2008年、日産はコンパクトハイトワゴン「キューブ」(キューブ キュービック)をベースにしたEV(電気自動車)、その名も「でんきキューブ」を発表しています。どのようなクルマなのか、詳しく紹介します。
■謎のグリルは「電気」を象徴!?
世界に先駆け量販EV(電気自動車)「リーフ」を販売した日産ですが、2008年にコンパクトハイトワゴン「キューブ」(キューブ キュービック)をベースにしたEV、その名も「でんきキューブ」を発表していました。どのようなEVだったのでしょうか。
電動化が進む日本車のはしりといえるのが、2010年に登場した日産のリーフです。
2017年には2代目にフルモデルチェンジを行い、2024年現在でもなお日産を代表するEVとして販売を続けています。
しかしリーフの発売よりも前に、日産のコンパクトカー、キューブのEVが作られていたのをご存知でしょうか。
それが「でんきキューブ コンセプト(DENKI CUBE CONCEPT、以下でんきキューブ)」でした。
ズバリ「でんき」と銘打たれたこのキューブは、2008年のニューヨークオートショーに出品されたコンセプトカーでした。
でんきキューブは、2代目キューブ(Z11型)のみに設定のホイールベースが長い3列7人乗りモデル「キューブ キュービック」がベース。
床下には、日産・NEC・NECトーキンの3社による合弁会社「オートモーティブエナジーサプライ株式会社」(AESC)で生産されるリチウムイオンバッテリーを搭載していました(社名はいずれも2008年当時)。
出力や航続距離は明らかにされませんでしたが、当時の日産は「2010年までに電気自動車を市販化する」と発表しており、でんきキューブはこの取り組みに向けた象徴的な存在ともいえました。
基本的な外観はキューブ キュービックをキープしつつ、ヘッドライト周囲の光るリング、電気のアイコンを配したフロントグリル、五つ穴をひとつのまとまりとしたフォグライトやテールライトなど、各部を未来的なデザインに変更。
中心部に四角い意匠を施したホイールキャップも特徴的で、充電ポートはグリルのセンターに配置していました。
米国で発表されたモデルながら、リアドアにはひらがなで「でんきじどうしゃ」と書かれており、開発陣の遊び心も感じられました。
■もしも「でんきキューブ」が市販化されていたら「世界は変わっていた」!?
でんきキューブは、インテリアも2代目キューブのイメージを残しながらも、ホワイトやイエローを中心とした色調で明るい雰囲気に。ガラスルーフも装着され、開放感をアップしていました。
目の前に広がるガラスパネルにはオートマチックのシフトボタン(物理式)が置かれているのが斬新で、メーターもデジタル式に。空調ボタンも物理スイッチでしたが、オーディオはタッチパネル式だったようです。
でんきキューブの市販化は行われませんでしたが、翌2009年からは3代目キューブ(Z12型)が北米市場でも発売を開始していますので、キューブの知名度向上に寄与したと思われます。
なお日産では、リーフの先行開発用として同じくキューブ キュービックを改造した「キューブ EVテストカー」を2010年に製作しています。
こちらはでんきキューブほどのコンセプトカー的な加飾は行なっていませんが、フロントグリルにはでんきキューブ譲りの電気のアイコンが刻まれていました。
モーター出力は60Kw(82PS)で、でんきキューブと同じくオートモーティブエナジーサプライによる高性能リチウムイオンバッテリーを積んでいました。
キューブ EVテストカーは実際にメディア関係者などを招いての試乗も実施され、現在は、日産 座間事業所内にある「日産ヘリテージコレクション」にて保存されています。
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2010年ではまったく新しい乗りものといえたEV。その印象を強く付けるため、初代リーフは奇抜にも見えるデザインを持つ、オリジナル車種として誕生しました。
しかしEVの普及が進みつつある現代の視点では、むしろキューブのような親しみやすいコンパクトカーをEVにしたほうが、EVをより身近に感じられたのでは、とも思えます。
「たられば」を述べても仕方ないのですが、でんきキューブが市販されていたら、自動車の歴史は今と少し違っていたのかもしれません。