クルマの車名は、そのキャラクターを表す重要なものですが、メーカーによっては名前を再利用しながら全く異なるモデルに生まれ変わるケースもあります。それが最も顕著なのが、二輪車と四輪車で車名を受け継ぐケースが多いホンダです。
■車名の「輪廻転生」!? ホンダの特徴は極端に「再利用が多い」点にあった
クルマの名前=車名は、それそのものを示す大事な固有名詞。そのため異なるメーカーで同じ車名となるのは稀なことですが、ダッヂ「チャレンジャー」と三菱「チャレンジャー」のように完全に同じ場合もあります。
そんななかでホンダは、同じ車名を繰り返し使用するケースが極端に多いメーカーです。どういった例があるのでしょうか。
スズキ、BMW、プジョーなどと並び、二輪車(オートバイ)と四輪車のどちらも開発・販売できる数少ないメーカーがホンダです。
そのなかで、二輪と四輪で車名を共有する車種が極端に多いのも、ホンダの大きな特徴となっています。
ざっとその名をあげていくと、「トゥデイ」「ビート」「フィット」「インテグラ」「ストリーム」「ジェイド」「セイバー」「ジャズ」「ホライゾン」など実にさまざま。
いずれも二輪車が最初で、のちに四輪車に転用されています。
セイバーは2代目「インスパイア」の兄弟車として1995年に登場したセダンで、「ジャズ」は初代が「シティ」の海外名、2代目はいすゞのSUV「ミュー」のOEM、3代目では「フィット」の海外名。
「『ホライズン』ってなんだっけ」という人は多いと思いますが、これはいすゞのSUV「ビッグホーン」のホンダ版でした。
さらに、グレード名やサブネームがバイクの車名と同じものには「ハミング」と「トゥデイ ハミング」、「スパーダ」と「ステップワゴン スパーダ」、「ダンク」と「ライフダンク」などがあり、全てを紹介しきれないほど、二輪・四輪の同一車名が多いことがわかります。
トゥデイ、フィット、ハミングなどはもともと原付スクーターの車名なので、日常生活で活躍するクルマの車名でもさほど違和感はありませんが、ジャズはアメリカンチョッパースタイルの原付バイクが始まりで、これはちょっと意外です。
ストリームは、1981年登場の未来的なデザインの後2輪式3輪スクーターで、それが2001年に車高の低い3列シートミニバンとして復活した際は、筆者(遠藤イヅル)も驚かされた記憶があります。
スポーツ系では1983年発売のビートに注目です。
奇抜なデザインのビートは、原付スクーターながら世界初の2灯式ハロゲンヘッドライトを採用。
こちらも世界初だった水冷式単気筒2ストロークエンジンには、「V-TACS」という可変バルブ機構を備えており、当時の原付自主規制値7.2psを叩き出していました。
その後1991年に再登場したクルマのほうのビートは、それほどまでに過激な性格ではありませんでしたが、ミッドシップの軽オープンスポーツカーとして、歴史に名を残すモデルとなりました。
そして、ホンダの二輪・四輪共有車名の代表格といえるのが「インテグラ」です。
■二輪から四輪、そしてまた二輪に使われた「インテグラ」の稀有な歴史
四輪車のインテグラは、1985年に「クイントインテグラ」として発売を開始したのが始まりです。
リトラクタブルヘッドライトを持つスポーティなルックスで人気を博しました。
1989年登場の2代目は、CMキャラクターにマイケル・J・フォックスを起用。「カッコインテグラ」というフレーズが話題を呼びました。
1993年には3代目に登場し、のちにインテグラの代名詞となるスポーツモデル「タイプR」はこの代で出現しています。
その後国内では4代目まで販売されましたが、中国やアメリカでは、今も販売が継続しています。
そんなインテグラも、元々は二輪車の名前でした。
始まりは、1982年のスポーツバイク「CBX400Fインテグラ」からでした。
CBX400F自体はその前年にデビューしていましたが、1982年7月に、それまで禁止されていたフェアリング(風防)の装着が可能となったため、CBX400Fにフェアリングを与えた仕様として誕生しています。
なお、排気量アップの大型版「CBX550Fインテグラ」も存在しました。
この他にもホンダは、「CB750F」にフェアリングを備えた「CB750Fインテグラ」、Vツインエンジンを搭載した「VT250F」に、ボディ下半分も覆うフルフェアリングを装着した「VT250Fインテグラ」も発売。
このように当時のホンダでは、フェアリングを持ったバイクを一連の「インテグラシリーズ」として用意していたのです。
さらに2012年からは、669ccエンジンを積んだ大きなスクーターとして「インテグラ」が復活。2016年まで販売されました。
これまでの2輪版インテグラシリーズや、クルマのインテグラとはまったく異なる、快適で実用的なコミューターというキャラクターとなりました。
使う車名に過去との関連性があまりないのは、興味深いところです。
ホンダでは他にも、「バモス」や「シティ」のように、全く別ジャンルのクルマに同じ車名を使うケースが多く見られます。
見境がないと言ってしまっては身も蓋もありませんが、他社ではあまり見られないホンダらしい傾向ともいえます。
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二輪と四輪が同じ車名という例を他に探すと、スズキ「ハスラー」「バンディット」などが思い浮かぶのみです。
これまでも数多くの共有車名を出してきたホンダですので、今後も、過去のバイクの車名を冠した「昔の名前で出ています」というクルマが登場するかもしれません。