日本特有のクルマといえば軽自動車です。このうち軽トラックは狭い道などでも取り回しのしやすいサイズに大きな積載力を持っており、利便性の高いものですが、近年では海外に中古輸出されることも増えています。一体なぜなのでしょうか。
■日本独自の「軽トラック」が海外で人気… どんな背景が?
日本独自のクルマである軽自動車のなかでも、軽トラックは全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2m以下というサイズながら高い積載性を持っており、農業だけでなく配達業務など、さまざまな用途で使われています。
一方、近年ではこの日本特有とも言える軽トラックが、海外に中古輸出されているのです。一体なぜなのでしょうか。
日本独自の規格として誕生し、発展し続けてきた軽自動車。
一部モデルは海外に正規輸出されたこともありますが、こうしたものは例外であり、基本的には日本国内で売られ、使用されることが前提に開発がなされています。
そんな軽自動車の中でも軽トラックは、軽自動車規格という限られたボディサイズの中で必要な居住スペースを確保しながらも、最大限の荷台サイズを実現したもの。
660ccの小型エンジンによる低燃費や各種税金が安いことなど、軽自動車ならではの維持のしやすさも手伝って、ビジネスの相棒としてなくてはならない存在となっています。
そのため、軽トラックは低年式になっても一定の需要があることから、価格が下がりにくい車種のひとつとしても知られ、中古車相場が比較的高値安定となっているのですが、近年は別の理由で高値となっていることをご存知でしょうか。
その要因が「海外輸出」です。
特に北米地域において軽トラックの人気が高まっており、日本ではせいぜい数十万円程度で取引されているであろう1990年代の旧モデルでも、現地では8000ドル(約120万円)以上のプライスで売られることも珍しくありません。
アメリカでは、たくさんの荷物を積みながらも多くの乗員が乗れ、高い走破性能を持つという「ピックアップトラック」が支持されてきたこともあります。そうしたことからトラックという車型に親和性が高いという背景があります。
さらに、セダンやワゴンなどの標準モデルであっても全長5mを超えるような大型車が好まれるアメリカにおいて、非常にコンパクトでありながら機能性に溢れる軽トラックは新鮮な存在にも映るようで、現地のクルマ好きを中心にムーブメントが起こったのが始まりでした。
実際にアメリカでは軽トラック専門店がオープンして売上を伸ばしており、現地の自動車イベントにも軽トラックが登場して注目を集めるなど、文化的にその存在が認められつつあります。
本来、右ハンドル仕様の軽トラックは、左ハンドル・右側通行のアメリカで公道走行ができるよう登録するには非常に高いハードルがありますが、いわゆる「25年ルール」という、製造から25年が経過した旧車についてはその規制が緩和されるというものもあり、90年代の軽トラックが人気となっているというワケなのです。
また25年が経過していない車両であっても、私有地内であれば当然ながら走行が可能。
広い敷地を持つ農場や牧場などで活躍する車両として導入されるケースや、現地特有の登録種別である「オフロード車」や「LSV(LOW SPEED Vehicle)」として登録すれば、走行可能な道や最高速度の制限は受けるものの、公道を走行することも可能となります。
■特に人気のモデルは何がある? 「日本仕様そのまま」のスタイルも人気か
そんな軽トラックではありますが、どんなものでもアメリカで高値で売れるというワケではなく、最低でも四輪駆動であることはマストと言えます。
荷台部分は固定式の荷台を持つ通常のトラックよりも、上げ下げが可能な機構を持つダンプ仕様の方がより高値で売れていました。
これは前述したように農場や牧場、オフロードなどで使われることが多いため、四輪駆動かつ荷台に積んだものを楽に降ろすことができるダンプが重宝されるという非常に合理的な理由となっています。
そして、アメリカではご存知の通り軽トラックだけでなく、25年ルールによって多くの日本車が入ってきており、スポーツカーだけでなく、ミニバンやセダン、SUVなどさまざまな車型が販売されています。
これに伴って日本仕様のアイテムも人気となっており、カタログや雑誌はもちろんのこと、日本の車検・点検ステッカーや車庫証明のステッカーなどはあえて剥がさずそのままにして、日本から輸入した車両であることをアピールするユーザーも少なくないんだとか。
日本で生まれた軽トラックが海を越えて評価されているのは嬉しく思う一方で、中古車を狙っていた人にとっては価格が上昇してしまうというデメリットもあるため、複雑な思いというのが正直なところでしょうか。