高速道路を利用する9割以上の人が使っている「ETC」。そんなETCに関して、家族名義のETCカードを使って高速道路料金の割引を受けた男性に実刑判決が言い渡されたことが話題となりました。何が問題なのでしょうか。
■SNSでは「知らなかった」「貸し借りできないのは当然では」などさまざまな反響も
家族名義のETCカードを使って高速道路料金の割引を受けた男性に実刑判決が言い渡され、話題を集めました。
実際のところ「家族のETCカードを使っている」という人は少なくありませんが、ETCカードの貸し借りにはどのような問題があるのでしょうか。
2024年の9月は2週にわたって3連休が続くため、旅行を計画している人もいるでしょう。
特にクルマで遠方に行く際は高速道路のETCレーンの通行が便利ですが、先日ETCカードの利用をめぐり、ネットニュースが話題を集めました。
その内容は2024年5月8日に大阪地方裁判所が、弟名義のETCカードを使って不正に高速道路料金の割引を受けた暴力団組長の男性に対し、「電子計算機使用詐欺罪」で懲役10か月の実刑判決を言い渡したニュースに関するものです。
この暴力団組長の男性は次の2件について起訴されていました。
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●2022年11月、男性は知人の運転するクルマで弟名義のETCカードを使って高速道路を通行し、ETC割引によって正規の通行料金との差額770円相当の財産上不法の利益を得た。このとき、カードの名義人である弟は同乗していなかった。
●2022年12月、同じく弟が同乗していないクルマで弟名義のETCカードを使って高速道路を通行し、ETC割引によって正規の通行料金との差額630円相当の財産上不法の利益を得た。
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一般的にETCカードはクレジットカード(親カード)に付帯して発行されるものです。
通行料金の支払いは「クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限りおこなう」ことが高速道路会社の営業規則で決められています。
つまり今回の事例は、名義人である弟が同乗していないのに弟のカードを使って通行し、本来は受けられないはずの割引を受けたことが罪に問われたものです。
裁判では暴力団組長の男性だけでなく、カードを貸した弟とクルマを運転していた知人に対しても懲役10か月(執行猶予3年)の判決を言い渡しています。
なお前述のニュースでは「カード保有者の多くが詐欺の犯罪者にされてしまう可能性がある」としており、これを「一億総前科者になる」と表現。
それを受けて、X(旧Twitter)上においても一時、「一億総前科者」がトレンド入りし、注目度の高さがうかがえました。
■家族のETCカード貸し借りで違反…「知らなかった」
この件に関してSNS上では「ETCカードって本人が乗ってない状態で家族が使ったら詐欺行為になるって知らなかった」「知り合いに自己破産して兄弟のカードを使っている人いたけど、それも本来は違法なのね」など驚きの声が寄せられています。
その一方で、「ETCカード自体がクレジットカードという認識があれば、たとえ家族間であっても貸与不可なのは分かるだろ」といった声や「ちゃんと家族カード作って、家族名義のETCカード作ればいいだけの話」など、安易な貸し借りを問題とする声も多く聞かれました。
さらに、「これはETCカードを作れない暴力団関係者が貸し借りしたから問題になっただけ。一般人だったらそこまで重い罪にはならない」との主張もありました。
実はクレジットカード会社は反社会勢力の排除として、暴力団関係者へのカード発行をおこなっていません。
またクレジットカードを持っていない人があらかじめ保証金を預託することで利用できる「ETCパーソナルカード」についても、暴力団関係者の申込みは断られます。
今回の事例は、暴力団組長の男性が自己名義のETCカードを持てないと認識していたことや、弟が同乗しない状態で常習的に利用していたことを踏まえた上で、「カード会社の暴力団排除条項をかいくぐる手段で悪質」と判断されたものです。
加えて暴力団組長の男性に累犯前科があったことも考慮され、実刑判決に至ったものとみられます。
警察や高速道路各社は、障がい者割引制度を悪用して通行料金の割引を受けたり、通行料金を支払わずにETCレーンの強行突破を繰り返したりする悪質性の高い事案に対して逮捕や、割増金の請求などの対応をとっています。
現状、家族間でのETCカードの貸し借りに関しては厳しい取り締まりがおこなわれていないものの、カードの名義人が乗車していない状態でETCカードを利用すると利用規約違反となるほか、電子計算機使用詐欺罪に当たる可能性があるため注意しましょう。
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ドライバーの中には家族間でETCカードを貸し借りしている人が少なくありません。
そのような場合にはカードの名義人が必ず同乗するか、家族カードを作り家族名義のETCカードを発行するようにしましょう。