新生活に備えてクルマが必要になり、中古車を選ぶという人もいるでしょう。しかし、豪雪地帯で乗られていた中古車を選ぶ際は注意が必要です。どのような点に注意すべきなのでしょうか。
■「雪国育ち」の中古車 安心の4WD多いが「特有の劣化」に注意
新生活でクルマが必要になり、中古車を選ぶという人もいるでしょう。その際に、以前どこの地域で乗られていたクルマなのかという情報が重要になることがあります。
特に、雪の多いエリアで乗られていたクルマでは特有のトラブルがあると言います。一体どういった部分に注意すればいいのでしょうか。
まず、中古車は店頭に並ぶまでの過程(仕入れ)に3つのパターンが考えられます。
1つ目は業者専門のオークションによって販売店が買い付けしてくるもの。2つ目はユーザーから直接買い取ったもの、3つ目は買い替えなどによる下取りです。
なかでも、オークションで出品された多くのクルマのなかから販売店が程度と価格を見極めてせり形式で落札された中古車が主流となっていまます。
それらは、入手後に整備やクリーニングなどを施し、店頭に並ぶというケースが基本になっています。
今までは、業者専門のオークションは資格ある業者のみが参加できましたが、近年は一般ユーザーがオークションに出品される中古車を事前に確認し、販売店に依頼して購入するというのも可能になってきています。
しかし、オークションで難しいのは、クルマの走行距離や状態はある程度把握できても、以前のオーナーがどこで乗っていたかまでは情報開示されていないことがあるのです。
つまり、オークション出品時点での販売店の目利き力(車両の状態の確認)が仕入れ時に重要になってくるようです。
そんななか、4WD車(四輪駆動車)は雪や悪路など、滑りやすい路面でも脱出しやすく、東北や北陸などの雪国をはじめとする地域では4WDが必須な場合が多くあります。
また、雪国に住んでいなくても、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツを趣味にする人や、安心のために4WDモデルを購入するという人もいるでしょう。
そんな事情から4WD仕様の中古車はニーズが高いのですが、やはりその多くのクルマがこうした雪国で流通・販売されていることが多く、なかには“雪国特有の”不具合を抱えているクルマも多いようです。
これについて、都内の中古車販売店スタッフT氏は以下のように説明します。
「積雪の多い地域のクルマは、雪そのものの影響、さらには『融雪剤』による塩害の影響を考慮しなければいけません。
そもそもクルマにとって水は苦手分野で、一般的な雨や雪程度を想定した設計になっています。
そして雪は、雨水が凍り結晶化したものです。そんな環境下に長期間置かれたクルマが、雪の少ない地域のクルマより劣化が進むのは当然です」
特に最近では融雪剤の影響も大きいと言います。
この融雪剤は塩などが持つ凝固点降下の特性を活かし、水が氷になる凝固点(0度)より低い温度でも雪を固まりにくくする効果を狙った仕組みです。
積雪によって日常生活に影響のあるエリアでは欠かせないアイテムですが、クルマにとって水分以上に苦手なのが塩分です。
クルマのボディ塗装の品質向上により、ある程度はカバーできますが、常時濡れた状態や融雪剤を撒いた路面の走行を繰り返す状況では、塩分が徐々に塗装の内面に入り込み、ボディや各部に使用されている鉄を酸化させてしまいます。
結果としてマフラーやサスペンションなどの下回りを中心にサビが発生しやすい、またはすでに発生しているケースが多くなるのだそうです。
そのまま放置すると、修復のできない大きな腐食になったり、サスペンションやボディパネルなど高額なパーツを交換する必要が生じるなどのトラブルにつながる可能性があります。
「サビの防止策として、アンダーコートやシャシーブラックなどの特殊塗料を下回りに施行した車両も見かけますが、完全ではありません。
また、すでにサビが発生しているのを目隠しするために塗られているケースもありますので、アンダーコート処理された中古車なら安心とも言えないのが本音です」(中古車販売店スタッフT氏)
■一見お買い得な「寒冷地仕様」も注意が必要?
このように、「雪国育ち」の中古車では確認するべきポイントがありますが、中古車販売店では仕入れの際にどういった注意をしているのでしょうか。
「我々が中古車を仕入れるさいも、下回りなどもかなり入念にチェックしています。
内装のヤレやエンジンルーム、トランクなどのチェックで過去の痕跡を探し、状態のいい中古車を選ぶようにしています。
たとえ安く仕入れたとしても、状態を戻すまでに費用がかかるケースも多いですし、できる限り、雪国からの中古車は仕入れないようにする店もあるようです」
そんな雪が多い地域に向けた対策を施した「寒冷地仕様」というオプションがあります。一体どのようなものなのでしょうか。
「あくまで寒冷地仕様は、氷点下10度になる地域に向けたオプションとなっていますので、エンジンなどは標準車と同一です。
寒冷地対策として、容量の大きいバッテリーや発電量の多いオルタネーターの搭載に加え、下回りにプロテクターやアンダーカバーなどが追加されるなど、雪の影響を受けやすいパーツに凍結防止策が施されています。
また車種によっては寒さに強く、ヒーター機能が強化されたエアコンが搭載されるケースもありますし、また新車でアンダーコート加工などをされるモデルもあるようです」
寒冷地仕様だからといって夏場に弱いわけではなく、標準車と全く変わらない快適性を確保しています。
しかし、こう聞くと中古車では寒冷地仕様狙いなのかと思いがちですが、なかなか難しい問題もあると言います。
「そもそも寒冷地仕様自体が少ないというのもありますが、あえて狙うのはあまりお勧めしません。というのも、その中古車自体が寒冷地仕様でないといけない厳しい環境で使われていたクルマだったと推測されるからです。
新車で寒冷地仕様を選ぶのは悪いアイデアではありませんが、中古車はいくら対策が施されていても劣化している部分が少なからずある可能性が高いのです。
知り合いの北海道の業者も、中古車は雪の少ない本州から入手しているとの話も聞きます。程度のいい中古車を入手して、自身でアンダーコートなりの雪対策を施工したほうが良いと思われます」
もし寒冷地仕様が欲しい場合は、下回りを念入りにチェックし、雪の降らない地域で乗られていたと思われるクルマを選ぶのが、ベストな選択肢と言えるかもしれません。
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中古車選びでは、そのクルマがこれまでどのような扱いをされてきたかを確かめながら購入することが大切です。
雪国の中古車では、融雪剤が散布された道路を走ってきたことが多いために、これまでのメンテナンス記録だけでなく下回りのサビなど、特に慎重な確認が必要だと言えます。
なお、中古車のなかには第三者認定による査定を受けたクルマや、メーカー系列の販売店では独自の厳しい点検を経たクルマが販売されることもあるため、こうしたプロによるチェックが行われた中古車を選ぶと良さそうです。