日本最大級の自動車博物館である「日本自動車博物館」(石川県小松市)に展示される車両のなかでも、非常に希少な国産モデルといえるのがオーテックザガート「ステルビオ」です。どのようなクルマなのでしょうか。
■新車価格1870万円! 華やかさ極まる「ステルビオ」とは
自然あふれる穏やかな雰囲気が素晴らしい石川県小松市には、日本最大級の自動車博物館「日本自動車博物館」があります。
トヨタやホンダなどの国産車をはじめ、戦前の独立メーカーが生産した数少ない車両といった、さまざまなクルマを保有している本館。その中でも貴重なオーテックザガート「ステルビオ」について見てみましょう。
ステルビオは、日産自動車の子会社であるオーテックジャパン(現:日産モータースポーツ&カスタマイズ)と、イタリアの名門カロッツェリアのザガート社が1989年に共同開発した2ドアクーペ。
プロトタイプモデルは、1989年3月に開催されたスイス・ジュネーブモーターショーで世界初公開されました。
ベースになっているのは、かつて日産が生産していた高級クーペ「レパード」です。
オーテックジャパンが車体のレイアウトとエンジンやユニットの生産を担当し、ザガートがエクステリアやインテリアデザイン、それにアルミとカーボンコンポジットを用いた車体の架装を行う方式で、生産は進められました。
ボディサイズは全長4370mm×全幅1800mm×全高1345mm、ホイールベース2615mmです。
参考までに、日産が生産している現行の「フェアレディZ」は、全長4380mm×全幅1845mm×全高1315mmで、大体同じくらいのサイズだとわかります
外装で一番目立つのは、フロントにあるボンネットフードでしょう。
左右ヘッドライトの後方がまるで肩のようにグッと盛り上がっており、見る人に絶大なインパクトを与えてきます。
この存在感のあるボンネットフードは、フェンダーミラーをボディに内蔵するためのものでした。
フェンダーミラーのユニークな配置には、バブルの車両らしいユニークさを感じます。
インテリアは非常に豪華。ダッシュボードまで本革で仕立てられたラグジュアリーな仕上がりで、イタリアらしい優雅さを感じるものでした。
パワートレインは、3リッターV型6気筒DOHCターボ「VG30DET」エンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFRとなっています。
足回りも含め、オーテックジャパンの手によりチューニングが施され、最高出力280馬力、最大トルク41.0kgmを発揮します。
1989年3月の発表時、生産台数は全世界限定で203台とされていました。
驚きなのはその値段で、新車価格で1870万円となっています。
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ステルビオについて、オーテックジャパンは1987年に発表したプレスリリースで「この協力事業を通じて、今までの車づくりの常識にとらわれない走りと機能と美しいカタチを実現した車づくりを行ない、これからの車はこうなるという、ひとつの提案をしていきたい」と述べています。
バブルが崩壊したこともあってか、再度の共同開発は行われませんでしたが、その特徴的なデザインやスタイルは今でも唯一のもの。ぜひこの貴重な車両を日本自動車博物館へ見に行ってみてください。