日産のバンタイプの軽商用車「クリッパーシリーズ」にはデザイン違いのモデルが混在しています。一体どういうことなのでしょうか。
■「クリッパーバン」と「クリッパーEV」何が違う?
日産は、「クリッパーバン」(軽商用バン)および「クリッパーリオ」(軽乗用バン)を改良し、新たなモデルを2024年3月26日に発売しました。
クリッパーは、初代モデルが2003年に登場した軽バンのシリーズ。現行モデルは2015年に登場した3代目で、スズキ「エブリイ」OEMモデルですが、これまでの「NV100クリッパー」という車名を廃止し、改良モデルではかつての車名だった「クリッパーバン/リオ」に戻っています。
そんな新型クリッパーバン/リオでは、今回トランスミッションを変更。従来の4速AT/5速AGS(オートギアシフト)に代わってCVTが採用されました。
なお、5速MT車は引き続き設定されており、クリッパーバンで選択可能です。
そのほか、オートエアコンやオートスライドドアを標準装備した660ccターボエンジン搭載モデル「GXターボ」をクリッパーバンに再設定。
さらにクリッパーバンには、「インテリジェント エマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」や「踏み間違い衝突防止アシスト」といった先進安全技術を全車標準装備し、安全性能が向上しました。
クリッパーリオでは、4WDの制御を電子制御パートタイム4WDに変更することで、路面状況に応じて2WDとの切り替えが可能になったほか、農地や山の未舗装路などで力を発揮する「4WD LOCK」モードも搭載しました。
加えて、LEDヘッドライトを全車に標準装備しています。
そんなクリッパーシリーズには別のモデルも存在しており、それが2024年2月に発売された「クリッパーEV」です。
商用車でも電気自動車(EV)のニーズが高まっていることを受けて登場した新型クリッパーEVは、軽商用バンとして必要な荷室性能と積載量を確保しながら、バッテリーは床下中央に搭載して低重心化を図ることで、揺すられ感や段差での跳ね感を低減し、乗り心地の良さと操縦安定性を実現しました。
さらに、モーター駆動のEVならではのパワフルな走りで、重い荷物もスムーズに運ぶことができるほか、走行時や起動・停車時の静粛性も高く、早朝や深夜などに住宅街でも騒音を気にすることなく使用することができます。
20kWhのバッテリーを搭載し、180km走行することが可能(WLTCモード)。普通充電では約7.5時間で満充電を可能としたほか、オプションの急速充電を利用すると約42分で80%まですることができるといいます。
このように、バンタイプのクリッパーは多彩なラインナップを誇っているのですが、実はクリッパーバン・クリッパーリオと、クリッパーEVでは見た目が全く異なっています。
前述のように、クリッパーバン・クリッパーリオはエブリイのOEMモデルですが、クリッパーEVは三菱の「ミニキャブEV」がベース。異なる車種がOEM供給されていることから、デザインが全然違うというワケなのです。
現在、三菱で販売されているガソリン車の「ミニキャブバン」は、7代目・8代目(現行)はクリッパーシリーズと同じくエブリイのOEMモデルとなっていますが、6代目までは三菱が自社で開発していました。
さらに、6代目の途中、2011年に誕生した、新型ミニキャブEVの前身である「ミニキャブMiEV」は三菱製ボディを持っており、ミニキャブがエブリイのOEMモデルになってからも改良が続けられて併売されていたという経緯があります。
そのため三菱でもミニキャブEVのみが三菱オリジナルのボディとなり、それ以外のガソリン車はエブリイのOEMモデル。もちろんデザインが違うという、少々複雑な車種ラインナップになっているのです。
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クリッパーでは、初代モデルだけがミニキャブ(6代目)のOEMモデルでした。そして、今回新型クリッパーEVが投入されたことにより、日産としても久しぶりの“三菱製のクリッパー”が復活したというワケです。
なお、新型クリッパーEVのベースとなっているミニキャブEVは、ミニキャブMiEV時代から見た目こそ大きく変化していませんが、モーターや駆動用バッテリーなどの電動系コンポーネントを新世代化。
航続距離は旧モデル比およそ35%増となる180km(WLTCモード)とするなど、大幅に性能アップがなされています。