交差点の停止線が「二輪」と「四輪」で分かれていることがあります。なぜなのでしょうか。
■なぜ「二輪」「四輪」で分けた?
交差点などの手前に引いてある「停止線」ですが、ときどき「二輪」と「四輪」それぞれが分かれて設けられている場合があります。
近年では徐々に見る機会も減っていますが、一体どのような理由で設けられたのでしょうか。
停止線とは、信号のある交差点の流入部や横断歩道の手前、一時停止交差点の非優先道路流入部に設置されるものです。赤信号や歩行者のいる横断歩道、一時停止交差点で停止する際は、この停止線を超えてはなりません。
そして、2つに分かれた停止線は「二段停止線」といい、二輪車(バイクや原付、軽車両も含む)と四輪車それぞれの停止線が3〜4メートル、およそクルマ1台弱ほどの距離をとって設置したものです。
1992年6月の「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」改正案で規定され、全国で設置が開始。
設置の背景には、四輪車の交差点左折時にバイクを巻き込む事故が多かったことがあり、こうした事故を防止する目的で導入が始まったのです。
これにより、信号待ちなどで先頭にバイクがいる場合、四輪からは距離を取ることで存在を認識しやすくなり、二輪車にとっても死角にとどまるのを防ぐことができます。
原則として二段停止線がある場所では、二輪・四輪車ともにそれぞれの停止線を守らなければなりませんが、混雑などで、四輪と四輪の間で二輪が停止している状況では、すり抜けして二輪停止位置まで進むことはせず、その場でとどまる必要があります。
しかし、実際には「前方が混雑していても、二輪は前方の停止線まで移動して停まらなければいけない」という誤解が生じてしまい、むしろすり抜け行為を助長することとなってしまいました。
二輪のすり抜けは、左折するクルマに巻き込まれたり、ふらついて他車に接触したりと非常に危険なだけでなく、すり抜ける場所や方法によっては交通違反に該当する可能性のある行為です。
例えば道路交通法第30条では、「優先道路以外の交差点、踏切、横断歩道または自転車横断帯及びこれらの手前30メートル以内の部分で、特定原付などを除いた他車を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない」(要約)と交差点での追い越しは禁止されています。
割り込みに関しても同法第32条により「停止もしくは停止しようと徐行している車両等や、これに続く車両等に追いついたとき、その車両等の前方に割り込んだり、その前方を横切ってはならない」と定められています。
このように、交通違反にもなりうる非常に危険な行為を助長することから、二段停止線は現在、全国的に撤去が進んでいます。
警察庁広報室によると1992年度に設置が開始された二段停止線は、1996年度の9070箇所をピークに減少が続き、2022年度末には2546箇所と、ピーク時の3分の1以下まで減っています。
この減少理由について、同室担当者は以下のように話します。
「都道府県警察では道路環境や交通実態の変化等に応じて交通規制の見直しを実施しており、二輪による危険なすり抜けが認められる場合には二段停止線の規制について見直しを行っています」
実際に二段停止線が導入された場所で、そうした危険なすり抜けが多発していたケースもあったといいます。
現時点では、すべての二段停止線の撤廃が決まっているわけではないようですが、一部の府県では全域で撤廃されたところもあり、徐々に消えていくものとみられます。
※ ※ ※
一部の道路では依然として二段停止線が残っていることもあるため、もし見かけたらそれぞれの停止線に従うとともに、二輪車に乗っていて交差点などの手前が混雑している場合は、その場にとどまって停車するようにしましょう。