複数の車線がある高速道路で、一番右の追い越し車線で走り続けるクルマを多く見かけますが、これは明確な「交通違反」です。果たして何が問題なのでしょうか。
■速度超過はもちろんNG! でも「右車線キープ」も「違反」だった!?
高速道路を走行中、左側の走行車線が空いているにもかかわらず、周囲の状況も顧みずにひたすら「追い越し車線」をキープし続けるクルマに出くわすことがあります。
これは単に運転に不慣れなドライバーというだけでは済まされず、交通ルールに反する行為だということが、意外と理解されていないことを示すひとつの例といえます。
「追い越し車線」とは、片側2車線以上ある道路における、最も右側の車線のこと。高速道路だけでなく一般道においても基本的には同じです。
この追い越し車線は、その名のとおり追い越しをする際などに一時的に通行することができる車線です。
道路交通法第20条1項には、次のように定められています。
「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。
ただし、自動車は、当該道路の左側部分に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる」
また同3項においては、次のように記載されています。
「車両は、(略)追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」
もちろん右折する際や、道路標識などによって通行区分が指定されているとき、または道路の損壊や道路工事などによって左側の車線が通行できないとき、また緊急車両に進路を譲るためなどのやむを得ない場合は、追い越しをするため以外の目的であっても通行することができます。
ただしその場合においても、追い越し車線は一時的に通行することができる車線であり、追い越し車線をずっと走り続けることは、前述の道路交通法第20条に違反する「通行帯違反」となります。
通行帯違反による反則金は6000円(普通車)、違反点数は1点です。
この通行帯違反での検挙件数は意外と多く、内閣府の「令和5年版交通安全白書」によると、2022年に高速道路において通行帯違反で検挙された件数は、最高速度違反に次いで2番目に多かったそう。
追い越し車線を走るクルマの違反といえば、「速度超過違反」が真っ先に思い浮かぶところですが、速度を守っていたとしても、追い越し車線を走り続けてはならないことは、免許を持っている人なら知っておくべき「常識」です。
つまり周囲を走る貨物車や高速路線バスなどのプロドライバーから見れば、追い越し車線を漫然と走り続けるようなドライバーはクルマの運転に関して知識が乏しく、運転に慣れていない「下手な人」と映っているということを自覚しないといけません。
■後続車に道を譲らないだけで「違反」の可能性も!?
もうひとつ、追い越し車線を走り続けることは、「追い付かれた車両の義務違反」につながる可能性があることも知っておきましょう。
追い付かれた車両の義務違反とは、次のようなことを指します。
追い越し車線を法定最高速度以下で走行中に、後続のクルマに追い付かれた場合、後続のクルマも法定最高速度以下で通行しているならば、追い付かれたクルマは、追い付いたクルマが追い越しできるように進路を譲らなければならず、加速してはいけない、というものです。
道路交通法第27条において規定されている交通ルールであり、違反とされれば、反則金6000円(普通車)、違反点数1点が科されます。
高速道路を走行中に後続のクルマに追い付かれ、「あ、遅かったかな?」と車線変更せずそのまま慌てて加速すると、むしろ違反となってしまう可能性があります。
もちろんその際にうっかり速度制限を超えてしまうのはもってのほかです。
ルールを把握していない無知なドライバーだと思われてしまわないためにも、しっかりとルールは知っておきたいところです。
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普段遭遇することのない状況に関する交通ルールや標識・標示であっても、クルマを運転するならば、知っておく必要があります。
ただその知識も、使わなければ忘れてしまうのが人間です。定期的に確認をしておきましょう。