1980年代に「ハイソカー」と呼ばれる高級車がもてはやされましたが、現代では見かけなくなりました。なぜ廃れてしまったのでしょうか。
■最新メカとソファみたいなシートがスゴかった!
「ハイソカー」と聞いて車種が脳裏に思い浮かぶ人は、よほどのマニアかベテランのクルマ好きと言えるでしょう。
1980年代の日本でブームとなったハイソカーとは、上流階級を意味する“ハイソサエティ向け”のクルマという意味を持つ和製英語であり、主に高級車を指していました。
一方、現代にはハイソカーと呼ばれるモデルはひとつもありません。なぜ廃れてしまったのでしょうか
ハイソカーと呼ばれた車種は、単に高級車であるだけではなく、ツインカムエンジンに代表される最新鋭のメカニズムと、当時の高級ラウンジのソファのようなモケット張りのクッションシートなどを備えたモデルが中心。
当時の最高級車であったトヨタ「センチュリー」や日産「プレジデント」などはハイソカーと呼ばれることはありませんでした。
そんなハイソカーの中でも圧倒的な人気を誇ったのがトヨタ「マークII 3兄弟」で、中でも高級感を売りとしていた「クレスタ」はひと際高い人気を誇ったほか、ハイソカーは4ドアモデルが中心だった中、当時のトヨタの技術の粋を惜しげもなく投入した初代「ソアラ」も同様にハイソカーとして人気を博したのでした。
そんなハイソカーブームですが、1980年代の後半から徐々に人気に陰りが見え始め、1990年代初頭にバブル景気が崩壊すると完全に過去のものとなってしまいます。
この時代の流れの移り変わりはマークII 3兄弟を見れば一目瞭然。
1988年に登場した「80系」やその後1992年に登場した「90系」と呼ばれるモデルでは、それ以前の赤系のソファのようなシートとは打って変わって、シンプルでプレーンなデザインの内装になっていたのでした。
これはバブル景気が崩壊したことで、やや浮かれた感のあったハイソカーへの注目度が落ちたというのはもちろんですが、ハイソカー時代の内装はどちらかというと古き良きアメリカの高級車を思わせるものとなっていたのに対し、時代の流れとともにメルセデス・ベンツやBMWといった欧州の高級車ブランドの持つ高級感へと市場の好みが変化していった結果と言えるのではないでしょうか。
そもそも日本車の初期のモデルの多くはアメリカの車両をお手本としたものが多く、初期のトヨタ「クラウン」や日産「スカイライン」といったモデルでもテールフィンなどアメリカ車特有の意匠を持ったものとなっていました。
しかし時代が進むにつれてアメリカ車よりも欧州車をターゲットにするようになり、1989年に登場した初代「セルシオ」は欧州の高級車メーカーが舌を巻くほどの仕上がりとなっていたのは多くの人が知るところです。
そして現代ではアメリカ車であっても欧州車的な高級感を持ったモデルが多数存在するほどとなっており、ハイソカーが姿を消してしまったのも、そういった大きな時代の流れに飲まれてしまった結果だといえるのではないでしょうか。