かつてトヨタ技術会が開発した「TES-ERA EV」。大人も子供もワクワクするこのクルマは、一体どのようなモデルだったのでしょうか。
■トヨタの爆速「ガルウイング・スポーツカー」
かつてトヨタ技術会(TES)が開発した、「TES-ERA EV(テセラEV)」。
同車は「ガルウィング」式のドアを採用する本格スポーツEVで、コンセプトカーでありながら実際に高い走行性能を有する、魅力的なクルマでした。
TES-ERA EVは、カスタムカーの祭典「東京オートサロン2012」に出展された、ガルウィングスポーツEVです。
そのキーワードは「楽しい」「速い」「先進」。
“大人も子供もワクワクするクルマを作りたい”というコンセプトのもと、トヨタ技術会の約20名のメンバーの協力によって、設計、開発、実車製作が行われ、2011年3月の企画構想スタート。
わずか7ヶ月後となる同年10月には、電気自動車で行われる「JEVRA EV 50kmレース」に出場し、総合8位完走という好成績を獲得しました。
そんなTES-ERA EVのボディサイズは、全長3914mm×全幅1842mm×全高1233mmで、ホイールベースは2650mm。
短い全長でありながら幅は広く、ローアンドワイドでスポーティなフォルムが目を引きます。
エクステリアには、「見た目のインパクトで目を引くデザインにしたい」という開発者の思いから、スーパーカーさながらの迫力を放ち、視覚的に訴えかけるガルウィングドアを採用。
実はこのドアやボディのベースには、トヨタのガルウィングクーペ「セラ」が利用されており、車名の中に“SERA”の文字が隠されているのも粋な演出と言えるでしょう。
ちなみにキャビン周り以外のスペースフレームは新造のもので、サスペンションはスープラのダブルウィッシュボーンが用いられました。
インテリアは、未来の操作系を表現するために、タッチパネルを活用したスイッチレスのシンプルな運転席とされ、シフトやランプ類の操作が全てタッチパネルで完了できるようになっています。
パワートレインには、レクサス「RX」のハイブリッドシステムから流用したモーターとインバーターを採用しますが、EVのキモとなるバッテリーについては、制御系を含めて大容量のリチウムイオン電池を新設。
さらにレース用のキャパシタを搭載することで、F1ではKERSと呼ばれる回生ターボを実現しました。
こうして最大出力167馬力・最大トルク335Nmを発揮するTES-ERA EVは、後輪を駆動し、ポテンシャルを活かせば時速200kmの速度での走行も可能だといいます。
ボディカラーは、「ダークブルーマイカ」の1色のみ。
この色は、トヨタ技術会が主催したイベントの中で子ども達がデザインしたものから、最優秀作品に選ばれた色が実車に採用されたもの。
このようにして完成したTES-ERA EVは、ゼロ回転から最大トルクを引き出すモーターの特性と回生ターボを活かして、アクセルを踏み込んだ瞬間に従来のエンジン車では考えられない鋭い加速を実現。
また、1ペダルで加減速をコントロールすることができるなど、今までのクルマとは異なる走り方が楽しめると、スポーツカー好きからも高評価を獲得しました。
※ ※ ※
TES-ERA EVは、トヨタ技術会の2011年度プロジェクトだったため、すでに開発は完了しており、市販化されることはありませんでした。
しかし、トヨタの有志の手によって開発された同車のデザインや性能の高さは、2024年現在においても目を見張るものがあります。
このTES-ERA EVの開発で培われた技術などのDNAは、将来トヨタがラインナップするスポーツEVに活かされる可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。