台風による被害と言えば、強風により倒木や建物の倒壊、大雨による冠水、河川の氾濫などが挙げられます。さらにクルマを持っているユーザーからすると別の被害に遭う可能性も。それは自動車盗難です。一体どういうことなのでしょうか。
■台風などの大雨、強風で窃盗団が動き出すのはなぜ?
九州や東海圏を中心に甚大な被害をもたらした台風10号は現在、近畿地方を東進しており近畿、東海地方を中心に記録的な大雨になることが予想されています。
このような荒天時には不要不急のクルマ利用は当然、控えるべきですが、その反対で嬉々として(おそらく)出動の準備をしている悪い奴らがいます。それは、自動車窃盗団です。
なぜ、荒天時に窃盗団の活動が活発になるのでしょうか。
実際に筆者がこれまで被害者本人に取材をした自動車盗難においては、大雨や強風に加えて首都圏での降雪時、また地震のあとで余震が続くようなときに盗難に遭ったというケースが少なくありません。
セットしていたセキュリティアラームが地震の振動で「誤作動」するため、近所迷惑になるとの判断でオーナー自らアラームをオフにしてしまい窃盗被害に遭った例もあります。
社外セキュリティに関しては施工業者のレベルによって、完全に「誤報ゼロ」にすることも十分可能です。
大雨や強風、大雪などの荒天時に自動車の盗難が増加傾向になるのは、そのような荒天時は窃盗に関わる作業をする際も音がかき消されて発覚されにくいことが理由です。
実際はどのような状況になるのでしょうか。
カーセキュリティ専門店を展開する株式会社プロテクタの上條洋氏に話を聞きました。
「一般的に雨の日の夜は、外出する人が普段より少ない上、雨の音が邪魔をして窃盗団が敷地に入り込む足音や作業の音も聞こえにくくなります。
台風や大雨の時はなおさらで、屋根を叩きつける雨の音や強風によりさらに雑音が増えるので十分注意が必要です。
社外セキュリティのサイレン音も雨や風などの音で小さく感じると思いますし、晴れの日よりは遠くまで響かないでしょう。
弊社が扱っている製品では、オーナーが所有するリモコンに通知が来るタイプのセキュリティだと異常に気づきやすいです。
窃盗団に対してセキュリティ装着と、LEDスキャナー類で純正品以外が装着済みであることをしっかりアピールすることをお勧めします。
駐車場のカメラやセンサーライトも有効ですが、対策できる人は多くないかもしれません」
リモコンに通知が来るタイプの社外セキュリティであれば、風雨の強い日でも非常事態に気づきやすいといえるでしょう。
なお、昨今の窃盗団は事前にわざとクルマを揺らして「セキュリティアラームが作動するか?」、「どのようなセキュリティがついているか?」、「オーナーがクルマで出かける時間や帰宅する時間は?」などもチェックもしています。
そのような下見の際のチェックも風雨の強い日に行えば気づかれるリスクも低くなってしまいます。
■自宅の駐車場を特定される? こっそり仕込まれる「GPS」に注意を!
台風が襲来するこの時期。気を付けるべきことはもう一つあります。
暑さも和らいでくる9月以降、カーミートのイベント開催が全国各地で増えてきます。
8月31日に富士スピードウェイで開催予定だったFuelFestは台風のため中止となりましたが、国産旧車スポーツカーが多く集まるようなイベントのうち、お金を払えば誰でも参加できるイベントは要注意です。
実際に2022年のFuelFestでは、何台かの旧車やスポーツカーにエアタグやGPS発信機が仕掛けられ、その後、数週間以内に盗まれてしまったクルマもありました。
窃盗団は特定の車種を盗めという指示を受けると、まずは「対象車がどこにあるのか?」というクルマ探しからスタートします。
海外で高値取引されるような人気車種(スカイラインGT-R、スープラ、シビック、RX-7など)が多数集まるようなカーイベントは恰好の「狩り場」となります。
周囲の人に気づかれないよう目当てのクルマにトラッカー(エアタグやTILE、各種小型GPS発信機など)を仕掛けて、イベントが終了してオーナーが帰宅するまでを追跡し、最終的にそのクルマの普段の保管場所までを特定します。
実際に下見にも出かけて確認し、周囲の防犯カメラやつけているセキュリティなども同時に確認します。
ちなみに「GPSをコッソリ仕掛けて誰かの位置情報を無断で知ろうとする」行為は法律違反です。
改正ストーカー規制法の施行によって令和3年8月26日から「GPS機器等を用いた位置情報の無承諾取得等」が規制されています。
また、重要なことですが位置情報を知るトラッカー(紛失防止タグ)としておなじみのエアタグやTILEに大きな仕様変更がありました。
簡単に言うと、追跡がやりにくくなったということです。
2024年5月13日にアップルとGoogleが双方の公式サイトで発表した内容によると、エアタグやTILEなどBluetoothによる追跡デバイスに対して、業界規格として「不要な位置情報トラッカーの検出」を作成。
知らないうちにユーザーの追跡に使用されている場合に、iOSとAndroidの両方でユーザーに警告できるようになりました。
AppleはiOS 17.5に、GoogleはAndroid 6.0以降を搭載したデバイスにてこの機能が有効となります。
不明な追跡デバイスが仕掛けられている場合、スマホなどのデバイスに「[追跡アイテム]があなたと一緒に移動しています」という警告が表示され、追跡を拒否することが可能となりました。
かつては、クルマに仕掛けられたエアタグを探し回る必要がありましたが、この機能では手元のスマホで追跡拒否などの操作が選択できるようになりました。
これにより、窃盗団がエアタグを仕掛けて位置情報を追跡する場合にも、オーナーが所有するiPhoneやアンドロイドのスマホに警告の通知が行って、追跡を中止させることが可能となります。
また、逆にオーナーが盗難防止や盗難後の追跡のためにこれらのトラッカーを設置していた場合も、犯人側のスマホに通知が行って追跡を止められる可能性もあります。
オーナー側が気を付けることは、スマホの通知に敏感になり、もし「不明なデバイスがあなたと一緒に移動しています」などの表示が出たら、あなたのクルマは窃盗犯によって追跡されていると理解して、すぐに追跡を辞めさせるよう操作をしてください。
また、GPSが設置されているかどうか気になる場合は、通販で販売されている「GPS発見器」(3000円前後で購入可能)を利用するのもよいでしょう。
販売元によると、「90%のGPSが検出できる」とのことでした。
大雨や強風、暴風などの荒天時に自宅に置いてあるクルマにGPSを仕掛け、外出時を狙って追跡し、オーナーの気持ちが緩む出先の駐車場で盗まれる事件も増えています。
出先でも気を緩めることなく警報の通知には敏感になってください。