国が構想している高規格道路のうち、東京都の新たな東西軸となるのが「多摩新宿線」という構想です。実現すれば一体どう便利になるのでしょうか。また、話はどこまで進んでいるのでしょうか。
■「高速空白地帯」に悲願の「信号ゼロ道路」実現!?
国が構想している高規格道路のうち、東京都の新たな東西軸となるのが「多摩新宿線」という構想です。
実現すれば一体どう便利になるのでしょうか。また、話はどこまで進んでいるのでしょうか。
多摩新宿線(仮称)は、新宿駅方面から荻窪、田無、東村山を経由して、瑞穂町の国道16号あたりまで到達する構想線が引かれています。
都心~青梅を4車線でつなぐ「青梅街道・新青梅街道」とほぼ同じルートを取っているため、東埼玉道路や新大宮バイパスのように、4車線の新青梅街道の中央部に橋脚を立てて有料道路を通す「高架立体化」という形も想定されます。
このエリアは、関越道と中央道のあいだの広大な「高速空白地帯」となっています。どこへ移動するにしても信号、信号の連続で、スムーズな中長距離移動に課題があります。そこへ「信号ゼロ道路」が完成すれば、都心や各方面の高速アクセスが誕生し、利便性は飛躍的に向上することが期待されます。
多摩新宿線は平成初期から構想路線として存在し、関東地方整備局が2021年に策定した「新広域道路交通計画」にもリストアップ。それをふまえ、東村山市や青梅市など沿線市町の都市計画マスタープランにも、「構想を進めます」「ICの位置が決まれば、そこへのアクセス道路を整備します」など、期待がにじみ出る方針内容が記載されています。
■具体化はいつになる? カギになるのは「2つの道路」
さて、肝心の進捗はどうなっているのでしょうか。まずは「計画段階評価」で概略ルートを決定するプロセスが、事業化への第一歩となりますが、それは近いのでしょうか。
残念ながら、目立った動きは今のところありません。検討の主体である東京都は「必要な検討を進めるなど、地域の実情に応じた検討を行う」と述べるのみで、都議会でも10年以上、建設的な議論は行われていません。
また、具体化を求めて自治体が独自の検討会、協議会を立ち上げる動きも特にありません。
要望活動としては、小平・東村山・清瀬・東久留米・西東京の6市で構成する「多摩北部都市広域行政圏協議会」が、2023年8月に東京都に対し「多摩新宿線に関する検討と地元自治体への情報提供」を求めています。ただし要望書には明記されず、あくまで「口頭要望」にとどまっています。
国はこの多摩新宿線に対してどういった立ち位置なのでしょうか。国会でもほとんど触れられないこの構想路線ですが、2006年に当時の北側一雄国土交通大臣が、多摩新宿線の将来の可能性に対し、以下のように答弁しています。
「最優先は、やはり環状道路ですね。環状道路の整備をしっかりと進めていくこと、これがやはり最優先の課題というふうに認識をしております。ですから、圏央道や外環道などの整備をまずしっかり進めながら、それを見つつ、多摩新宿線につきましても、都とよく協力をいたしまして、必要な検討を進めさせていただきたいと考えております」
つまり、国の優先順位としては、とにかく圏央道と外環道を一刻も早く完成させないと、東京周辺の交通はどうにもならないという思いが伺えます。
圏央道は横浜区間と成田空港周辺がブツ切れで、工事が急ピッチで行われているところです。
外環道は、関越道~東名が工事中ですが、陥没事故の影響で、本線シールドは南側の作業が今も完全停止。開通に大幅な遅れが発生しています。最終工区の東名~湾岸に至っては、概略ルートすら未定のままです。
これらが成就しないまま闇雲に事業に手を付ければ、年間予算がいくらあっても足りないというわけです。
逆に言えば、「世紀の大事業」と言われる圏央道・外環道の工事が一段落すれば、各地の道路構想は、一気に具体化に向けて動きが現れてくるかもしれません。