産には、過去にF1参戦を目論んで開発したレーシングカー「P35」「NP35」が存在します。どのようなモデルなのでしょうか。
■日産のV12エンジン搭載! 「和製スーパーマシン」がスゴイ
さまざまなモータースポーツのカテゴリに参戦していることでも知られる日産は、現在でもスーパーGTやスーパー耐久、フォーミュラEなど複数のカテゴリに参戦しています。
そんな日産は、過去にF1参戦を目論んで開発したエンジンを「P35」「NP35」と呼ばれるプロトタイプレーシングカーに搭載していました。
市販車カテゴリとは違い、レース向けの専用車体を持つ「グループC」カテゴリに参加するマシンのエンジンは、1991年からターボを持たないNAエンジンへと舵を切っており、ターボエンジンには厳しいハンディキャップが課せられるようになっていました。
これに対し、日産は当初、NA化に難色を示していましたが、1993年から自然吸気の3.5リッターエンジンに規則変更がなされることが決定したため、1990年ごろから新たなグループC用マシンのNAエンジンの開発をスタート。
新たなレギュレーションに合致するNAエンジンを搭載した新型車である「P35」を開発します。
このエンジンは「VRT35」型と名付けられた3499ccの排気量を持つV型12気筒DOHCエンジンで、最高出力は630PS以上、最高出力を発生する回転数は1万1600回転という超高回転型エンジン。
奇しくも当時のF1も同じく3.5リッターのNAエンジンが使用されていたことから、F1への参戦も検討していたと言われています。
そんなP35は北米にあるニッサン・パフォーマンス・テクノロジー社(NPTI)がシャシを開発したもので、93年のIMSA選手権に出場する予定でしたが、日産がグルーブCのレース活動を休止することとなり、幻のレーシングカーとなってしまったのです。
一方、日本ではこのP35を元にしてフルカーボンモノコック仕様とした「NP35」が開発され、1992年の全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)の最終戦にテスト参戦を果たします。
ここではあくまでテストであったため、予選、決勝ともに最下位に沈んでしまいますが、翌年はル・マン24時間レースなどへの参戦が予定されていました。
しかし、日産自身の経営状態の悪化や、プロトタイプレーシングカーというレースカテゴリ自体の衰退などもあり、P35に続きNP35の開発やレース活動も打ち切られてしまう結果となってしまいました。
そしてF1チームへ供給の道を模索していたVRT35型エンジンも、いくつかのチームからは前向きな返答があったとされていますが、前述したように日産の経営悪化などの影響もあって実現せず、その後もVRT35型エンジンの開発は細々と続けられたと言われていますが、結局日の目を見ることはありませんでした。
そんな悲劇のマシンであるNP35ですが、現在も神奈川県座間市にある「日産ヘリテージコレクション」にて動態保存がなされており、「NISMOフェスティバル」などのイベント時にその快音を聞くことができるのはありがたいところです。