かつては一世を風靡したステーションワゴンですが、今ではSUV人気に押されて下火となっています。そんなステーションワゴンですが、なぜ「駅」を意味する言葉が用いられているのでしょうか。
■「ステーションワゴン」は「駅」に関係している!
セダンの走行性能とワゴンの積載性を兼ね備えたステーションワゴンは、アウトドアブームなども追い風となり、1990年代に黄金時代を迎えました。
当時は、スバル「レガシィ ツーリングワゴン」や日産「ステージア」、トヨタ「カルディナ」など、各メーカーが魅力的なステーションワゴンを多く提供していました。
しかし、2000年代に入りSUVやミニバンが優勢になると、ステーションワゴン人気は徐々に影を潜めるようになり、2024年8月現在における国産ステーションワゴンは、スバル「レヴォーグ」やトヨタ「カローラ ツーリング」など、ごく限られたものとなっています。
そんなステーションワゴンですが、そもそもなぜ「ステーション(=駅)」という言葉が用いられているのでしょうか?
そこにはクルマの歴史が大きく関わっているようです。
「ステーションワゴン」という表現が広まったのは、1920年代のアメリカとされています。
広大な国土を持つアメリカでは早くから鉄道網が発達しており、1920年当時には既に主要な長距離移動の手段となっていました。
鉄道を利用する人々のほとんどは、家財道具などの大きな荷物を持っているため、駅から最終的な目的地までは大きな荷台を持った「デポハック(Depot Hack)」と呼ばれる馬車を利用するのが一般的でした。
デポハックは「荷物置き場」を意味する「デポ」と「(馬車の)タクシー」を意味する「ハック」を組み合わせた言葉で、日本語では「駅馬車」とも呼ばれます。
一方、1920年代のアメリカは、大量生産方式を確立したフォードの「モデルT(T型フォード)」によって、急速にモータリゼーションが発展している時代でもあります。
そのため、馬車をベースとしていたデポハックは、徐々にモデルTをベースとしたクルマへと置き換えられていきました。
なお、当初はモデルTをベースとしていたものも、後に「デポハック」と呼ばれていたようですが、最終的には「ステーションワゴン」という名称が定着するようになります。
そこには、馬車とクルマの混同を避けるといった背景があると思われますが、いずれにせよ「ステーションワゴン」は、文字どおり駅から最終的な目的地まで荷物を運ぶための乗り物に由来することは確かなようです。
■「SUV」のどこが「スポーツ」なの?
ステーションワゴンが下火となっている背景に、SUVの台頭があるのは先ほど説明したとおりです。
SUVは「スポーツ・ユーテリティ・ヴィークル(Sport Utility Vehicle)」の頭文字をとったものであり、日本語では「スポーツ用多目的車」などと表現されます。
確かに、近年のSUVのなかには高い走行性能を持つモデルもありますが、ほとんどのSUVはどちらかといえばスポーティなクルマではありません。
そのため、インターネット上には「SUVのどこが“スポーツ”なの?」という疑問の声も見られます。
実は、このSUVという言葉の起源もかつてのアメリカに由来しています。
SUVという言葉が一般化したのは1960年代のアメリカとされていますが、当初のSUVはピックアップトラックの荷台を屋根でおおって居住性を持たせたものでした。
アメリカにおけるピックアップトラックは、普段の移動はもちろん、農作業や土木作業などの業務用途にも利用できる、まさに「ユーテリティ・ヴィークル(=多目的車)」という位置付けでした。
一方、荷台が屋根で覆われたSUVは、農作業や土木作業というよりも、釣りやキャンプ、スキーなどのレジャーに向いていたことから、単なる「ユーテリティ・ヴィークル(=多目的車)」ではなく、「スポーツ」という言葉をくわえて、既存のものと区別されることになったようです。
日本では、「運動競技」といった意味合いの強い「スポーツ」ですが、英語では「趣味やレジャーなどを楽しむこと」という広い意味でも用いられます。
つまり、「SUV」における「スポーツ」は「運動性能が高いこと」や「競技用車両」を意味するわけではなく、「趣味やレジャーを楽しむことができる、どんな用途にもマッチしたクルマ」という意味を持っているのです。
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車検証を見ると、ほとんどのSUVは「車体の形状」欄に「ステーションワゴン」と表記されています。
このことからもわかるように、ステーションワゴンとSUVの間に明確な違いがあるわけではなく、実際にはメーカーやユーザーによる便宜的な区分けにすぎません。
また、近年ではスバル「レヴォーグ レイバック」のように、ステーションワゴンとSUVの間をとったようなボディタイプも登場しています。
このように考えると、今後全く新しいボディタイプのクルマが登場するかもしれません。