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クルマに置いてた「スマホ」盗まれた! “車上荒らし”で「盗難」は補償される!? 「自動車保険」はどこまで「まかなえる」のか

くるまのニュース 2024年9月10日 11時10分

クルマは身近な存在だからこそ、つい私物を車内に置きっぱなしにしがち。ですが「車上荒らし」被害に遭ったとき、自動車保険で“私物”まで補償してもらえるのでしょうか。

■「車上荒らし」といってもさまざまなケースがある

 たびたびニュースをにぎわす「車上荒らし」。「自分のクルマは大丈夫」と油断していると、新手の方法であっさりとドアを開けられ、車内に置いてあった大切な身の回り品を持ち去られて茫然(ぼうぜん)自失……などということになりかねません。
 
 そんなとき、自動車保険をかけていれば「すべて」補償されるのでしょうか。

 まず“車上荒らし”とは、自動車に関する窃盗事件の中でも、車両そのものではなく車両の一部(パーツ)やカーナビ、車内に置いてあった身の回り品、積載物などが窃盗されることを指します。

 ただし車上荒らしと聞くと、言葉の印象から、窓ガラスが大胆に割られていたり車内が荒らされていたりする状態を想像します。

 しかし自動車保険の代理店業を30年間以上営んできたTさんは、次のように説明します。

「大切な愛車を守ろうとセキュリティを付けていても、それが鳴らず、車載カメラにも何も写っていないのに、人気のパーツだけが盗られてしまうケースは多くあります」

 また「車上荒らしでターゲットになるのは、人気車種のパーツ(外装、内装を問わず)が多いのですが……」と前置きをしたうえで、次のような例を教えてくれました。

「実際に、『車両はいつも停める駐車場にあって外装には傷が一切ついておらず、ドアも施錠されているのに、後部のトランク内に入れてあった高額なゴルフバッグだけが持ち去られていた』とか、『車内の小銭入れにあった硬貨だけを何度も盗られていた』というケースもありました。

 近年では窃盗団が“特定の人気車種”を狙って車上荒らしをすることも多く、そうしたケースでは同車種の扱いが手慣れているため、持ち主が思いつく限りの最新セキュリティ対策を講じていても、盗まれてしまう傾向もあるようです」

 ここで本題に戻りますが、車上荒らしで盗まれてしまったものは、自動車保険で補償してもらえるのでしょうか。

 前出のTさんは次のように話します。

「まず、車両保険に入っていれば、車両に固定されていたパーツが盗まれた場合には補償されます。

 また、車上荒らしをしようとこじ開けられた鍵穴や、割られた窓ガラスなどももちろん車両保険の補償範囲内です。

 カーナビは、ポータブルではなく車に固定して使用するものなら純正以外も補償の対象になります。

 タイヤも同様で、車に装着しているものだけが補償対象となりますが、取り外して車内に保管しているものが盗まれた場合は補償対象外です」

 車両保険では、あくまでも「車両の一部」が傷つけられたり、盗まれたりした場合に限って補償してもらえるというわけです。

■車両保険では補いきれないケースもあるが……

 では、車内に置いていたスマートフォンやパソコン、またETC車載器に挿しっぱなしにしていたETCカードなどは、盗まれたら泣き寝入りするしかないのでしょうか。

 保険代理店のTさんは、こう話します。

車内に貴重品を置いたままクルマを離れるのはやめましょう[画像はイメージです]

「残念ながら車両保険では、車載品(身の回り品)は補償の対象外です。

 しかし保険会社ごとに救済措置的な特約を用意してくれていて、その特約を付帯することで、あくまで“条件に合致すれば”ではありますが、盗まれた車載品に対して保険金をもらえます。

 例えば損保ジャパンでは、車両保険に「車両積載動産特約」を付けると、契約した車両が盗まれた結果として積載品に損害が生じた場合は、契約した保険金額の範囲内で補償。

 またSBI損保では「車内外身の回り品補償特約」を用意していて、契約している車両で外出しているときに携行していた身の回り品が盗まれたり損害を生じたりした場合、保険金をもらえるといいます。

 ただしこうした特約を付けていても、スマートフォンやパソコン、現金、クレジットカード類、アクセサリーなどは補償の対象外となってしまいますし、受け取れる保険金も30万円以内など、それほど高額ではないのだとか。

「これまでに動産特約を付けていたことで喜んでもらえた例としては、積み下ろしに手間がかかる特殊工具が被害に遭うことを想定していた職人さんのケースですね」(Tさん)

 調べてみると、Tさんが例に挙げてくれた2社以外にも動産の損害を補償してくれる特約は多くの自動車保険会社で用意されていますが、それぞれ内容が細かく規定されているうえに、使用すると保険が1等級下がるなど、保険金をもらえたとしても得にはならないと感じました。

 ちなみに、車上荒らしの発生件数自体は、2002年をピークに減少傾向とはいうものの、未だに全国で年間3万件以上確認されているといいます。

 また日本損害保険協会が損害保険会社の協力のもとに毎年実施している「自動車盗難事故実態調査」によると、2021年1月1日から2023年12月31日に発生した自動車盗難事故のうち、「車上荒らしのみ」で保険支払い件数が多かったのはダントツでトヨタ「プリウス」(2023年は117件、構成比12.7%)。2位のトヨタ「アルファード」(同年は57件、同6.2%)の2倍以上の件数でした。

 車両本体を盗難されて保険金支払いに至ったケースをみてみると、トヨタ「ランドクルーザー(プラド含む)」が3年連続で最多(2023年は383件、構成比14.7%)。2位以下には例年アルファード、プリウス、レクサス「LX」、トヨタ「ハイエース」などが名を連ねています。

※ ※ ※

 近年は街のあちこちに防犯カメラが設置されていることもあって、車上荒らしの犯人は「短時間で盗れる高額な獲物」に狙いを定めているようです。

 となれば車上荒らしに遭わないためには、一見して「このクルマの持ち主は防犯意識が高いな」と分かるような対策(ハンドルロック、タイヤロックなど)を講じた上で、外から見えるところには高額な(大切な)ものを置かないようにすることが、とても有効な自衛策であるといえそうです。

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