初心者はもちろん、ベテランドライバーでも苦手意識を持ちやすいのが「縦列駐車」です。教習所卒業以来、縦列駐車をしていないという人もいるかもしれませんが、上手く縦列駐車するにはどうしたら良いのでしょうか。
■実はみんな「縦列駐車」が苦手!
運転初心者はもちろん、ベテランドライバーでも苦手とされるのが「縦列駐車」です。クルマの運転に関して、一般道を走行する以上避けては通れない難しい操作がいくつかあるなかでも、縦列駐車はその代表格と言えます。
最近は路上脇のパーキングスペース(時間制限駐車区間)も減り、商業施設や外出先でも見かけなくなったこともあり、教習所を卒業してから縦列駐車をしていないという人もいるかもしれません。
さまざまなサービスや商品を購入前に比較できる便利サイト「ズバット」を運営するウェブクルーが約1000人に対しておこなったアンケートによると、「運転に自信がある」と回答した人の50.4%、「運転に自信がない」と回答した人の68%が縦列駐車に苦手意識を持っているといいます。
よほど運転スキルが優れていると自覚している人はともかく、一般のドライバーの半数以上が難しいと感じている縦列駐車をスムーズにおこなうには、どのようなコツがあるのでしょうか。
都内の教習所で指導員として勤務していたI氏に聞いてみました。
「縦列駐車は、駐車したいスペースを見つけ、駐車スペースに対して自分の車がどのくらいの角度で進入するかで難易度が大きく違ってきます。
停めたいスペースの前方のクルマを基準とするのですが、教習所では前のクルマに並行する位置からのハンドル操作を教えています。
しかし、前車と並行した位置からの操作ではハンドル操作が追いつかないケースも多いようです」
そこでI氏がまず初めに指摘するのが「進入角度」です。縦列駐車をする際は、駐車スペースに対してノーズが少し外側に向いているほうが、ハンドル操作の量も少なくて済むそうです。
「まずは停めたいスペースの横からハンドルを少し右に切り、駐車したいスペースに対して外側にノーズを向けた状態になるように前進します。
このついた角度分だけハンドルの操作量を減らすことができ、よりスムーズに駐車できるようになると思います」
一般的には、駐車したいスペースから一旦前進&停止(1)、ハンドルを左に目一杯切ってからバック(2)、角度が十分ついたらハンドルをまっすぐに戻し後進&停止(3)、右にハンドルを切りつつ後進して駐車(4)という流れです。
I氏が推奨する「進入角度をつける」というのは、(1)の時点で角度をつけておくことで(2)のバックする際のハンドルを切る量を減らすことができ、(3)のまっすぐに戻す作業や(4)の作業が比較的スムーズに行えるということです。
■一度で枠に収まらなくてもいいってホント?
ほかにも注意すべき点があるといいます。
「車両感覚を掴むのはなかなか難しいものです。ましてやバックしながらハンドルを操作する複合的な動きでは、そこまで意識を持ちにくいかもしれません。
そこで注目してほしいのがCピラー(後部座席の斜め後方にある太い部分)です。
後進(バック)ではフロントのAピラー(運転席や助手席の傍にある太い部分)と同じ役割を果たしてくれます」(教習所の元指導員 I氏)
右ハンドルの場合は左側の車両感覚を掴むのが難しいので、このCピラーで左側の車両幅をイメージするのが大切ということ。実際に筆者(金田ケイスケ)もバック駐車するときなどはCピラーを意識しつつ、バックミラーやサイドミラーで実際の視界を確認しながら行っています。
「初心者や運転が苦手な人が左側のフロントバンパーやリアバンパーを擦りやすいのは、車両感覚がうまく掴めていないからでしょう。
最近は、駐車作業を支援してくれる『パーキングアシスト機能』といった機能を搭載したクルマも増えていますが、これに頼らなくても縦列駐車できるようになっておくと、どんな場面でもスムーズに駐車できるようになると思います」(教習所の元指導員 I氏)
またI氏は「一度の操作ですんなり縦列駐車できなくてもいい」くらいの気持ちを持ってほしいといいます。
周囲のクルマに迷惑をかけまいと急いで前後のクルマに接触してしまっては大変です。焦らずに何度も切り直して修正すれば良いとのことです。
「まずは一連の動作を一度やってみて、路肩や周囲のクルマに近すぎたり離れすぎてしまった場合は、修正すればいいんです。
多少時間がかかっても最終的に枠内に収まればいいんですから」(教習所の元指導員 I氏)
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縦列駐車は数ある運転操作のなかでも、かなり難易度の高い操作です。
ただし、運転は経験値にある程度比例する傾向もあり、縦列駐車も繰り返すほどに進入角度やハンドルを切るタイミングなどが感覚的につかめてくるものです。
縦列駐車する場面に遭遇したら、ぜひ何度もトライしてみてはどうでしょうか。