなどもタフさを表しています。
それに対しハイラックスは「タフ&エモーショナル」をコンセプトに、比較的控えめなスタイルで、特にボディサイドやテールはシンプルにまとめられています。
現在販売中のモデルは2020年8月に改良が行われ、メッキベゼル付きの台形グリルを装備したほか、薄くスタイリッシュなヘッドライトや新デザインのバンパーガードガーニッシュを装備しました。
また、スポーツブランド「GR」による「GR SPORT」グレードが設定されていることが特徴で、「TOYOTA」エンブレムを設けたブラックグリルやボディ同色のフェンダーアーチモールを装着するなど、全体的に精悍なイメージに仕上げています。
ボディカラーはトライトンが鮮烈な「ヤマブキオレンジ」を用意する一方、ハイラックスはクールな「オキサイドブロンズメタリック」や「ダークブルーマイカ」を設定。
このあたりは好みが分かれそうですが、タフさ・強固さならトライトン、洗練・スタイリッシュ・スポーティさならハイラックスという図になるのではないでしょうか。
インテリアも両車で仕上げが異なっています。
新型トライトンは悪路でも車体姿勢の変化をつかみやすくするために水平基調とし、手袋をしたままでも操作できるスイッチや、乗員を保護するソフトパットを用いるなど、実用性を重視。
一方で、上級モデル「GSR」にはオレンジステッチを施したインパネやレザーシートを装備し、上質感も演出しています。
ハイラックスはインパネやドアトリムなどにメッキ・シルバー加飾を装着し、きらびやかさを演出。インパネ形状も曲線的で、比較的乗用車ライクなデザインとなっています。
GR SPORTはセンターマークや赤ステッチがあしらわれたステアリングや、GRバッジ入りヘッドレスト、肩口部に赤いアクセントカラーを施したレザーシート、アルミペダルを装備するなど、同グレードのエクステリアと同じく、新型トライトンにはないスポーティな装いです。
このように、新型トライトンとハイラックスは同様なパッケージングを持ちつつも、デザイン面ではキャラクターが異なっています。
■荷室・走行性能には「違い」ありか?
ピックアップトラックでは快適な居住スペースに加え、荷台部の広さも特徴です。
新型トライトンは長さ1470mm×幅1525mmを確保し、荷台高は825mmです。GSRでは荷物による傷などから守るベッドライナーを標準装備しています。
ハイラックスにはベッドライナーは装備されませんが、荷台部分の素材に亜鉛めっき鋼板を用いるなど、サビに対する耐久性を高めています。
スペースは長さ1565mm×幅(開口部)1380mm。荷台高のみ845mmと少し高いのですが、新型トライトンよりも長さを確保。長尺物を積載する際はハイラックスのほうに軍配が上がります。
続いて、走行性能や機能装備はどう異なるのでしょうか。
凹凸や岩場などの悪路で、ボディと路面とのクリアランスを示す「3アングル」は新型トライトンではアプローチアングル30.4度、デパーチャーアングル22.8度、ランプブレークオーバーアングル23.4度。
ハイラックスはそれぞれ24度、23度、27度と、数度の違いはありますが、フロントのアプローチアングルは大きく異なっているものの、ほかはほぼ同格とみてよさそうです。
パワートレインは、両車ともに2.4リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジン×6速ATにパートタイム式4WDシステムを採用。どちらもリアデフロックやヒルスタートアシスト、ヒルディセントコントロールを標準装備するなど、本格的な悪路走破性能を持っています。
一方で、新型トライトンの最大出力は204馬力・最大トルク470Nmに対し、ハイラックスは150馬力・400Nmとやや控えめなスペックです。
加えて、新型トライトンはトレーラー牽引時の安定走行をサポートする「トレーラースタビリティアシスト」や旋回性能と走行安定性を高める「アクティブヨーコントロール」を装備している点もアドバンテージになりそうです。
先進運転支援機能では、衝突被害軽減ブレーキやアダプティブクルーズコントロール(全車速非対応)、360度アラウンドモニター、車線逸脱警報や標識認識機能を標準装備。
さらに、新型トライトンではブラインドスポットモニターや後退時交差車両検知警報システム(RCTA)を標準装備するなど、充実したものとなっています。
この他の装備では、新型トライトンは前席シートヒーターや後席用サーキュレーター、オートワイパー、自動防眩ルームミラーなどを装備しました。
ハイラックスでは後席が跳ね上がることで荷物を積載できる「チップアップシート」を採用しており、より実用向けに仕上げています。
装備面では新型トライトンとハイラックスの違いが目立ちましたが、価格についてはどうでしょうか。
新型トライトンは498万800円から540万1000円ですが、ハイラックスでは407万2000円から431万2000円と、100万円以上もの差があります。
デザインの好みや機能装備といった部分だけでなく、価格についても考慮した上でどちらを選ぶか検討したほうがいいでしょう。
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(12/25 追記)
なお、ハイラックスにも専用バンパーやオーバーフェンダーなどを装備するタフ仕様モデル「Z“Revo ROCCO Edition”」が2023年12月22日に新設定されました。
無塗装樹脂パネルやプロテクター感のあるアンダーガーニッシュなどが堅牢な印象を与え、後発のトライトンに迫ったモデルとなっています。