約40年以上前にデビューしたスバルの「ドミンゴ」は、超コンパクトなミニバンとして一定の支持を集めたモデルです。今なお復活を求める声も聞かれる“名車”について紹介します。
■軽ボディに3列シート、小回りの効く陽気なやつ
近年、小さめのボディに3列シートを採用するコンパクトミニバンが人気を集めています。
そんなニーズをいち早く先取りしていたのが、いまから40年以上前にデビューしたスバルの「ドミンゴ」でした。
コンパクトミニバンは、普段は家族だけで使い、いざというときには大人数に対応できる余裕が、多くのユーザーの心をつかんでいるようです。
トヨタ「ノア/ヴォクシー」に代表されるミドルクラスのミニバンに比べ扱いやすいサイズ感で廉価なところも、人気のポイントなのかもしれません。
そんなコンパクト3列シートミニバンですが、近年になって登場したものではありません。
その先駆者は、コンパクトというにも小さい、“超極小”ミニバンと呼ぶべきモデルで、なかでも高い人気を誇ったのがスバルの「ドミンゴ」です。
ドミンゴの登場は1983年、当時発売されていた軽ワンボックス車「サンバートライ」のボディに3列シートを搭載し、乗車定員は7名に。エンジンは当時の軽自動車規格550ccから1000ccエンジンに積み替えられ、普通車登録になっています。
ボディそのものはサンバートライのものを流用していますが、前後バンパーが延長されたことで、当時の軽自動車枠である3200mmを超える3425mmとなりました。
バンパー以外にもヘッドライト形状を変えるなど、ベース車との差別化が図られました。
特徴はなんといっても、普通車の中では最小クラスのボディながら、7名が移動できるという点です。
ボディがコンパクトなうえに、最小回転半径わずか3.9mと小回りも効くので、入り組んだ狭い道でもへっちゃらです。
ファミリーカーとして重用されたほか、狭い山道を行き交う温泉街のホテルなどで送迎用としても多く使われました。
1983年のデビュー当初は、リアにエンジンを搭載してリアタイヤを駆動するRR方式とパートタイム4WDが選べました。
1986年のマイナーチェンジではフルタイム4WDモデルがラインナップされ、4WDモデルのみ1200ccへと排気量が拡大しています。
一方、このような走行性能の向上とは裏腹に、トランスミッションはMTのみの設定が引き継がれています。
ベースとなったサンバートライに合わせたものと思われますが、AT車の市場シェアがどんどん拡大したこの時期において、ある種の英断だったのではないでしょうか。
同じくマイナーチェンジで追加されたサンルーフ「サンサンウィンドウ」は、ルーフ中央に大型のサンルーフを備えるほか、2列目シートの頭上、ルーフの左右にまわりこむようにガラスルーフが備えられ、開放感の高いものでした。
軽ワンボックス車が持つ商業的なイメージをくつがえす装備で遊び心を演出したことも、ドミンゴの人気を支えたのでしょう。
1994年、ベースとなるサンバートライが「サンバーディアス」へとモデルチェンジしたことを受けて、ドミンゴも2代目に進化しました。
何よりの進化ポイントは、MTとCVTを選択できるようになったことでしょう。搭載エンジンも見直され、RR、4WDともに1200ccとなっています。
特徴的なサンルーフは開口部をさらに広げ、「サンサンルーフ」として継承しました。
しかし2代目ドミンゴにはより特徴的なルーフを持つモデルが存在しました。それが「アラジン」です。
なんと、ポップアップルーフを備えた「車中泊」仕様車が、ディーラーカタログモデルとして販売されていたのです。
受注販売で当時は282台しか売れなかったといいますが、今発売されたらもっと人気が出そうですね。
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その後ドミンゴは1998年まで生産され姿を消しましたが、コンパクトミニバンはその後も多くのユーザーから求められています。
最小クラスのボディで7人乗りのドミンゴは、いま改めて求められるモデルかもしれません。