信号待ちの先頭車両がときどき、停止線のずっと手前で停車しているのを見かけます。このような停車方法は停止線を越えていないため交通違反には当たりませんが、後続車両からすると「なぜ前に出ないのだろう?」「もっと詰めて欲しい」と感じるかもしれません。なぜ停止線の手前のスペースを空けるのでしょうか。
■停止線の手前「何メートル」までなら下がっていいの?
ドライバーの中には、信号待ちの際に停止線のずっと手前で止まる人がいます。
端から見ると「もう少し前に出たら良いのに…」と感じる場面もありますが、一体なぜ停止線の手前のスペースを空けるのでしょうか。
信号待ちの先頭車両がときどき、停止線のずっと手前で停車しているのを見かけます。
このような停車方法は停止線を越えていないため交通違反には当たりませんが、後続車両からすると「なぜ前に出ないのだろう?」「もっと詰めて欲しい」と感じるかもしれません。
また信号機が感応式だった場合、先頭車両が停止線よりもずっと手前に停車すると信号機がいつまで経っても変わらず、後続車両に迷惑をかけてしまうおそれもあります。
では一体なぜ、停止線のずっと手前で停車するクルマがいるのでしょうか。
まずその理由のひとつとして、交差点を右左折してくる大型車両が曲がりやすいようにすることが挙げられます。
特に大型車両は左折時に車両の軌道が大きく外側にふくらんで反対車線にはみ出ることがあるため、信号待ちのクルマが停止線より手前で停車していた方が余裕をもって曲がれるといえるでしょう。
これに関してSNS上では「大型トラックに配慮して停止線より手前の停止を心がけている」という声が聞かれたほか、大型車のドライバーからは「大型車が曲がってくると予想して、停止線の手前で止まってくれているとテンションが上がる」「停止線の1メートル手前でも助かります」といった意見が寄せられました。
次に、二次的な事故を防止するという目的を持っているドライバーもみられます。
たとえば停止線の先に横断歩道がある状況で後続車両から追突された場合、その勢いで横断中の歩行者と接触してしまうおそれがあります。
しかし停止線より手前で止まっていれば、少しでも被害を軽減できる可能性が高くなるというワケです。
さらに車両の構造上、停止線ぴったりで停車するとクルマのルーフ部分がちょうど信号機と重なって見えにくいという理由から、少し手前で止まるようにしているドライバーもいます。
またそのほかの理由として、SNS上では「自車の前方の車両感覚をつかめていないから停止線の手前で止まってしまうのでは?」という指摘も聞かれました。
実際のところ、自分のクルマのボンネット部分がどれくらいの長さなのかよく理解していないというドライバーは少なくありません。
このように、ドライバーが意図せず停止線の手前で止まってしまうケースもあるといえるでしょう。
なお警察庁が公表している運転免許技能試験の採点基準に関する文書によると、「停止線の手前からおおむね2メートル以上手前で停止した場合」には停止位置が不適切として減点対象になります。
道路交通法では停止線の手前で止まる行為に関して規定されておらず、違反には当たらないものの、停止線から2メートル以上手前で停止する行為は運転方法としてあまり推奨はされていません
加えて、国土交通省の交差点設計に関する文書では、停止線の位置を「交差道路側の右左折車の走行に支障を与えない位置に設置する」と明記しています。
したがって、基本的には大型車が右左折することを想定した上で停止線が設けられており、本来は停止線より大幅に手前で停止する必要はないといえます。
とはいえ道路の道幅や形状によっては大型車が右左折しにくく、また大型車の交通量が多い場所もあるかもしれません。
普段から停止線ぴったりで停止できるような運転を心がけつつも、道路状況に応じて停止線から2メートルを超えない範囲でスペースを空けるなど、柔軟な対応をとることが大切です。
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クルマが停止線の手前で止まるのは「大型車の通行のため」「信号が見えにくいから」「車両感覚が分からないから」など、さまざまな理由があります。
もし前方の車両感覚がつかみにくい場合は、駐車場の白線にクルマの前端を合せた状態で停車し、運転席から白線の見え方を確認するという方法で練習してみると良いかもしれません。