日産、ホンダ、三菱は2024年8月1日、3社の協業開始にあわせて「車両の相互補完」(OEM供給)に合意したと発表しました。こうした関係性の先には次期モデルの共同開発が考えられますが、なかでもラージクラスミニバンは大いに期待できるジャンルといえます。
■アルファード/ヴェルファイアに対抗する「秘策」とは
2024年8月1日に次世代技術開発における協業を発表した日産、ホンダ、三菱の3社ですが、同時に「車両の相互補完」(OEM供給)についても明らかにしました。
その先には、3社共同での新型車開発もあり得るでしょう。なかでも真っ先に期待したいのがトヨタ「アルファード」に対抗するラージミニバンの次期モデルです。
現在のラージミニバン市場は、アルファードが月間6500台、同じくトヨタの「ヴェルファイア」が月間約2900台規模で売れています。
対抗馬となるホンダの「オデッセイ」は月間約1000台、三菱「デリカD:5」は月間約1500台、日産の「エルグランド」に至っては月間約100台という寂しい状況です。
ラージミニバンよりもサイズの小さいミドルクラスミニバンでは、日産の「セレナ」が月間約7000台でトップ、次いでトヨタ「ノア」が月間約6000台、トヨタ「ヴォクシー」も約6000台、ホンダ「ステップワゴン」も月間約5500台と、ほぼ互角の状態で健闘しています。
それに比べラージミニバンでは、トヨタの“独り勝ち”状態となっていることもわかります。
なにより500万円以上する高級車のアルファードが、ミドルクラス並みに売れている事実にも驚かされます。
一台売れれば大きな利益が見込めるラージミニバンは3社にとっても見逃せるはずがなく、シェアを拡大したいジャンルといえるでしょう。
今後アルファードに対抗する新型ラージミニバンを日産とホンダ、そして三菱が共同開発する場合、どのようなクルマとなるのが望ましいのでしょうか。まず重要なのがボディサイズです。
アルファードの現行モデルは、全長4995mm×全幅1850mm×全高1935mm。アルファードが人気を集める理由のひとつは、このボリュームあるボディサイズにあると考えられます。
ちなみにエルグランドが全長4945mm×全幅1850mm×全高1815mm、オデッセイが全長4855mm×全幅1820mm×全高1695mm、デリカD:5が全長4800mm×全幅1795mm×全高1875mmと、基本的にひと回り以上小さく、背も低いことがわかります。
ここはひとまず、アルファードの堂々たるサイズ感を丸コピするべきでしょう。
関連する要素として、「車内からの見晴らしのよさ」も重要です。
エルグランドは全高1815mm、オデッセイは全高1695mmですから、アルファードのほうが120~230mmも背が高く、この見下ろすような見晴らしによって優越感が得られるのもアルファードの重要な魅力といえます。ここもしっかりと確保したいところ。
いっぽうで、背が高くなることで重心が上がり、走行性能が落ちるのも事実です。そこで現行型のエルグランドやオデッセイでは、「低重心」かつ「操縦性」の高さを大きなウリにしていました。
しかしラージミニバンにとっては、高速走行時の直進性とフワフワしない乗り心地(酔わない乗り心地)、そして静かな車内こそが重要だと筆者(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)は考えます。
操縦性を重視するあまり、ロールやピッチングを抑えようとして足を固めにするのはナンセンスということです。
3社連合の新型ミニバンには、段差を乗り越えても「ガツン」とした突き上げがない、しなやかで快適なサスペンションが欲しいところ。
ドライバーのみが享受できるシャープなコーナリング特性による爽快感よりも、同乗者が酔わずに安心して長距離移動できるリビングのようなクルマであることのほうが、よほどユーザーから支持を集めることでしょう。
■日産・ホンダ・三菱の電動パワートレイン搭載が望ましい
さらに重要なのがパワートレインです。アルファードが用意する低価格なガソリン車と静粛性の高いハイブリッド車の組み合わせは必須でしょう。
さらに3社独自の技術を持ち寄れば、さらに強力な対抗策になり得ます。
ホンダからは「CR-V e:FCEV」に搭載している燃料電池システムを、日産からはエクストレイルなどに積んでいるVCターボ+e-POWERのハイブリッドシステムを、三菱からは「アウトランダー」に搭載しているPHEV(プラグインハイブリッド)システムを、それぞれラインアップするのはどうでしょうか。
ミドルクラスに比べ車重があるため、発進時に大トルクが欲しいラージミニバンにこそ「クリーンディーゼルターボ」エンジンを使いたいところですが、もはや世間が内燃機関を許してはくれません。
トルクの欲しい発進時に電気の力を使える、これらの新ハイブリッドユニットを使うのが良いでしょう。
こうしたパワートレインや基本骨格は極力3社で共有するとしても、高級車クラスに該当するラージミニバンだけに、内外装のデザインは3社それぞれの個性を活かし明確に差別化しなければ、ユーザーの選択肢には入らないはずです。
ホンダは次世代EV「ゼロシリーズ」で発表した「スペースハブ」、日産は「ハイパーツアラー」、三菱は「D:Xコンセプト」、といった優秀なデザインサンプルがあります。
いずれも背が高く、対アルファードとしては十分通用しそうなスタイリングです。
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様々なパワートレインに対応できるラージミニバン向けプラットフォームを、3社合同でつくることができれば、アルファードに対抗できるラージミニバンは可能だと考えられます。
やっかいなのが、アルファードの異次元の下取り価格からくる高い残価率ですが、3社が協力すればそれを上回る魅力を備えることも可能かもしれません。
ホンダと日産、三菱による協業がどこまでかみ合うのか、そして、王者アルファードの牙城にどこまで食らいつけるのか、新世代のラージミニバンが登場する日が、非常に楽しみです。