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SUVのスタッドレスタイヤはどう選べば良いの? 横浜ゴム「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV G075」にはどんな違いがある? 同条件で試乗してみた

くるまのニュース 2024年9月20日 21時30分

横浜ゴムではSUV用スタッドレスタイヤとして「iceGUARD SUV G075」をラインナップしていますが、乗用車用スタッドレス銘柄である「iceGUARD 7」でもSUV用サイズを展開しています。果たして2つの銘柄にはどんな違いがあり、どう選べばいいのでしょうか? 本記事では、2024年2月に両タイヤを試乗した様子をお届けします。

■「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV G075」を圧雪路でチェック

 昨今の日本の新車販売をボディタイプ別にみると、人気ナンバーワンはSUVです。となればこの時期、新たにSUVを購入し、冬に備えてSUV用のスタッドレスタイヤ選びが気になる人も多くいることでしょう。

 日本のタイヤの主要ブランドのひとつであるヨコハマ(横浜ゴム)はSUV用スタッドレスタイヤとして「iceGUARD SUV G075(アイスガード・エスユーブイ・ジーゼロナナゴ)」をラインナップしていますが、実は乗用車用スタッドレス銘柄である「iceGUARD 7(アイスガード・セブン)」もSUV用サイズを展開。つまり多くのSUVでは、ヨコハマの製品で2つの銘柄が選べるようになっています。

 果たして2つの銘柄にはどんな違いがあり、どう選べばいいのでしょうか? 本記事では、トヨタ「RAV4」の4WDモデルに同サイズ(225/65R17)の2銘柄のスタッドレスタイヤを履いて走行性能の違いを比べた様子をお届けします。試乗は2024年2月に北海道で実施しました。
 
 まずは圧雪路でハンドリングとブレーキをチェック。表面は踏み固められた雪ですが、その下は溶けた雪が凍ってアイスバーンになっている過酷なコンディションで試してみました。

 ハンドリングはiceGUARD 7の安定感と素直さが印象的で、比べるとiceGUARD SUVはやや滑り出しが早い印象。どちらも安心して走れますが、圧雪路におけるグリップはiceGUARD 7が優位です。ブレーキの制動距離はどちらも同等と感じました。

■雪上性能はほぼ同等、氷上では「iceGUARD 7」に軍配が?

 次はステージを変えて、氷上におけるコーナリング性能を比較。半径15m+αの円状になった氷の上を走って比べてみました。

 2つのタイヤを比べて感じたのはiceGUARD 7の優位性。ツルツルと滑る氷の上ながらステアリング操作に対して素直に曲がるし、滑らないようにしっかりと粘る印象です。クルマのスタビリティコントロールの介入も遅いし、周回するタイムも明確にiceGUARD SUVより早い(=旋回速度が速い)ものでした。

 比べるとiceGUARD SUVはステアリングインフォメーションが薄く、絶対的なグリップでもアンダーステアが出やすいし、滑り出しの速度レンジが低いことを感じました。つまり、氷上でのグリップ性能はiceGUARD 7のほうが上位ということです。

「iceGUARD SUV」を装着し、氷上を走行するトヨタ「RAV4」

 氷上でのブレーキ性能(マイナス3度に設定された氷の上で時速30kmからABSを効かせて停止)も試してみましたが、iceGUARD 7のグリップ力の高さはここでもしっかりと現れました。

 iceGUARD 7はブレーキペダルを踏み込むとタイヤが踏ん張るので減速力がしっかり立ち上がり「こんなに短い距離で?」と思うほど確実に止まります。最新のスタッドレスタイヤはすごいですね。

 いっぽうiceGUARD SUVも十分に止まるのですが、iceGUARD 7ほどは路面に食いつかず、制動距離も15%ほど伸びる印象。意外に違うものですね。

 というわけで2つの銘柄を比べてわかったのは、雪上性能はほぼ同等(iceGUARD 7がわずかに優位)なのに対し、氷上では明確にiceGUARD 7のグリップ力が高いということ。氷上性能を重視するなら、SUVでもiceGUARD 7のアドバンテージが高いということです。

 この差がどうして生じているかといえば、使われている技術の“世代”の違いに理由があります。iceGUARD 7がヨコハマの最新テクノロジーで作られているのに対し、iceGUARD SUVの技術はiceGUARD 7の1世代前となるiceGUARD 6がベース。だから氷上性能には1世代分の技術の差による性能の開きがあるというわけです(技術の進化ってすごいですね)。

■「iceGUARD 7」と「iceGUARD SUV」ではそれぞれ得意ステージが異なる

 iceGUARD SUVとiceGUARD 7を乗り比べて思ったのは、氷上性能にこだわるなら、SUVユーザーもiceGUARD 7を買っておけば安心ということです。

 いっぽうでiceGUARD SUVがすべてにおいてiceGUARD 7に対して劣っているかといえば、決してそうではありません。アドバンテージもしっかりあります。

「iceGUARD 7」を装着したトヨタ「RAV4」。氷上性能を重視するならiceGUARD7を選べば間違いない

 ひとつは、雪上の性能。iceGUARD SUVはiceGUARD 7に対して溝面積が多く、また溝もより深いので「雪柱せん断力」と呼ばれる、踏み固めた雪の柱を排出する能力が高く、それにより深い雪やシャーベット路面でトラクションをしっかり稼げます。

 また耐摩耗性能はどちらも同等ですが、iceGUARD SUVは溝が深い(8.8mmのiceGUARD 7に対してiceGUARD SUVは10.5mmある)ため、摩耗してもスタッドレスタイヤとして使える期間が長いのもポイント。そしてなにより、iceGUARD SUVはiceGUARD 7に対してリーズナブルな価格で販売されているのも魅力です。店舗によっては同じサイズでもiceGUARD SUVはiceGUARD 7の3分の2ほどの金額で買えることもあります。

 選び方としては、氷上性能を重視するならiceGUARD 7を選べば間違いないでしょう。いっぽうで、そこまで高い氷上性能を求めないのであればiceGUARD SUVを選ぶのも賢い選択(といっても最新商品に比べれば控えめというレベルで十分に安心できる実力を持つ)。また、深く積もった雪道での性能を重視する人もiceGUARD SUVがオススメです。

 加えて、iceGUARD SUVはリーズナブルにスタッドレスタイヤを選びたいというSUVユーザーとのマッチングもいでしょう。

 SUVだからといって銘柄がひとつしか選べないのではなく、価格も含めて違いのある選択肢が用意されているのは消費者にとってありがたいことです。それゆえに両銘柄のどちらを選ぶのか迷いがちですが、乗り比べてみるとキャラクターの違いが意外にありました。そこを抑えれば自分のニーズにマッチしたタイヤが選べることでしょう。

■さまざまな車種で試乗して見えた「iceGUARD 7」の能力の高さ

 さて、ここからはiceGUARD 7をいろんなクルマで試して、そのマッチングを確認してみたのでお伝えしましょう。

 iceGUARD 7を履いたポルシェ「マカン」の印象は「コントローラブルで抜群に楽しい」です。

 路面はアイスバーンの上に薄く雪が積もっているという状況でしたが、iceGUARD 7は滑り出しが分かりやすく、スタビリティコントロールをオンにして走ればハイパワーでもひたすら安全。

 いっぽうオフにすればテールスライドが楽しめ、腕のあるドライバーならクルマを自由に振り回すことができることができるでしょう。

「iceGUARD 7」を履いた日産「フェアレディZ」

 続いて、同じボディでエンジン車(今回はディーゼルエンジン)とモーター駆動車(EV)が選べるBMW「X1」にiceGUARD 7を履いて圧雪路で乗り比べてみました。結論から言えばどちらにもしっかり対応。

 EVはアクセルを踏み込むのと同時に大きなトルクが立ちあがるのが特徴ですが、iceGUARD 7はしっかりと大トルクを受け止め、安心して走ることができます。

 もちろんディーゼルも同様に高い安定性を実現。同じ銘柄のタイヤで、出力特性が大きく違うEVでもディーゼルでもしっかりと足元を支えてくれることが確認できました。

 余談ですが、EVはディーゼル車に対して加速が鋭いだけでなく、アクセルコントロールに対する駆動力制御がよりリニアですし、優れた前後重量バランス&低重心のおかげでハンドリングも素直なのが印象的です。

 さらに日産「フェアレディZ」のチューニングカーに超扁平(へんぺい)サイズのiceGUARD 7を履いて圧雪路面でスラロームしてみました。

 スタビリティコントロールをオフにしてパワーを掛けるとすぐにテールスライドしますが、そのコントロール性の良さは抜群です。

 iceGUARD 7はハイパワーな後輪駆動スポーツカーとのマッチングもよく、なにより運転を楽しめるのがいいですね。

 ほかにも、トヨタ「ハイエース」を試乗する機会もありました。

 ハイエースは大きくて重い車体のバンですが、iceGUARD SUV G075は適用サイズを展開しています。しかも純正サイズを用意するほか、ドレスアップするユーザー向けのサイズもラインナップ。

 今回は4WDモデルに大人3人分の重りを積んだうえで、雪の下が凍った圧雪路にて加速、ハンドリング、そしてブレーキを試してみました。

 まず発進加速は、4WDということもあってまったく空転せずにスムーズです。そこからスラロームに移っても、安定性をしっかり保つことを確認できました。もちろんブレーキも、重量の重さによる制動距離の長さこそあるものの、挙動は安定。無謀な運転さえしなければ“何も起きない寛大さ”から、iceGUARD SUV G075の能力の高さを改めて実感しました。

※ ※ ※

 一般的な乗用車はもちろん、後輪駆動の高出力スポーツカーからSUV、そしてハイエースまで。今回の試乗ではiceGUARD 7の絶対的な性能と信頼性に加えて、適応能力の高さを知ることができました。

 ちなみに“冬の路面での性能”には「氷上性能」と「雪上性能」があり、それらは一部で相反するものです(どちらかを求めるともう一方が低下する部分がある)。

 しかしiceGUARD 7はヨコハマの技術により、従来モデルのiceGUARD 6に対して氷上性能が14%向上し、雪上性能も3%向上。トータルで進化しているスタッドレスタイヤなのです。

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