トヨタ最小のコンパクトSUV「ライズ」がいま、にわかに注目を集めています。中古車相場が高騰しているというのです。どのような理由からこうした状況が生じているのでしょうか。
■新車価格を超える中古車の流通相場に驚く!
トヨタのコンパクトSUVが、中古車市場でにわかに注目を集めています。その車名は「ライズ」。同社最小のコンパクトSUVです。
新車価格を超える相場で取引される例も少なくないといいます。いったい何が起きているのでしょうか。
ライズは、ダイハツ「ロッキー」のOEMとして2019年11月に誕生。廉価な設定や扱いやすいサイズ感などから、デビューするやいなや大ヒット作となっています。
翌2020年の年間登録台数ランキングでは、第1位のトヨタ「ヤリス」(15万台)に続いて第2位(12万台)を獲得しました。
その後もランキングでトップ10に入り続けている人気モデルとして君臨しています。
中古車の流通事情に詳しい自動車買い取り専門店の担当者によると、そんなライズのガソリンモデルに注目しているといいます。
「ライズの中古車相場が急上昇しています。
当初は(半導体不足などによる)新車の生産・出荷停止の影響かと思われましたが、原因は全く別のところにあるようです」
実際に大手中古車検索サイトで、2020年式ライズ「Z」ガソリン車/2WD(走行距離3万km以下)という条件で検索してみたところ、180万円~250万円の個体が多く、最高額はなんと290万円でした。
290万円の個体は、メーカー純正ナビやエアロパーツといったオプションパーツが装着されていましたが、走行距離は2万kmといたって普通です。
販売当時のライズZ・2WDの車両価格(消費税込み)が205万円であることを考えると、4年落ちとなる中古車がほとんど価格下落を起こさずに、それどころか個体によっては新車時価格を大きく超え、高い相場の中古車が流通しているのですから驚きます。
前述の担当者は次のように話します。
「ライズの中古車相場が高騰している背景には、ロシア情勢が関係しています」
日本で下取りに出された中古車の多くは、国内市場で中古車として販売されることが多いですが、一部の車種は海外へと輸出されていきます。
海外向けと聞くと、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」、「ランドクルーザー」といった高級モデルの中古車が、海外へと多く輸出されていることは知られています。
しかし実際にはミドルクラス以下のミニバンやSUV、コンパクトカーなど、ジャンルを問わずさまざまなクルマが輸出されていきます。
「ここ数年は、中古車輸出台数が増加していて、2023年の中古車輸出台数は約154万台です。
これは前年を20%以上も上回り、過去最高を更新しているのです」(担当者)
そして数ある輸出仕向け国の中で、もっとも多くの中古車が輸出されていくのがロシアでした。
しかしそんな状況に変化が起きています。
■ロシアの輸出規制をクリアする「ライズ」が注目のモデルに
ロシアのウクライナ侵攻への制裁処置として、2023年8月から日本政府によって中古車輸出に規制がかけられています。
これにより、排気量が1900cc超の自動車(ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車)と、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車(EV)の中古車は、ロシアへ輸出することはできなくなりました。
ただ逆にいえば、いまも「排気量1900cc以下のガソリン車」の中古車は、ロシアへ輸出できることになります。
このため規制にかからない排気量1900cc以下のガソリン車の中古車が、大量にロシアへと輸出されるようになったのです。
トヨタ「ヴィッツ」「ヤリス」、日産「ノート」(先代)、ホンダ「フリード」「ヴェゼル」、スバル「レヴォーグ」などが多いようですが、なかでもいまもっとも多いのがライズだといいます。
ロシアは以前から、RAV4やCH-R、ハリアー、フォレスター、ランクルプラドなど、SUVタイプのクルマの人気が高い国でした。
規制をすり抜けることができるSUVが限られるなか、コンパクトながらもエクステリアデザインに力強さのあるライズは、SUV好きのロシアの人に刺さったのでしょう。
高い需要があることから、ロシアのバイヤーがライズを中古車オークション等で買い漁っていくため、中古車相場が高騰したようです。
「パールホワイトや白黒ツートン、ベージュなどのボディーカラーはロシアで人気だといい、さらに10~20万円ほど相場が高くなる傾向があります」(前述の担当者)
※ ※ ※
1900cc以下の国産ガソリン車はいま、ライズに限らず高い下取り価格が付く可能性があります。
乗り換えを検討している人は中古車買い取りの査定を試してみると、思わぬ高値査定が出るかもしれません。