2003年秋に開催された「第37回東京モーターショー」で、スバルは「B9(ビーナイン)スクランブラー」を公開しました。どのようなモデルなのでしょうか。
■スバルのオープンカー!? 「B9(ビーナイン)スクランブラー」とは
2003年秋に開催された「第37回東京モーターショー」で、スバルは2人乗りオープンカーのコンセプトモデル「B9(ビーナイン)スクランブラー」を公開しました。
水平対向エンジン・AWD(4WD)などの技術を特徴とするスバルは、1970年代より悪路走破性に優れた4輪駆動の乗用車を発売し、雪国などで定評を受けていることはよく知られています。現在に至るまでAWDの車種を数多く擁し、雪道や悪路に強いメーカーのイメージを掴んでいます。
そんなスバルですので、B9スクランブラーは一般的なオープンカーとは一味違う「ラフロードでも走れるオープンカー」というコンセプトを持っていました。当時のプレスリリースでは、「オンロード・ラフロードを問わず、オープンエアモータリングを楽しみたいという想いを表現」と発表されていました。
そのため2人乗りオープンカーながらも、径の大きなランフラットタイヤを装着。サスペンションにはオートレベライズ機能のほか、最低地上高を150mmから200mmの間で選択可能なエアサスペンションを採用することで、悪路を走る際のロードクリアランスを確保する、と説明されていました。
最低地上高200mmとすると、スズキ「ジムニー」(最低地上高205mm)とほぼ同等です。
「将来のスバルデザインを示唆する」とされたB9スクランブラーをデザインしたのは、アルファロメオからスバルに移籍したカーデザイナーのアンドレアス・ザパティナス氏でした。
全長4200mm×全幅1880mmという短くて幅広いボディの上半分は上方に絞り込まれ、大径タイヤを収める大きなホイールアーチをさらに強調していました。下半分にはつや消し風の処理が施されており、悪路を走るイメージを投影していました。
フロントには、航空機メーカーの中島飛行機を出自とするスバルらしく、航空機を正面から見た姿をモチーフにした「スプレットウィングスグリル」を採用。このグリルは、同年春にジュネーブショーで発表されたコンセプトカー「B11S」で初めてお目見えした意匠でした。
その一方、ボートテール風の処理を施されたリアビューは、とてもシンプルに処理されていました。
インテリアは外観以上に未来的で、下側の円を有しないステアリングホイール、翼をモチーフにしたというダッシュボード、基部を浮かせたシフトノブなど、先進的なデザインでまとめられていました。
内部のメカニズムには、SSHEV(Sequential Series Hybrid Electric Vehicle)と呼ぶハイブリッドシステムを採用。時速80km前後までの実用領域の大部分を高性能モーターで駆動することが可能で、スムーズな加速・優れた燃費性能、環境性能を実現するとうたっていました。
モーターだけではパワーが足りない際はエンジンがモーターをアシストするほか、80km/h以上では効率の良いエンジンの駆動のみで走行を行うようになっていました。
搭載される「EJ20」型SOHCエンジンは、もちろんスバル伝統の水平対向式。エンジン後方に発電機、モーター、トランスミッション、後輪駆動用プロペラシャフトを並べ、こちらもスバルお得意のシンメトリカルAWDを構成していました。
システムの総出力は、エンジンが最高出力101kW(137PS)、モーター出力が100kW(135ps)の、合計201kW(273ps)とアナウンスされていました。
B9スクランブラーは市販されませんでしたが、「B9」という車名は、その後2005年に北米市場で発売された大型SUV「B9トライベッカ」が受け継ぎました。新しいスバルのアイデンティティとして注目されたスプレットウィングスグリルも、B9トライベッカのほか「R1」「R2」「インプレッサ」など、2000年代前半のスバル車の多くが取り入れています。
しかしB9トライベッカは、のちにB9が取れて「トライベッカ」に改名。スプレットウィングスグリルも「R1」以外はマイナーチェンジでおとなしいマスクに変更されて消滅してしまいました。
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B9スクランブラーは、2人乗りオープンカーで高い悪路走破性を持つクロスオーバーモデル、という斬新なコンセプトを残しました。
現在スバルにはスポーツカーの「BRZ」がラインナップされていますが、スバルらしいオープンカーとして、B9スクランブラーのようなオープンカーが用意されると面白いかもしれません。