2024年1月12日から14日まで開催された「東京オートサロン2024」で、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載したプラグインハイブリッド車(PHEV)の200系現行ハイエース「e-ハイエース」が出展されていました。市販化も想定されているといいます。
■斬新「充電ハイエース」!? 200系「ハイエースPHEV」がTAS2024に登場
2023年秋に開催された「ジャパンモビリティショー2023」で、トヨタグループのトヨタ車体からバッテリーEV(電気自動車)モデルが参考出品されていたトヨタ「ハイエース」ですが、国内未発売の大型モデルである300系ハイエースがベースでした。
そんななか、2024年1月12日から14日まで開催された「東京オートサロン2024」では、なんと大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載したプラグインハイブリッド車(PHEV)のハイエース「e-ハイエース」が出展されていました。どのようなクルマなのでしょうか。
東京オートサロン2024で出展されていたのは、現行型ハイエース(200系)のワイド・ハイルーフ・スーパーロングボディ仕様をベースにした「HKS e-HIACE MULTI ENERGY CONCEPT(イーハイエース マルチエナジー コンセプト、以下e-ハイエース)」。
出展したのは、アフターパーツメーカーのHKS(エッチ・ケー・エス)です。
HKS製品全般の広報活動を担当する、エッチ・ケー・エスの広報戦略課 近藤 剛生氏に話をうかがいました。
近藤氏によるとこのe-ハイエースは、ベース車の2.7リッターガソリンエンジンはそのまま残し、トランスミッション部分を発電用モーターと駆動用モーターを組み合わせたHKS製モーターユニットへ置き換え、25kW/hもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載したPHEVに仕上げています。
エンジンは発電に特化したシリーズハイブリッド方式(日産の「e-POWER」と同じ)で、モーターユニットは既存のトランスミッションユニットと同じ全長で造ったため、純正のプロペラシャフトがそのまま使えるといいます。
フロア下に搭載した駆動用バッテリーへの充電は、フロント側に備えた充電ポートでも可能とのこと。
フロア下側への出代(でしろ:張り出し部分)は少なく、かつ室内への干渉が一切ないため、通常のハイエースと同じ積載体積を維持しているのがポイントです。
交換部品を最小限に抑えることで、コストを抑えながらEVコンバージョン(後で置き換える)できるよう配慮したと話します。
今回はガソリンエンジン車をべースとしているので、発電用燃料はガソリンですが、ボディサイドに「マルチエナジー」と書かれているように、カーボンニュートラル燃料(二酸化炭素と水素を合成して製造する合成燃料)やバイオ燃料、水素燃料、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)など、様々な種類の燃料でエンジン発電をすることを想定しているとのこと。
リアのフロア下に設置した別置きタンクには、カーボンニュートラル燃料を積んでいる想定としています。
HKSといえば、マフラーのような排気系や足回りのユニット製造に強いアフターパーツメーカー、というイメージがあります。
しかし実は以前から、タクシーやバスのバイフューエル車や天然ガス車の製品製造を行っており、マルチフューエルのエンジン燃焼に関して、長い経験と深い知見がありました。
こうしたマルチエナジー技術はHKSの武器になると考えたことが、e-ハイエースを開発するきっかけだったそうです。
■「充電ハイエース」市販化に向けた開発も着々と進行中
「e-ハイエースは、V to H(ヴィークル・トゥ・ホーム:自宅への給電・蓄電機能)といった外部給電も行えるように検討していますので、アウトドアレジャーの際や災害時の電力供給車としても使用できます。
またハイエースは『働くクルマ』ですので、重たい荷物を積んでも不足なく走るよう、初動トルクの大きなモーターを積んでいます。
時速120キロ程度の高速道路走行は余裕でこなせるように想定しています」(近藤氏)
そして気になるe-ハイエースの製品化時期については、次のように話します。
「広報の立場としては、市販化はすぐにでも! といいたいところですが、製品開発にはハードルが沢山あります。
ハイブリッドユニットの制御のセッティングはこれから詰める段階ですが、2024年内には走行テストを行い、お披露目する場があれば積極的に出していきます」
市販化に向けた今後の展開についても、非常に楽しみなところです。
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ジャパンモビリティショー2023に出展された「グローバルハイエース BEVコンセプト」は、コストそして重量の面で考えると、筆者(吉川賢一)としてはやや疑問符をつけずにはいられませんでした。
その点で、大型商用バン向けの現実的な電動化のソリューション(解決策)としては、今回のe-ハイエースのほうが向いているといえます。既存のユニットを置き換える(コンバージョンする)ことで、比較的簡単に電動化できるからです。
2トンオーバーの大柄なハイエーススーパーロングが静かに走ってきたら、物凄い違和感とともに感動もあるはず。電動化モデルのe-ハイエースは、商用車の今後を大きく変えるかも知れません。
HKSの今後の開発動向には、引き続き注目しておきましょう。