ここ数年、中古車市場の価格相場が高くなっています。実際に日本で最大規模の中古車オークションを展開するユー・エス・エス(USS)の「2024年7月 成約車両単価(平均落札額)」は過去最高の125万6000円。こうした「相場高」が続く要因には何が考えられるのでしょうか。
■オークション会場によっては前年同月比10%以上の出品台数減少
近年、中古車市場の相場価格が上昇傾向にあります。では、その要因にはどのようなものがあるのでしょうか。
日本で最大規模の中古車オークションを展開するユー・エス・エス(USS)が毎月発表している自社でのオークションの月次データで、2024年7月の成約車両単価(平均落札額)は125万6000円でした。
前6月の同単価は123万9000円で史上最高値でしたが、これを更新した形です。
なお、出品台数は6月が前年同月比93.1%と供給不足感がありましたが、7月は同99.2%とほぼ前年並みでした。
今、中古車市場で何が起きていて、相場が高騰につながっているのでしょうか。
経済の基本的な話になりますが、供給が滞れば価格は上がります。
中古車の場合、大きな供給源となるのが中古車オークション会場などでのクルマの出品です。
前出のUSSが発表している、2024年1〜7月の出品台数とその前年同月比を見てみましょう。
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2024年 出品台数(台) 前年同月比(%)
1月 212,848 94.5
2月 266,985 94.4
3月 306,173 87.5
4月 259,384 88.5
5月 238,380 105.0
6月 255,968 93.1
7月 248,875 99.2
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これによれば、5月や7月は前年並みを保っているものの、その他の月は軒並み5%以上の減少となっています。さらに、3月から4月にかけては1割以上の減少でした。
これは、USSだけで起きている状況ではありません。
日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)は「各オークション会場を調査している業界紙のデータによると、ここ数カ月で出品台数が前年同月比で10%以上、落ち込んでいる月がある。特にメーカー系が運営しているオークション会場では落ち込みが大きい」とコメントがありました。
つまり、どのオークション会場も同様の状況ということです。
では、なぜ出品台数の減少が起きているのでしょうか。
1つは、国内メーカーの認証不正問題により一部車種の生産が停止。
そのため新車の供給がされない、中古車の需要が高まったなどを原因として、出回る台数が減っていると考えられます。
しかし、認証不正があったと多くのメーカーが発表したのは6月初頭のことでした。それ以前もダイハツの認証不正が発覚していましたが、2024年4月以前の出品台数が減っていたことの根拠としては乏しいと感じられます。
そこで新車供給の減少とともに大きな原因となっているのが、中古車の輸出が拡大です。
日本中古車輸出業協同組合の統計によると、2023年の中古車輸出台数は1,536,472台でした。前年比で実に24%超の増加です。
そして2024年も、上半期の1〜6月時点で775,274台と、昨年の728,240台より50,000台ほど上回っています。
■いまでもロシアに中古車が流れてる? 今後の見通しは?
従来、日本の中古車は距離の近い極東ロシアに多く輸出されていましたが、ウクライナでの戦争による経済制裁の影響もあり、2023年で最も多い輸出先はアラブ首長国連邦(UAE)でした。
ロシアはUAEに次ぐ輸出台数です。しかし、第三国を経由してロシアにも日本の中古車が多数、輸出されていると見られ、それに加え新興国をはじめとした旺盛な日本車・中古車需要があるため、大きく輸出が伸びていると見られます。
前出のJU中販連も、「輸出が増えれば国内の流通量が減るので、価格が上がっているのでは」と見ています。
また同じくJU中販連は、データではなく会員である中古車販売店の肌感覚での話と断った上で、「新車価格が高騰しているため、中古車に流れてくるユーザーが増えていると聞く。そうしたユーザーはこれまでの新車で買っていた値段と同等の中古車を購入する事例もあるようだ」と説明します。
この点からは、国内的な要因として認証不正問題と物価高による自動車の原料高が起因していると読み取れます。
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ウクライナでの戦争や中国経済の動向などが不確定要素として挙げられ、今後の見通しを立てるのは難しいかもしれません。
JU中販連も、見通しについては「回答いたしかねる」とのコメントでした。
しかし、世界通貨基金は2024年4月に発表した成長率予測で「鈍化はあるものの2025年までプラス成長が続く」としており、国内を見ても日本銀行が政策金利の引き上げを進めています。
よって、世界経済の好循環や物価高の要素は引き続き存在するため、中古車価格相場はまだ上がっていくことは十分に考えられます。