日本でもキャンピングカーが文化として定着し、本格的なキャンピングカー、いわゆるキャブコン(キャブコンバージョン)の台数が増えてきました。そうした中で8月26日にキャンピングカーが横転し子供が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。これまでも同様の事故が発生していますが、どのような原因があるのでしょうか。
■キャンピングカー横転事故…その原因は?
2024年8月26日に上信越自動車道にてキャンピングカーが横転し、乗っていた子供が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。
度々、キャンピングカーの横転事故は発生していますが、それらの原因にはどのような背景があるのでしょうか。
夏のこの季節、キャンピングカーで車中泊旅を楽しむ人が多くなります。
日本でもキャンピングカーが文化として定着し、本格的なキャンピングカー、いわゆるキャブコン(キャブコンバージョン)の台数が増えてきました。
キャブコンバージョンは、トラックやキャンピングカー専用シャシーをベースにFRPやアルミ材で製作した居住スペースを載せたタイプのクルマです。
小型のコンドミニアムのような快適な空間、中で調理などができる本格的な装備が特徴となっています。
様々なキャンピングカーメーカー(ビルダー)から販売されていて、注文から納車まで1〜2年待ちという人気商品です。
昨今ではレンタカーも増加しており、気軽にキャンピングカーライフを楽しむ人も増えています。
しかし、一方でその独特の形状や走行性から運転には十分な知識が必要とされており、レジャーシーズンには事故の発生が多くなります。
つい先日も、前述の上信越道でキャブコンの横転死亡事故が起きたばかり。なぜキャンピングカーの事故は起きるのでしょうか。
前述の通り、キャブコンはトラックなどをベースに、居住空間であるシェルを載せたクルマです。
居住スペースを広く確保するため、後部シェルは箱形となり、投影面積が大きくなります。つまり、空力的に影響を受ける部分が大きくなるという特性があります。
加えて運転席はキャブオーバータイプ、大きなキャブを載せるために後部はトレッドよりもボディが張り出していることが多く、後部オーバーハングも大きくなっています。
こうした形状ゆえに、強い横風を受けてしまうとその後の車両コントロールが難しく、蛇行したまま横転してしまうという事故が後を絶えません。
あるキャンピングカーメーカーのスタッフは、こんな要因についても指摘します。
「いわゆる過積載と、荷物の積む位置です。
キャブコンはシャシーによって耐荷重性能が決まっているのですが、様々な装備を載せた段階で、まずその耐荷重の一部を使ってしまっています。
ですので、大きなボディのわりには積載可能重量は想像以上に多くありません。
しかし、それを理解せずに重い荷物を積んでいるユーザーさんをかなり見かけます。
また積む場所も大切で、できるだけ車軸上やそれに近い位置に荷物を載せないと、運転した時のバランスが悪くなってしまうんです」
こうした過積載や重量物の積載位置が原因となり、タイヤのバンク・バーストが発生することが指摘されたことがあります。
これによりトヨタは、自社製キャンピングカーシャシーの「カムロード」の仕様を変更。
後輪をダブルタイヤに変更することで、耐荷重性能の強化と走行安定性の改善を図りました。
一般的なクルマでもタイヤは走行性、安全性を担保する大切なパーツですが、キャブコンではその重要性はさらに高まります。
■事故の背景には「タイヤ」の影響が大きい? そもそも運転の仕方にも注意が必要か
今回、上信越道で事故を起こした車両も、右前輪タイヤのパンクが要因となって横転したと各メディアで報じられました。
別のキャンピングカーメーカーの代表は、タイヤとキャブコンの関係の重要性について力説します。
「キャブコンの事故を検証してみると、大抵の場合はタイヤが原因となっていることが多いように見受けられます。
劣化が激しいタイヤを使っていたり、空気圧が適正値より少し上でなかったりということが事故の要因につながるのです。
よくキャンピングカーの事故ではリアタイヤへの負荷が話題となりますが、実はフロントタイヤにこそ十分な配慮が必要です。
キャンピングカーの構造上、利車両後部が重かったり、また積載物や後付けの装備によってリアの重量が増えてしまうと、走行中に前後運動が激しく起こります。
すると、タイヤやサスペンションに大きな負荷がかかり、直線などをハイスピードで運転するなど、いくつかの条件が重なるとバンクやバーストする恐れが高まるのではないでしょうか」
さらにこの代表は、昨今の気象状況も影響しているのではないかといいます。
「ここ数年の夏は、各地で気温35度以上になることが当たり前になってしまいました。
こういう条件だと、路面温度は大変な高温になります。タイヤはそれでなくても摩擦で温度上昇が生じるのに、さらに厳しい条件に追いやられることになります。
それでなくともキャブコンのタイヤへの負荷は大きいのに、管理の悪いタイヤはパンク・バーストの危険性がさらに高まるわけです。
マメにタイヤの空気圧をチェックし、圧は適正値よりも少し高めにしておく、そしてスピードは抑えるというのは、キャブコンでは鉄則です」
キャブコンの事故を防止するには、よくタイヤの状態を気に掛けることだとこのメーカー代表はいいます。
「日常的にタイヤの劣化防止やチェックを心がけ、出発前、ドライブ中に空気圧調整をするのはマストです。
さらに酷暑の中で高速道路を走る場合は、走行速度を80km/h以下に抑えて、2時間以上の連続走行をしないことです。
できるだけ小まめに休憩を取ることでタイヤの温度上昇を抑えることも、パンク・バーストの予防になります。
あと、とにかくキャピングカーには性能の良い新しいタイヤを履かせるというのも重要ですね」
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そして、レンタカーなどで初めてキャンピングカーを運転するという人は、一般のクルマとの違いを十分に理解する必要があります。
とにかくスピードを抑えて走り、急激な車両の挙動を生じさせる操作はしないということが大切です。
小さな子どもを乗せる場合は適切なチャイルドシートやジュニアシートの装着を必ず行い、走行中は車内の移動をさせないといった対策を十分に取る必要もありそうです。