もはや当たり前の存在となった「ハイブリッドカー」ですが、なかには「マイルドハイブリッド」と呼ばれるものがあります。通常のハイブリッドとはどう違うのでしょうか。
■「マイルド」だけど「スゴイ」理由とは
ハイブリッド(HEV)やプラグインハイブリッド(PHEV)にくわえて、マイルドハイブリッド(MHEV)という言葉をよく聞くようになりました。
軽自動車での採用も増えていますが、一体どんなシステムなのでしょうか。
ハイブリッドというと、トヨタ「プリウス」などに搭載される「THS(トヨタハイブリッドシステム) II」に代表されるエコカーの代名詞として、今や当たり前の存在となりつつあります。
ハイブリッド(異なる要素が組み合わされたもの)の名の通り、エンジンとモーターを効率よく使い分けて走行し、走りと燃費を両立するシステムを連想されるのではないでしょうか。
このタイプのハイブリッドシステムは、「フルハイブリッド」や「ストロングハイブリッド」といわれ、一般にマイルドハイブリッドとは明確に異なるものを指しています。
マイルドハイブリッドは、フルハイブリッドに対してモーター出力やバッテリー容量が小さいこと、そして多くのマイルドハイブリッド車が、モーターのみで走行しないことが大きな違いです。
「モーターのみで走行しない」とは言っても、モーター(モータージェネレーターという)の駆動力を発進や加速時に利用します。
マイルドハイブリッドのポイントをあげると次のとおり。
・回生ブレーキで減速エネルギーを電力としてバッテリーに蓄える
・蓄えた電力でモータージェネレーターを駆動して、発進や加速をアシストする
・アイドリングストップ中もエアコンなどの電装品に電力を供給できる
・モータージェネレーターによりスムーズなエンジン再始動時を実現
フルハイブリッドのようにモーターだけで走行することはないため、運転していて電気の力を意識することはあまりありませんが、よく観察しながら乗っていると、発進加速時に「なんとなく力があるな」と感じられるでしょう。
マイルドハイブリッドを搭載する目的は、主に燃費です。
一般に、マイルドハイブリッドの採用によって10~20%の燃費向上が見込まれるといわれています。
「フルハイブリッドはもっと低燃費でしょ」と思うかもしれません。それはたしかに間違いではありませんが、マイルドハイブリッドには低コストというメリットもあるのです。
フルハイブリッドは、高出力モーターや大容量バッテリーに複雑な制御システムなど、開発にも製造にも多大なコストがかかります。
一方マイルドハイブリッドは、物凄く簡単に表現すると、既存車両に容量の小さなバッテリー(主にリチウムイオンバッテリー)とモータージェネレーターを追加するだけでOK。
低コストで済むところが大きなメリットで、そのため軽自動車などの低価格車にも採用しやすいというわけです。
なお、日本でメーカー自ら「マイルドハイブリッド」と明記しているのは、スズキ(「スペーシア」「ハスラー」「スイフト」「ソリオ」などに採用)と、マツダ(「マツダ3」「CX-30」「CX-60」などに採用)。
日産「ルークス」などが採用する「スマートシンプルハイブリッド」、スバルの「e-BOXER」も同様のマイルドハイブリッドで、三菱も「デリカミニ」などに「ハイブリッドシステム」を採用しますが、これもマイルドハイブリッドに分類されます。
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エンジン車らしい走りを損なわず、燃費よくパワフルになり、さらに大幅なコストアップもない。
クルマの電動化が進む中で、マイルドハイブリッドの採用車種が増えていくことは間違いないでしょう。
特に排気量の小さな軽自動車の購入を検討している人は、試乗時にマイルドハイブリッドの効果をよく感じてみてください。