インドの日産法人が生産するコンパクトSUV「マグナイト」は、アジア・アフリカで大人気モデルとなっています。精悍なスタイルもカッコ良いマグナイト、日本市場で発売される可能性はあるのでしょうか。
■実は海外では大人気のコンパクトSUV
インドの日産には「マグナイト」というコンパクトSUVがあるのをご存じでしょうか。インドでのデビューは2020年12月です。
現地では100万円台前半のロープライスから販売されており、今年2024年5月には100万ルピー(約170万円)以下で買える特別仕様車「GEZA(ゲザ)」が発売されるなど、好調な販売を示しています。
マグナイトはグローバルモデルとして日本で設計・開発され、日産子会社のインド現地法人であるインド日産のチェンナイ工場で生産されています。インド国内のみならず、アフリカを中心に世界15市場に輸出されています。
インドの自動車マーケットは、スズキの現地法人「マルチ・スズキ」が2023年度で40%を超すシェアを獲得していますが、日産は1%に満たないシェアとなっています。
しかしながら、2023年6月にマグナイトの生産台数が10万台を達成したことがプレスリリースで伝えられ、その人気ぶりが日本国内でも知られました。
マグナイトの主要諸元は、全長3994mm×全幅1758mm×全高1572mm、ホイールベース2500mmと全長4mを切るコンパクトなサイズです。
パワートレインは、1リッターガソリンエンジン(ターボ/自然吸気)にエクストロニックCVTないしは5速セミAT、5速MTのいずれかがグレード別に組み合わせられる構成となっています。
このスペックは、ダイハツ「ロッキー」とそのOEM車、トヨタ「ライズ」、スバル「レックス」と同じようなものとなっています。
ロッキー/ライズ/レックスのボディサイズは、全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mmでほぼ同じです。
全幅こそマグナイトは1700mmを超え3ナンバーサイズになってしまいますが、その差は63mmと大差ありません。
パワートレインは、ロッキー/ライズには1.2リッターハイブリッドと、1.2リッター自然吸気、1リッターガソリンターボが設定されており、5速MTやセミATの設定がないことと、ハイブリッドの設定がマグナイトにはないという違いに収まっています。
マグナイトの車両価格は、エントリーモデルの「XE」(1リッター自然吸気/5速MT)が59万9900ルピー(約103万円)、最上級モデルの「ターボ XE CVT プレミアム」が109万1000ルピー(約188万円)となっています。
インド仕様の車両価格は、日本の法規制に対応する装備や、日本仕様では今や必須の先進安全技術の搭載がほとんどないことから、比較的安くなっていることがうかがえます。
デザイン面に目を向けると、インド仕様のまま日本市場に導入されても遜色ないエクステリア、インテリアと言えます。
特徴的なのは、八角形のフロントグリル。日産のアイデンティティとなる「Vモーショングリル」が採用されていないことです。
これはマグナイトが当初、日産ブランドではなくサブブランドの「ダットサン」から販売される予定だったことに由来します。
しかしダットサンブランドの全体的な販売不振を鑑みて、急きょ日産ブランドでの販売に舵を切ったことで、デザインのみそのまま引き継がれたようです。
それでいても、日産らしいスタイリングと、コンパクトなボディサイズとは思えない迫力あるデザインにまとめ上げられています。
■「マグナイト」の日本発売はあるのか
マグナイトが日本市場に導入されれば、ロッキー/ライズ/レックスが最大のライバルとなることは必至でしょう。
日産のコンパクトSUVは「キックス」がラインナップされていますが、ボディサイズは全長4290mmとマグナイトよりも一回り以上大きく、日産のラインナップでカニバリ(自社内での競合・共食い)は発生しないとみて良いでしょう。
キックスは元々、ガソリン車のグローバルモデルで、日本市場発売はかなり後発となりました。
日本市場はハイブリッドのシェアが高いこともあり、日産はキックスのパワートレインを再設計して独自のハイブリッド「e-POWER」専用モデルとしてデビューさせた経緯があります。
仮にマグナイトが日本市場で販売されるとなれば、コンパクトカーの「ノート」と同じようにe-POWERを搭載してデビューする可能性が高いでしょう。
しかし1リッターガソリンターボ+5MTの海外市場モデルは、そのまま日本市場で販売しても一定数の実績が得られるのではないでしょうか。
e-POWERとなると車両価格は高くなり、先進安全技術や運転支援システムを導入すれば、新車車両価格が200万円を超えるでしょうが、ロッキー/ライズのハイブリッドと同等の200万円台前半で収まってくれることが期待されます。
インド日産の工場で、e-POWERや先進安全技術を搭載した日本向け生産ができるかどうかが気になります。
一説には、こうした少なくない仕様変更が日本導入の大きな障壁になっているとの話もあるようです。
もしこれがクリアできれば、マグナイトの日本市場発売は現実的なものになるはずです。
そういえば、インドでトップシェアのスズキも、現地生産されるグローバルモデル「フロンクス」を日本市場に導入することが決まっています。
このフロンクスも全長4mを切るコンパクトSUVで、すでに世界各国で高い評価を獲得しています。
これまでの全長4mを切るコンパクトSUVは、実質的にロッキー/ライズ/レックスの独壇場。ここにフロンクスが殴り込みを掛け、さらにマグナイトもその土俵に上がれば面白い戦いを見せるでしょう。
その興味深い戦いは、消費者にとっては廉価で実用的なコンパクトSUVの選択肢が増えるという、有意義なものとなります。
日産さん、実はご検討中なのではないでしょうか。そんな淡い期待で本記事をシメさせていただきます。