トヨタには、かつて「メガクルーザー」という特殊なクルマが存在しました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■「ランクル」より強い!? 「メガクル」とは
トヨタには、かつて「メガクルーザー」という特殊なクルマが存在しました。
同車は一体どのようなクルマなのでしょうか。
メガクルーザーは、日本で1996年から2001年まで販売されていた、SUVやクロカンと呼ぶには本格的すぎる四輪駆動車です。
もともとは陸上自衛隊の人員輸送用車両としてトヨタが開発した「高機動車」を、民生仕様にして「第30回 東京モーターショー」(1993年開催)で公開したのが始まり。
国防の現場で酷使される強靭なボディが注目を集め、市販化を求める声が多く寄せられたことから、1996年1月に市販車として登場しました。
市販モデルのボディサイズは、全長5090mm×全幅2170mm×全高2075mm、ホイールベースは3395mmと、巨大そのものです。
これは、現在販売されているトヨタ「ランドクルーザー300(ZXグレード)」のサイズ(全長4985mm×全幅1980mm×全高1925mm)すら全ての値で上回るもので、当時としては圧倒的な大きさだったことがうかがえます。
ここまで巨大でありながら、最大12度の逆位相4WS(4輪ステアリング)を装備することにより、最小回転半径は5.6mと、小回り性能のよさも実現。
また、最低地上高が420mmと飛び抜けて高いのも、現在売られているSUV(ランドクルーザー300でも225mm)とは大きく違う特徴です。
そんなメガクルーザーのパワートレインは、4.1リッター直列4気筒インタークーラー付直噴ディーゼルターボエンジンを搭載。
最大出力170馬力/3000rpm・最大トルク421.7Nm/1600rpmを発揮します。
エクステリアは、ひと目見ただけでメガクルーザーと分かる角張ったボディが特徴で、現在主流の丸みがかったクルマとは全く違う、特殊な役割を持つモデルならではのデザインとなっています。
当時はその外観や雰囲気が、米国の軍用車両「ハンヴィー」および民生モデルのハマー「H1」に似ていたことから、メガクルーザーは「和製ハマー」と呼ばれて親しまれました。
一方、インテリアに関してはハマーとは異なっており、ハマーH1が4人乗りであるのに対し、メガクルーザーは6人乗りという点で実用性が高められているのも特徴。
フロントは2人乗り・リアシートが4人乗りという変わったレイアウトで、リアは2人乗りのベンチシートが中央にあり、その両端をセパレートタイプのシートが挟み込む形となっていました。
この中央のベンチシートは、使わないときは前に倒しておくことができ、その場合はフロントシートからラゲッジスペースへ移動できる構造です。
運転席まわりのスペースにも比較的余裕があり、フロントウィンドウが広くて視界良好。運転する際にストレスを感じにくく作られていました。
また、600kgの積載性を誇るラゲッジスペースには、跳ね上げ式のバックドアがついており、荷物の搬入時の出入りがしやすいように、格納式のリアステップがついています。
このように工夫の凝らされたレイアウトを採用し、エアコンやオーディオといった快適装備も搭載されてはいるものの、あくまでも元の構造は人命救助などを迅速に行うことをメインに考えられているクルマです。
よって、「乗降時はグリップに捕まらないと乗ることもできない」、「後部ヒーターのスイッチが助手席にあって運転席からは操作できない」、「運転席と助手席のあいだに巨大なクーラーユニットが鎮座していて車内の移動ができない」など、一般ユーザー向けの使い勝手はあまり考慮されていない面もありました。
そんなことから、最終的にはJAFや消防、地方公共団体がメインユーザーとなり、発売からわずか5年の2001年に販売終了。
存在感の大きさに反して累計販売台数はわずか132台と、短命で姿を消すこととなります。
そんなメガクルーザーの当時の車両価格(消費税抜)は962万円。
ボディカラーはホワイトとダークブルーの2色が選択可能でした。
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メガクルーザーは、登場から約20年が経過した今なお巨大さが際立っており、とくに「約2.2m」となる全幅は、過去から現在までのあらゆる国産車の中で最大という称号を維持し続けています。
そのほか、肝心な注意点としては、メガクルーザーは「準中型自動車(5t未満)」に該当するため、運転するためには「準中型免許」が必要。
2017年3月12日以降に運転免許を取得している場合、通常の免許では免許外運転になってしまいますので、もし運転する際には注意が必要です。
そんなメガクルーザーですが、現在その稀少価値から中古車市場では高値で取り引きされており、当時の新車価格の2倍以上で売られている例も見受けられます。
乗用車としての利便性は悪くても、コアなファンに愛され続ける。
それもまたクルマのひとつの在り方なのだと感じさせてくれるクルマです。