ホンダの独自技術のひとつである「センタータンクレイアウト」は、燃料タンクの配置を工夫することで車内空間を拡大するユニークな技術です。しかし、なぜ他のメーカーは同じ構造を採用しないのでしょうか。
■ホンダと言えば「独自技術」!
さまざまな独自技術を持つホンダですが、その技術のひとつが「センタータンクレイアウト」です。
これは、燃料タンクを前席下に配置することで車内空間を拡大する優秀な技術ですが、他のメーカーでは採用例はほとんど無いようです。
それは一体なぜなのでしょうか。
このセンタータンクレイアウトという技術は、初代「フィット」で初めて採用されたもの。
広い空間を確保するためにレイアウトの見直しに着手していた当時の開発者が、フロントシートの下にスペースに燃料タンクが入るのではないかと閃いたことが誕生のきっかけとなりました。
もともとフロントシート下のスペースは、靴などを収納するスペースでしたが、ここに燃料タンクを配置したことでフロアの低床化が可能になり、居住空間の拡大にくわえて多彩なシートアレンジも実現したのです。
このようにして、初めてセンタータンクレイアウトを導入した初代フィットは、コンパクトカーにも関わらず広い居住空間を持つことで一躍人気を集め、年間販売台数が10万台を超える大ヒットモデルとなりました。
そして、初代フィット発売時にホンダは「センタータンクレイアウト採用モデルを今後拡大していく」と発表し、その言葉どおり以降さまざまな車種にこの技術は採用されていきます。
例えば、2台目以降のフィットやSUVの「ヴェゼル」、軽自動車では「N-BOX」「N-ONE」「N-WGN」などが採用しています。
■簡単にマネできない!? なぜ?
このように、ホンダのセンタータンクレイアウトは、広い居住空間を確保したいコンパクトカーには欠かせない技術です。
そのため、コンパクトカー開発しているメーカーからすれば、ホンダと同じようにセンタータンクレイアウトを採用したいところですが、この技術はホンダが特許を取得していた独自技術なので、採用することは簡単ではありませんでした。
その一方で、ホンダと提携し技術供与を受けることができれば使うことができました。
実際に、三菱はセンタータンクレイアウトの技術供与を受け、2006年に同技術を用いた軽自動車「i(アイ)」を発売しました。
同車は燃料タンクを座席下に配置することで、後部空間の拡大化に成功しています。
ちなみに、ホンダの特許技術だったセンタータンクレイアウトですが、現在は特許の期限が切れているとのこと。
しかし、センタータンクレイアウトを採用した他メーカーのモデルは、現在のところ先述したi(アイ)のみ。
その理由としては、技術の採用にあたって「プラットフォームの見直しが必要」となる点が挙げられます。
技術供与を受けることでセンタータンクレイアウトは採用できるものの、実際に搭載するにはプラットフォームの大幅な見直しが必要になり、それだけコストがかかります。
そのため、他メーカーは別の技術を開発するなどして、センタータンクレイアウトに頼らないかたちで車内空間の拡大に挑戦しているのです。
※ ※ ※
燃料タンクをフロントシート下に配置するセンタータンクレイアウトは、20年以上にわたり採用されているホンダを代表する技術でした。
現在は特許の期限切れから他メーカーも使用することはできるものの、導入にかかるコストなどを考えると、おいそれとは採用できないようです。