冬の冷え込んだ朝は、クルマのガラスが凍っていることがあります。しかし、氷を解かそうとしてお湯をかけるのは絶対にNGです。
■冬にクルマのフロントガラスが凍るワケ
冬の北海道や東北、北陸などでは、出かける前にクルマの雪下ろしが必須です。
早起きしたり家族で手分けしたりして、クルマの周りも雪かきするなど、エンジンをかけてすぐに出発というわけにはいきません。
なかでも手間がかかって厄介なのは、凍りついたフロントガラスを元に戻すことです。
こうしたフロントガラスの凍結は、温暖な地域でも急に気温が下がるとみられることもあります。
では、そもそもなぜ凍結するのでしょうか。
ガラスの氷の正体は霜。霜は、空気中の水蒸気が氷となって物体に付着したものです。
夜中から明け方にかけて急激に気温が低下すると、周囲の水蒸気が霜となってフロントガラスに降ります。
地上の空気は雲がないとよく冷えるので、快晴の日の翌朝は霜が降りやすく、フロントガラスが凍結することがよくあります。
寒冷地に暮らす人は慣れていますが、例えば積雪地域に旅行して、真っ白く凍結したフロントガラスを見て驚く人もいるかもしれません。
そんなときに、手っ取り早く氷を溶かすために、お湯をかけようと思う人もいるかもしれません。
しかし、それは絶対にやってはいけない行為です。
とある自動車整備士は、お湯を使用してはいけない理由について、次のように話します。
「冬場になるとフロントガラスに霜が付いて、溶けるまでクルマを動かすことができなくなってしまいます。
慣れていない人だと、なかにはポットで沸かした熱湯をかけてすぐに溶かそうとするのですが、それは絶対にやってはいけません。
ガラスは急な温度の変化に耐えられないので、フロントガラスが思いっきり割れてしまいます。
年に何回かはこのような失敗をされたお客様の対応をすることがあるのですが、絶対に使用しないようにしてください」
このように、ガラスは急な温度変化には耐えられないことから、熱湯をかけるとすぐに割れてしまうようです。
ガラスは、温度によって体積が変化。冷やされると小さくなり、温められると大きくなります。
つまり、ガラスのどこか一部にお湯をかけて急に温度をあげると、その周りの冷たい部分と体積の差が生まれ、ガラス組織がその一瞬の差に耐えられなくなり破損してしまうのです。
とくに、クルマのフロントガラスは飛び石などによって小さな傷がついており、その傷や避け目からひび割れが広がる可能性があります。
フロントガラスが割れると運転できなくなるので、もしもお湯を使うならぬるま湯程度にとどめておくとよいでしょう。
■氷を溶かす&凍らせないための対処法とは?
それでは、冬場に霜がはってしまった際の、適切に氷を溶かすにはどうすればいいのでしょうか。
早く出発したいなら、少なくとも視界が確保できるまで氷を取り除かなくてはかなくてはなりません。
最も有効的なのが、デフロスターで溶かすことです。エンジンをかけ、ガラスの曇り除去機能であるデフロスターを作動させて氷を溶かします。
ただ、ガラスは痛めにくいのですが、視界が確保できるまできれいに氷を溶かすとなると10分ほどかかってしまうため、早めに起きてデフロスターを使うことをおすすめします。
そのほかには、解氷剤を使うことです。市販の解氷剤を使うと短時間で氷を取り除けます。
2014年にJAFが行ったユーザーテストによると、解氷剤を塗ってから1分ほどでまんべんなく氷が溶けたと言われています。
また、スクレイパーで削り取ることも有効的です。デフロスターや解氷剤を使うときに、合わせてスクレイパーで氷を削り落とすこともできます。
ただし、ガラスに傷がつくことを防ぐためには、スクレイパーは金属製ではなくプラスチックや少し硬めのゴム製を選ぶとよいようです。
なお、水をかけても氷を溶かせますが、厳しい寒さの中ではかけたそばからすぐに凍ってしまうので注意が必要です。
さらに、厳しい冷え込みが想定される場合は、前日のうちに対策をとっておくことが望ましいと言えます。
例えば、フロントガラスにカバーをかけることで、霜のもとである水蒸気を阻止できます。こうすることで、どんなに冷え込んでも霜が降りることはありません。
凍結防止シートがカー用品店などで手に入りますが、毛布やタオル、レジャーシートなどでも代用できます。
また、撥水剤や、雨をはじく撥水剤を塗ることも効果的です。もし霜がついても、スクレイパーで楽に落とせます。
最後にはフロントガラスを拭くことも効果的と言われています。水蒸気は微細な砂などチリやホコリに付着するので、フロントガラスが汚れていると霜が降りる原因にもなります。
そのため、ガラスをきれいに清掃すると、霜がつくのをさらに抑えられます。
そのほかにも、ワイパーのゴムが凍って窓に張りつくことがあるので、ワイパーは立てておくとよいでしょう。
また、クルマが雨に濡れたままだと、鍵穴やドア周りのゴムシールなどが凍結してドアを開けられなくなることもあります。そうしたトラブルは、ドア周りの水気を拭き取り、凍結防止剤を塗っておくと防げます。
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気温が急に変化する真冬は、フロントガラスが凍りやすくなります。出発前のロス時間を減らすためにも、凍らせないような対策をとることが大切です。