スズキが長年パキスタンで販売している「ボラン」について、SNSなどではさまざまなコメントが投稿されています。
■「贅沢は敵だ」と言わんばかりのシンプルさ
近年では原材料費の高騰に加えて、クルマ自体の高機能・多機能化などによって、新車販売価格は大幅に上昇しています。
日本では軽自動車であっても多くが200万円近い価格となっていますが、途上国では機能向上が一切図られないものの、昔ながらのシンプルな構造で安価なモデルが親しまれています。
そのひとつであるスズキ「ボラン」について、SNSではさまざまなコメントが投稿されています。
ボランは5人乗りのコンパクトバンで、スズキのパキスタン法人であるパック・スズキが2024年の現在でもラインナップしています。
1982年に発売されてから現在に至るまで、フルモデルチェンジは一切行われておらず、同年登場の軽商用バン「エブリイ」(初代)をベースに、40年間も当時の面影を残す味わい深いデザインです。
ボディサイズは全長3255mm×全幅1395mm×全高1845mm、ホイールベースは1840mmと軽ワゴンよりも小さく、途上国の狭くて険しい道路であっても取り回しのしやすいサイズです。
エクステリアは初代エブリイの特徴ともいえる、一切の飾りを廃したシンプルでスクエアなスタイリングに、フロントは角目2灯の大きなヘッドライト。
現行モデルはこの2灯ライトを黒いグリル風ガーニッシュが結び、やや現代的な装いとなっています。
ボディサイドも同様にシンプルで、手動調整のミラーやBピラーのマーカーランプなどは、懐かしさも感じさせるもの。
両側スライドドアは装備されていますが、スライドドアのウインドウは横開きの手動で、フロントにもパワーウインドウはありません。
インテリアにも豪華さや上質さはなく、加飾パネルやステッチはもちろん、エアコンも非装着で、ドアやフロア、ピラーにはトリム類も省略されています。
一方で、シートやドアにはブルーのアクセントカラーが配されるなど、実用性を最重視しながらもオシャレさが垣間見えます。
インパネには助手席のグローブボックスをはじめ、いくつかの収納はありますが、質素な4本スポークのステアリングと、最低限の情報を表示する120km/hメーターが装備されるのみで、当然エアコンは非装備です。
安全装備はフロントにシートベルトが装備されている程度で、リアシートにはオプション設定も存在しません。
パワートレインは最大出力37馬力・最大トルク62Nmを発揮する796ccの直列3気筒エンジンに4速MTを組み合わせ、後輪駆動です。
現在新車で販売されているモデルは、5人乗り乗用モデルに加え、最大積載量550kgを確保した2人乗り商用モデル「カーゴ」の2タイプをラインナップ。
機能装備にはBluetoothやUSB接続、MP3にも対応するラジオデッキが装備されており、この点はかなり現代っぽい仕上がりとなっています。
パキスタンでの価格は194万ルピー(約102.8万円)から194万4000ルピー(約103万円)で販売されています。
なお、ボランの派生モデルとして「ラヴィ」というピックアップモデルも販売中で、こちらは「キャリイ」のパキスタン現地仕様となります。
SNSなどでは「これが2024年のクルマってすごい」「国内でも買えたらいいなぁ」「こういうのが欲しい!」「こういう割り切りも必要だね」と、性能のシンプルさを評価する人が多いようです。
また、「規格が違うから日本での販売は難しいのかな?」「パキスタンだとエアコンなしモデルも売れるのか」「パキスタンでは修理を繰り返して大事に乗っている印象」など、日本とパキスタンでのクルマの違いに触れたコメントも見られました。
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途上国ではボランをはじめとした旧モデルが現在でも愛されていますが、これは途上国に未舗装で狭隘な道が多いことや、整備・保守が容易である点が理由として挙げられます。
長年設計が変わらないことで、シンプルな工具で整備ができ、保守部品や修理ノウハウが蓄積されていることも利点です。
登場から40年を経てなお新車ラインナップに並ぶボランと同様に、三菱「L300」(初代「デリカ」)、スズキ「イーコ」(4代目「エブリイ」)なども途上国で活躍しています。