暑い時期にフロントガラスを「サンシェード」で覆っているクルマを見かけますが、サンシェードには車内温度の上昇を防ぐ効果はないようです。一体どういうことなのでしょうか。
■フロントガラスを「サンシェード」で覆う“本当の意味”とは?
真夏や残暑のなかでは、直射日光にさらされたクルマの車内は高温になりやすく、エアコンなしで長時間滞在するのは非常に危険です。
また、高温となった車内では、シートベルトやボタンなどに付いている金属パーツも熱くなっており、乗車後すぐに触れるとやけどする可能性もあります。
そんななか、フロントガラスを「サンシェード」で覆っているクルマをよく見ますが、実際のところ高温対策としてはどれくらいの効果があるのでしょうか。
かつてJAF(日本自動車連盟)は、さまざまな条件で夏のクルマの車内温度を比較する実験を行っています。
実験では、晴天で外気温が35度の中、何も対策していない黒と白のクルマ、サンシェードを装着した白のクルマ、窓を3cm開けた白のクルマ、エアコンを作動させた白のクルマという5つの条件を用意。
各車両の車内を25度に揃えて、午後0時から4時間後に車内温度が何度になるかを調べました。
車内の最高温度が最も高かったのは、何も対策していない黒のクルマの57度で、その次は対策していない白のクルマで52度でした。
そしてその次に温度が高かったのはサンシェードを装着した白のクルマでしたが、50度まで上昇。つまり、サンシェードの有無が車内温度にはあまり影響を及ぼさないことが分かります。
ちなみに、窓を3cm開けたクルマの車内温度は45度、エアコンを作動させたクルマは27度と、やはり1番効果があるのはエアコンを作動させることでした。
前述のように、サンシェードがあってもなくても車内温度はそれほど変わりませんが、実はダッシュボードの温度上昇を抑制する効果があるということも、同実験で明らかになっています。
ダッシュボードの温度は、対策していない黒のクルマが79度だったことに対して、サンシェードを装着したクルマは52度と、前者に比べて27度も低く、ダッシュボードの熱さ対策にはサンシェードが有効であることがわかります。
サンシェードには、車内の温度上昇を抑制するということより、フロントガラスから差し込む直射日光を遮ることで、ダッシュボードやハンドル、シートなどが熱くなるのを防ぐことができるといえるでしょう。
ところで、JAFは「車内の温度をどうしたら最も早く下げられるのか」を試した実験も行っており、それによると「窓を全開にして外気導入のエアコンで温度設定をLoにした状態で2分経った後に内気循環に変更し走行したクルマ」が一番早く車内を冷やすことができたといいます。
車内の温度が下がるまで、エアコンを作動させて走行せずに待っているという人がいるかもしれませんが、同じ暑さを我慢するなら、エアコンをつけて走り出したほうが結果的には早く涼しくなるということです。
また「助手席の窓を開けて運転席のドアを5回開閉したクルマ」も1分足らずで47.5度まで車内温度を下げることができたことから、クルマに乗り込んでから出発するまでナビなど設定している間にドアの開閉を行い、準備が整ったら最低温度に設定したエアコンを外気導入に作動させ、速やかに出発するというのが最も効率的な方法かもしれません。
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車内の温度が早く下がったとしても、ハンドルやベルトの金属パーツ、チャイルドシートといった、肌が触れる部品まで温度が下がっているとは限りません。
これらの部品に最初に触れる際は、熱いことを想定した上でハンカチなどを介して確認しながら触るなど、最初からしっかり掴まないようにしましょう。
また子どもがうっかり触ってやけどをしないよう、普段から気を付けるように伝えたり、目を離さないようにしたりすることも大切です。