活況を見せる中古車市場ですが、最近は「10年落ち」「100万円~150万円程度」の高級モデルの中古車が人気となっています。ただし、安い反面、経年劣化が進んでいるのは否めません。古い中古車を購入しても問題ないのでしょうか。
■安い車両価格にはワケがある?
近年、クルマに先進技術が搭載されたり、部品の高騰などにより新車価格が上昇傾向です。その影響もあって中古車市場は活況が続いています。
なかでも最近は100万円~150万円という値がついた高級モデルの中古が盛り上がっているようですが、経年劣化が進んでいたり、装備もひと昔前のものが搭載されているなど、年式が古いことは否めません。
現在人気となっている100~150万円程度の高級モデルの中古車は、国産では5~7年落ち程度、輸入車なら10年以上前のモデルが多く存在。当時の国産車はハイブリッドが普及していますが、輸入車はほとんどがガソリン車です。
ナビゲーションやABS、エアバッグなどの装備はひと通り揃っていますが、「衝突被害軽減ブレーキ」などの運転支援システムは装着されていないモデルが中心となっています。
とはいえ、もともとが高級車なので、現代でも十分通用する豪華なインテリアが備わっており、それでいて求めやすい価格なのですから、人気になるのも分かります。
ただし、劣化はしているので、コンディションが悪化したり細かな故障が発生する確率が上がることは否定できません。そういった中古車は、労わりながら乗るという意識が必要です。
購入後にどのようなメンテナンスをしたらいいのか、整備工場を経営するT整備士に聞いてみました。
「高級モデルを中古で安く購入できたぶん、メンテナンスにお金をかけてください。
なかでもクルマにとっての『血液』のような存在であるオイル類は、走行距離が短くても劣化している可能性があり、購入後は全部新しくしたほうがいいでしょう。
また、『ATフルード』や『冷却水(クーラント)』の交換で故障のリスクを減らせます」
エンジンの動作に関して異音や異臭がしないか、走り出してステアリングに変な振動や左右に引っ張られる感覚はないかなど、中身のチェックをおこない、メンテナンスをするのがいいとのこと。
「購入時に装着されていたタイヤも、見た目がきれいで溝もあったとしても、すでに硬化してグリップ力が低下している可能性もあります。見た目だけの判断は禁物です」(T整備士)
油脂類、保安部品の交換のほかに、良好なコンディションを保つためにやっておくべきメンテナンスはあるのでしょうか。
「古い中古車のヘッドライトは、バルブがハロゲンのままだったり、ヘッドライトカバーが経年劣化で曇ってしまったりして光量が足りないこともあります。
適合するLEDバルブへの交換やカバーの曇り取り(研磨)で、夜間走行の視界がかなり改善されると思い、やっておいて損はありません」(T整備士)
また、樹脂製やゴム製のパーツは経年劣化の影響を最も受けやすいものです。
エンジン各部のパーツとパーツを繋ぐ場所で使われていることも多く、部品自体の価格は安くても、プロに任せると工賃が高くなることもあるので、予算に合わせて少しずつ手を加えていくのもいいでしょう。
では、逆にやらなくてもいいメンテナンスはあるのでしょうか。
「エアコンガスの補充や入れ替えはやらなくてもいいかもしれません。それより、フィルターの交換やエバポレーターの洗浄を先にした方がいいでしょう。
あとタイヤに『窒素』を入れるサービスがありますが、そもそも大気中の約8割が窒素なのですから、ほとんど意味はありません。普通に適正な空気圧を保つだけで十分です」(T整備士)
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手頃な予算で高級車に乗れるのが中古車の魅力ですが、やはり維持するには新車以上に労力がかかるのは仕方ないところでしょう。
それでも色褪せない魅力を持つクルマなら、メンテナンスに手間暇をかけた以上の喜びを感じさせてくれるでしょう。