「覆面パトカー」を見分ける方法はあるのでしょうか。車両の特徴や走り方などに着目し、解説します。
■「覆面パトカー」あなたは見分けられる?
さまざまな警察車両があるなかで「覆面パトカー」は、緊急走行時以外は一般車のような見た目をしており、周囲のクルマに“擬態”しています。
そのため、緊急走行をしていない時は覆面パトカーであることを見抜くことは容易ではないですが、「車両」「走り方」などに特徴があるのです。
覆面パトカーと一言にいっても実はバリエーションが存在し、大きく分けて3種類あります。
主に刑事が運用し、事件などの内偵捜査に使う「捜査用覆面パトカー」、皇族や海外からの来賓、首相などの要人を乗せたクルマの周囲で警戒にあたる「警護用覆面パトカー」、そして交通取り締まりを行う「交通取り締まり用覆面パトカー」(いずれも通称)です。
このうち、交通取り締まり用覆面パトカー(以下、交取覆面)は、正式には「交通取締用四輪車」といいます。
主に高速道路や幹線道路など、スピードの出やすい道路で速度違反を取り締まったり、事故処理に当たるほか、一時停止無視や転回禁止などを検挙するため、違反車両が現れるのを待っているときもあります。
運用しているのは青い制服に白いヘルメットを被った交通機動隊や高速道路交通警察隊の隊員で、2人1組で乗務にあたっています。
このように、違反車両の追跡や事故処理などを行うため、使われるクルマはスピードを出しやすく後席も使える「高性能な国産4ドアセダン」が多い傾向にあるのです。
基本的にはいずれの車種においても市販モデルと大きな差はないものの、ほとんどの覆面パトカーでは「白」「黒」「グレー」「シルバー」など、彩度が低く無難なボディカラーが採用されています。
一部で例外がありますが、こうした色を選ぶことで周りのクルマと溶け込みやすく、取り締まりがしやすいのです。
さらに、国や都道府県の限られた予算で大量に導入されていることから、「ホワイトパール」など有償色は選ばれず、エアロやスポイラー、コーナーセンサー、コーナーポールといったオプション類もほとんど省かれています。
また、パトカーならではの「専用装備」にも注目したいところです。
緊急車両であるため、緊急走行時は赤色灯を点灯させてサイレンを鳴らしますが、交取覆面にはルーフに埋め込まれた赤色灯が起立して点灯します。
この赤色灯を取り付けるためにルーフの一部が四角く切り取られており、トラックやバス、大型SUVなど車高のあるクルマに乗っている場合、見分けやすいポイントになるでしょう。
そして、「アンテナ」にも警察車両らしい特徴があります。
かつては自動車電話アンテナに偽装したものや、リアウインドウにテレビ用のダイバーシティアンテナ型の無線アンテナを装着していますが、一般車がこうしたアンテナを取り付けなくなってから、覆面パトカーも比較的小ぶりで目立たないものに変わっています。
しかしながら、純正ではなく“後付け”であることから、配線の加工が雑で少しはみ出していたり、そもそも純正では外部にアンテナを備えない車種に装備されてしまっている例もあります。
また、リアウインドウは隊員が乗っている様子が見えないよう、かなり濃いスモークフィルムが貼られている場合も多くあります。
しかし、こうした車両の特徴はマニアックといえ、周りのクルマとの決定的な違いとは言い難く、有効な見分け方とならないかもしれません。
一方で「ナンバープレート」は、比較的有効な判断ポイントになりえます。
各都道府県警察では、その管轄内で取り締まるルールがあるため、例えば千葉県警が東京都内で取り締まるといったことはなく、「他県ナンバー」ではないかもチェックしたほうがよいでしょう。
ただし、高速道路などでは都道府県境で交通違反を取り締まることもあるため、例えば千葉県警の交取覆面が、東京都内の最初の出口まで違反車両を取り締まるといったことは日常的に行われています。
加えて、好きな数字を選ぶことが可能な希望ナンバーは交取覆面ではほとんどみられず、ゾロ目などはまれです。
では、最も見分けやすい交取覆面の特徴とは何でしょうか。
その答えは警察車両らしく「法令をしっかり遵守して走行していること」です。
例えば走行の仕方では、制限速度をぴったり守ることは当然で、さらに高速道路など複数の車線がある場合は、必ずルールに従って左側車線を走行しています。
車線変更をする場合は、交通ルールで定められた通りとし、きっちり「3秒前」から「その行為が終わるまで」ウインカーを点灯させるなど、お手本のような動きをします。
また、ムダな加減速やみだりな車線変更、常に追い越し車線を走行するといったことはまずありえません。
しかし、速度違反車を見つけると即座に車線変更し追跡を開始するため、それまで真面目に走行していたクルマが急に加速し、前のクルマを追いかけ始めたら、速度違反を取り締まる交取覆面でほとんど間違いはありません。
加えて、法令を遵守するという点はクルマ自体にも表れています。
警察では毎日、使用前に義務付けられている日常点検を欠かさず行っており、ライトの球切れなどがなく、車体やホイールもピカピカに保たれています。
リアウインドウにはルール上貼付が義務付けられている「車庫証明ステッカー」がきっちりと貼られるなど、法令遵守の姿勢がよく表れています。
■「クラウン」以外の車種もある?
こうした走り方の特徴に加え、アンテナやナンバープレートなどの特徴をおさえておけば、交取覆面は比較的容易に見分けることが可能です。
では、具体的な車種には傾向などが存在するのでしょうか。
先出の通り交取覆面は、国の予算で導入されるものが多く存在するため、特定の車種が多くなっています。
最も多いのがトヨタ「クラウン」で、これまで歴代のクラウンでは多数国費(国の予算)で投入されてきました。
現在は最新の16代目ではなく、先代や先々代のスポーツグレード「クラウン アスリート」が主流です。
ちなみに先代クラウンでは、一般ユーザーにはあまり人気がないスポーティ系の廉価モデル「RS B」をベースです。
廉価モデルをベースとしているのは、限られた予算で大量投入されるためであって、それにともないクラウンの上級モデルに備わる5スポークの大径メッキホイールや、シーケンシャルウインカー(流れるウインカー)が装備されていないなどの特徴があります。
また、トヨタ「マークX」や日産「スカイライン」も交取覆面の定番車種ですが、同時に捜査用覆面としての採用もあります。対してスズキ「キザシ」やトヨタ「アリオン」などは捜査用覆面でのみ導入されています。
対して、都道府県の予算から賄われるものはほかの地域ではみられない珍しいものが投入されることもあります。
例えば東京都の警視庁ではマークXのうち、モデリスタブランドが手掛けた高性能タイプ「+Mスーパーチャージャー」モデルが導入。また「カムリ」に「TRDフルエアロ」を装着したものなど、カスタムが施されている交取覆面もあります。
また、セダン以外にも、新潟県警の日産「エクストレイル」(先々代)や埼玉県警のスバル「WRX」など、各都道府県警独自のモデルもあり、このようなレアなモデルはむしろ覚えやすいといえます。
上記をまとめると、交取覆面は「都道府県内ナンバーで地味な色の国産セダン」に「不自然なアンテナと濃いスモークガラス」を備え、「法規をきっちり守って走行」し、速いクルマがいれば「ウインカーを正しく使って即座に追跡する」動きを見せるならビンゴでしょう。
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交通ルールを厳守すれば交取覆面や警察車両に対して、必要以上に警戒する必要はありません。
その一方で、パトカーは違反や事故が多い道路で重点的に取り締まりを行っていることから、「警察車両が走行している=十分運転に注意が必要な道路である」と捉えることもできます。
「パトカーの前だからスピード出さないようにしよう」ではなく、「パトカーが走行するような道だからいつも以上に注意しなければならない」と捉え、安全運転に努めましょう。