マツダの大きな資産のひとつに“ロータリーエンジン”があります。なぜマツダは他社にはないこのエンジンを守り続けるのでしょうか。ロータリーエンジンの歴史から振り返ります。
■マツダの「ロータリーエンジン」何がスゴイ?
マツダの大きな資産のひとつに“ロータリーエンジン”があります。なぜマツダは他社にはないこのエンジンを守り続け、現在でも「MX-30」に発電用エンジンとして搭載するまでのこだわりを持っているのでしょうか。
そもそもロータリーエンジンの仕組みから話を始めましょう。実はロータリーエンジンにはいくつもの種類があるのですが、ここではマツダが採用しているヴァンケル式ロータリーエンジンに特化して説明します。
三角形のおむすび型をした回転子(ローター)が回転することにより発生するエネルギーを利用したエンジンのことをロータリーエンジンと呼びます。
そのエンジンの構成は大きく2つ。まゆの形をしたハウジングとその内側にあるおむすび型のローターです。
ハウジングとローターとの間にできた空間に、燃料と空気を混ぜた混合気を吸入、ローターが回転するとその隙間が圧縮されて、そこで爆発、そして隙間ができたところで排気という仕組みです。
そこで力を発生させ、それによりローターが回転します。ですからローターが1回転する間に3回爆発を起こすことができる、つまり通常のエンジンがピストン2往復する工程を、ローターが1回転でできてしまうのです。
当然効率的であり、部品もそれだけ少なくて済みますからサイズも小さく、軽量化にもつながりますので様々なメーカーが注目していました。
その歴史は1960年前後、ドイツ(当時は西ドイツ)のフェリクス・ヴァンケル博士がNSU(のちにアウディ等と合併)開発し、多くの特許を取得していました。
構造がシンプルで小型・軽量・高い静粛性かつ高出力を特長とするロータリーエンジンは、夢のエンジンといわれ、多くの自動車メーカーが注目しており、マツダも“会社が生き残るためには独自の技術が必要だ”と考え、他社に先駆けて、そのロータリーエンジンの実用化を目指し、NSUらと技術提携を結び開発に着手します。
しかし、ローター内の気密性を確保するために三角形の頂点に取り付けられた「アペックスシール」が、まゆ型のローターハウジングの内面を擦りながら高速で回転するため、内面が傷だらけになってしまうのです。
それが「悪魔の爪痕」と呼ばれる「チャターマーク」でした。それをマツダは克服し、1967年に「コスモスポーツ」が誕生したのです。その後、国内外の排出ガス規制もクリアし生き続けることになるのです。
小見出し:実用化に至らなかった他メーカー
ではなぜマツダ以外の自動車メーカーは、ロータリーエンジンを実用化しなかったのでしょうか。
実は日本では日産が、海外でもメルセデスベンツなどが実用化に向けて開発に取り組んでました。最初に市販化されたのは、NSUの「ヴァンケルスパイダー」で、その後「RO80」というサルーンも生産しました。
しかし、耐久性、例えばオーバーヒートなどに大きな問題を抱えていたこともあり、失敗作といわれてしまいました。
日産やメルセデスも、熱問題や耐久性、その後の排ガス規制やオイルショックなどのため、燃費の良くないロータリーの開発を中止してしまったのです。
その中でもマツダは2012年に「RX-8」の生産が終了するまで続けられました。その後も、細々とではありますが開発を続け、その結果としてMX-30の発電用としてロータリーエンジンが復活するに至るのです。
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なぜそこまでマツダはロータリーにこだわるのでしょう。大きな要因のひとつは、未だに新入社員の中でもロータリーエンジンをやりたいからという志望理由で入社する人たちがいることです。
その背景には様々な苦難を乗り越えまさにマツダスピリットがそこに感じられるからでしょう。
マツダは第二次世界大戦時、原爆投下された広島が発祥の地であり今も本社があります。その原爆で大きな被害にあったにもかかわらず、広島の街とともにマツダ(当時は東洋工業)は復活していきました。
マツダはその後も何度も倒産の危機にあいながらも復活します。きっとその復活にロータリーエンジンを重ね合わせているのではないでしょうか。