近年、コインパーキングや大規模な空港駐車場などで長い間、停めっぱなしの車両が全国各地で問題になっています。過去には羽田空港の駐車場での放置車両や、神奈川県内の公園に併設される駐車場に大型バスが放置されたこともありましたが、これらはなぜ放置されるのでしょうか。また勝手に処分することは出来ないのでしょうか。
■クルマを放置する人の理由は? 放置する人の9割は「意図的」において逃げる
全国各地の駐車場では数日、数ヶ月、数年と放置されている車両を見かけることがあります。
過去には羽田空港の駐車場での放置車両や、神奈川県内の公園に併設される駐車場に大型バスが放置されたこともありました。
それらの車両はなぜ放置されるのでしょうか。また勝手に処分することは出来ないのでしょうか。
近年、コインパーキングや大規模な空港駐車場などで長い間、停めっぱなしの車両が全国各地で問題になっています。
実際に過去には、神奈川県内の東扇島東公園駐車場に放置されていた大型バスを川崎市港湾局川崎港管理センターが撤去した事例があります。
この際、行政代執行により大型バスを撤去。なお、川崎市港湾局港営課によると、今回の撤去作業や警備にかかった費用は全部で30万円。さらに未納となっていた駐車料金約70万円を所有者の男性に請求したと言います。
また羽田空港の駐車場でも過去に放置車両トラブルが発生。強制執行実施により撤去されていました。
このように全国各地では、ナンバーがついたままのものもあれば外された放置車両があります。なぜ発生するのでしょうか。
また、数か月で撤去される車両もあれば、10年近く放置された車両もあります。撤去にはどれくらいの費用が掛かるのでしょうか。
月に80-120台の放置車両を「ほぼ無料で」撤去している「放置車両撤去システム株式会社」(本社:北九州市小倉北区)代表の吉川新一さんに放置車両の現状について聞いてみました。
―― クルマを放置する理由はどのようなことでしょうか。
放置する人の9割は『意図的に』クルマを駐車場に置いて行きます。
残り1割前後はドライバーが駐車場に置いたあとに事故や病気で長期入院したり亡くなったりするケースです。
周囲の人も故人が駐車場にクルマを置いていたことに気づかず、長い年月が経過した例もあります。
また、認知症の高齢者がクルマを停めたことを忘れて帰宅し、どこに置いたかわからない状態で年月が経過してしまう場合もあります。
―― 意図的に置いていく人はどんな意図で放置するのでしょうか。
そのほとんどは『車検』が関わっています。
放置する人の8-9割は定職についておらず、人生設計が適当である場合が多いと考えられます。
お金が入った時に安いクルマを見境なく買って、車検が近づいてきたときにお金がなければ『捨てよう』という考えに至るのでしょう。
空港駐車場などは外国人が駐車場にとめて国に帰ってしまったという例も多いです。
他には『第三者に譲渡したのに…』というケースもあります。
別の人に譲ったものの、本来行うべき名義変更などの手続きを怠って、譲渡された人が前所有者の名義で乗り続け、結果放置するというパターンです。
―― 放置車両はなぜ、私有地であっても勝手に撤去できないのでしょうか。
コインパーキングや商業施設の駐車場など『私有地』に放置された車両であっても所有者の許可なく勝手に動かすことはできません。
これは民法で定められた『自力救済禁止の原則』によるもので、『権利が侵害される(=私有地に無断で駐車するような)状態』になっていても、裁判所を通さずに『自力で侵害を排除(=自力救済)』することはできないという原則によるものです。
■自治体が運営する駐車場に放置車両が多い理由は?
―― 放置車両の所有者の許可が出ないと動かせないということですか。撤去までには相当高いハードルのように思えます。
車両の所有者と連絡がついて移動、撤去の許可がない限りは動かせません。
しかし弊社の場合、車両所有者との接触成功率は極めて高く依頼を受けた多くの車両に関し合法的な方法で撤去に成功しています。
そして、撤去費用に関してもよほど特殊な機器を使った作業や車内残留物が大量で処理に費用が掛かる場合を除いて原則は依頼者の負担は無料でやっています。
車内の残置物や一般ごみ以外の物が多い場合は処分費用を頂く場合があります。
2023年7月に水戸市内の有料駐車場で放置車両を撤去した際には残置物の処分費用として8800円を頂きました。
―― 放置車両が多い有料駐車場はどんなタイプの駐車場ですか。
駐車場にもいろいろなタイプがありますが、最も多いのは『ゲート式』です。
駐車場に入るときに駐車券を取って、出るときに出口ゲートにある精算機で精算するとゲートがあがって外に出るタイプです。
ゲート式以外では日々、料金データなどが管理会社に送られるのですが、ゲート式ではいったん駐車場内に入庫すると長期駐車かどうかがわかりにくい状態になります。
駐車場と管理会社が近い位置にあれば日々の巡回などで長期駐車している不審なクルマに気づくこともあると思いますが、距離的に離れている場合は数年放置ということもありうるのです。
―― 自治体が運営する駐車場に放置車両が多いとのことでしたが理由はどんなことですか。
基本的に放置車両の撤去は事情を知らない人がやろうとすると手続きがとても面倒です。
自治体の担当者にとっては、これまで放置車両の撤去作業を経験したことがない人が多く、申請書の作成から始めなくてはいけません。
面倒な手続きをして放置車両を撤去させたところでその人の評価が上がるわけでも報酬が上がるわけでもない(苦笑)。
だから、そのまま放置されるケースが多いです。ただ、メディアが取り上げるなどして情報が広まってしまった場合は撤去せざるを得なくなります。
―― ところで吉川さんの会社では車両撤去を依頼してきた人の負担が基本ゼロ円ということですが、なぜそんなことが可能なのでしょうか。
弊社では月に80-120台の放置車両を撤去しています。
本社は北九州市にありますが、全国に対応しており出張料なども無料です。
自動車所有者を調査し、所有者にアプローチし撤去を行う、この業務に対して、依頼者(土地の権利者)様からの対価(お金)を得ることを生業とする行為が『弁護士法違反』に該当する恐れがあるため、そもそも請求することができないのです。
では『どうやって利益を出すのか』ですが、これはリサイクルに関わる費用を頂くことで賄っています。
車両は、解体、破砕を経て、再度鉄に生まれ変わるという工程、つまりリサイクルとなります。
その工程で発生する一部の利益をいただいているのですが、まあせいぜい数万円です。10万円を超えることは滅多にありません。薄利多売です。
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ところで、気になるのは有料駐車場における積もり積もった駐車料金です。
数年間の放置で駐車料金が100万円近い金額になることもあります。
気になるのは「誰が支払うのか」です。
これまで放置車両撤去を行った複数の駐車場経営者に聞いたところ、ケースバイケースのようでした。
所有者に支払いを求めて裁判を起こす場合もありますが、1日も早く駐車場として稼働させることを最優先して駐車料金を大幅に減額することもあるとのことでした。
ナンバープレートを外しても車台番号などから所有者の特定は簡単にできます。
クルマを放置すると周囲に多大な迷惑をかけることになり多額の費用を請求される可能性もあります。
処分に困ったらクルマを放置するのではなく、良質な買取業者に依頼すれば無料で廃車にできるだけではなく、場合によっては価格がついてプラスになる場合もあります。