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5速MTあり! ホンダ「斬新”カクカク”SUV」がスゴい! めちゃ「ユニークすぎデザイン」がカッコイイ! ほぼ「コンセプトカー」な「エレメント」は時代を先取りしすぎたのか

くるまのニュース 2024年7月1日 10時10分

ホンダは過去に、「コンセプトカーそのまま」の姿で登場させてしまった斬新SUVがありました。一体どんなモデルだったのでしょうか。

■「そのまんまコンセプトカー」 今見ると超カッコイイ!

 いまや自動車市場はミニバンやSUVなどの実用性が高いクルマが主役です。続々と登場するSUVの多くが好調な販売を記録しています。
 
 ところが、発売当時ではあまり人気が出ず、現代になって見直されているクルマがいくつかあります。そのひとつが、ホンダ「エレメント」です。

 エレメントの原型となったのは、2001年1月にアメリカ・デトロイトで開催された「北米国際自動車ショー」で公開されたコンセプトモデル「Model X(モデルエックス)」です。

 Model Xが想定したターゲットは、サーフィンやスノーボード、アウトドアを趣味とする「Y世代(ジェネレーションY・1980年代~1990年代半ば頃に生まれた世代)」の若い男性。

 企画やデザインは、ホンダの北米の研究開発拠点「ホンダ R&D アメリカ」のロサンゼルスセンターが担当しました。

 ミニバンとSUVが融合したようなズングリとしたフォルムに、その前後を覆う大きな面積の無塗装樹脂パーツを特徴とするエクステリアのデザインモチーフは、海水浴場を守るライフセーバーの拠点「ライフガードステーション」でした。

 アウトドアを楽しめるクルマは、走行時よりも停車時の「楽しさ」が重要です。

 そこでModel Xでは、よりアウトドアを楽しめる「移動空間」を目指し、デザインとユーティリティ・機能性の両立を追求していました。

 ルーフの後部を前方スライド、テールゲートの窓もテールゲート内に格納可能として、ピックアップトラックのようなワクワク感と、広い荷室スペースを獲得していました。

 さらにフロントドア後部のBピラーを廃して、リアドアを後ろヒンジ式の「観音開き」とすることで、広い開口部を確保。荷物の出し入れも容易で、サーフボードを縦に積むこともできました。

 車内も工夫が凝らしてあり、多様性・機能性を追求していました。

 フルフラットフロアと多彩なシートアレンジ、泥や砂を丸洗い可能なウォータープルーフ・インテリアにより、乗員の数・荷物の量、さまざまなシーンに応じることを可能としました。

 シートやダッシュボードのデザインは、コンセプトモデルらしく近未来的な雰囲気でまとめられていました。

 ベースは横置きに「i-VTEC」エンジンを搭載するFF車と想定されていましたが、面白いのは3ペダルの5速マニュアルトランスミッションであること。

 コンセプトモデル、かつオートマチック車の比率が多いアメリカ市場向けを考えると、ちょっと意外といえます。

■予想外の反響に市販化決定! 日本では…

 そしてショーの閉幕後にホンダはModel Xの市販化に向け、リサーチを実施しました。

 その結果、1年後の2002年1月のロサンゼルスショーで市販化を発表。同年12月から北米市場で「エレメント」と名付けられて発売を開始しました。生産はオハイオ州の「ホンダ・オブ・アメリカ」の工場が担当しています。

 市販版では、インテリアやエクステリアのディティールが一般的なデザインに変更されたほかは、概ねModel Xのままです。

 もちろん、スライド式ルーフや観音開きドア、汚れや水に強い内装も継承されています。

 ベースは同社のSUV「CR-V」で、2.4リッター i-VTECの「K24A」型を搭載。駆動方式はFFと4WD、トランスミッションには5速マニュアル、4速AT、5速ATが用意され、豊富なバリエーションが設定されました。

アウトドアレジャーにお似合いも…20年早かった…

 続く2003年4月には日本でも、K24A型エンジン+4WD+4速ATの組み合わせのみで発売しました。

 アメリカ生産の逆輸入車ですが、リアシートを外せた北米仕様と異なり、日本版では跳ね上げ式になりましたが、これは日本では外したシートを置く場所がない、という事情を鑑みたものです。

 ステアリング位置は右側に、乗車定員も4名から5名に変更されていたのも、日本の実情に合わせたものでした。

 北米では月6000台の販売を見込んだエレメントは、斬新な外観とアウトドアを楽しむためのコンセプトがマッチしてヒット作に。2011年モデルまで販売が続きました。

 しかし残念ながら日本では人気が出ず、3年に満たない短い期間の2005年12月に販売を終了してしまいました。

 フロントドアを開かないとアクセスできない観音開きのリアドアや、当時では大きいと感じられた1800mmオーバーの車幅、高価格、そして無塗装の樹脂パーツが多いエクステリアなどがその理由と言われています。

 しかし、SUVがブームから定番になった現在では、エレメントのような無塗装樹脂を多用したデザインはむしろ「カッコイイ」とされ、あえて黒い樹脂パーツを装着するクルマもあるほどです。

 その中で、個性的・機能的で未来感があり、アウトドアの本場・アメリカの空気を感じさせるエレメントのデザインはとても魅力的に映ります。

 しかもウォータープルーフのシート、開放的な荷室など、アウトドアを楽しむことを追求した設計は、アウトドアが一般的になった今こそ通用するものです。

 そのため現在ではエレメントは高い評価を得ることになりました。

 現在でも「販売してほしい!」という声があがるほどで、その人気再燃ぶりは凄まじいものです。

 販売期間の短さによる希少性、個性的で他の人と違うクルマに乗れるという満足感を得られることもあって、人気が急上昇中です。

※ ※ ※

 斬新すぎたがゆえに、販売当時は評価されなかったクルマとして、現在では「珍車」的な扱いも受けることもあるエレメント。

 しかしエレメントは、時代を先読みしすぎてしまった「迷車」と言ったほうがよいのかもしれません。

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