かつてスバルは、現在の車中泊ブームを先取りするようなクルマである「ドミンゴ アラジン」を製造・販売していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■製造台数はわずか282台のミニバン「ドミンゴアラジン」とは?
スバルといえば、スポーツワゴンやSUVが有名ですが、かつてはユニークなミニバンも展開していました。
なかでも、現代の車中泊ブームを予見するようなモデルも存在していたのですが、一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマは「ドミンゴアラジン」です。
同車は1996年から1998年までのわずか2年間しか生産されず、製造台数はたった282台ととてもレアなクルマです。
参考までに、世界中のカーコレクターから大人気であるフェラーリの限定車「F40」の総生産台数が1311台であることと比較すれば、その希少性がいかに際立っているかが分かります。
ドミンゴアラジンは「ドミンゴ」というワンボックスカーがベースとなっています。
ドミンゴは、1983年にスバルの軽トラック「サンバー」から派生した「サンバートライ」に1リッターまたは1.2リッターのエンジンを搭載した普通車規格のクルマです。
ボディサイズは全長3525mm×全幅1415mm×全高1995mmという軽自動車規格のコンパクトなボディに、なんとトヨタ「アルファード」と同じ7人乗りの3列シートを備えた斬新なシートレイアウトを採用していました。
さらに、RR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用し、小回りの良さやトラクション性能の向上、広い荷室スペースの確保といった多くのメリットを持っています。
1994年にサンバーのフルモデルチェンジを受けて、ドミンゴも2代目モデルへと進化。
ボディは軽自動車規格を維持しつつ、最高出力は61馬力まで向上したほか、パワーウインドウやパワーステアリングを備え、乗用車並みの快適性を持つクルマへと仕上がりました。
さらに、CVT(無段変速機)が搭載され、運転の快適性と利便性が飛躍的に向上しました。
そして1996年、待望のキャンピング仕様「ドミンゴアラジン」が登場。
ポップアップルーフを備え、大人1人と子供1人が寝られるほどの広々とした居住空間を提供し、150kgまでの荷重にも耐えうる設計となっています。
また、運転席と助手席は90度回転できる対面式で、後部座席をフラットにすると広大なベッドスペースが出現。
最上級グレードでは、シンク、シャワー、サイドテーブル、カセットコンロといった設備も充実し、本格的なキャンピングカー仕様となっていました。
当時の新車価格は、ポップアップルーフ仕様の4WD・CVTモデルで178万4000円です。
現代のキャンピングカーと比べると決して高価ではありませんが、当時は車中泊やキャンピングカーそのものがまだ一般的でなかったこともあり、その斬新なコンセプトは市場に受け入れられず、わずか2年で生産を終了することになりました。
しかし、ドミンゴアラジンは、現在のアウトドア人気の先駆けとなった存在であり、今でもその希少性と個性的なデザインから、愛好家の間で語り継がれています。