北海道の美唄市と富良野市を結ぶ「道道美唄富良野線」の未開通区間が2024年8月26日に開通し、全線通行できるようになりました。総工費は259億円となるものの「短縮時間はたったの4分?」と否定的な声もありますが、新ルート誕生の理由にはどのような背景があるのでしょうか。
■札幌から観光地・富良野へ行ける新ルートの誕生! その理由は?
2024年8月、北海道の「道道美唄富良野線」が全線開通しました。
この区間が開通したことで従来のルートよりも所要時間は4分短縮されることになったようですが、その他にもメリットはあるのでしょうか。
北海道の空知地域は、札幌と旭川という道内屈指の大都市に挟まれたエリアであるため、道央自動車道や国道12号といった主要な道路が通っています。
一方で同じく北海道の上川地域は農業が盛んで、道内の農業生産額の10%がここから生み出されています。
こうした空知地域の美唄市と上川地域の富良野市を結ぶ「道道美唄富良野線」(以下美唄富良野線)が2024年8月26日に全面開通しました。
全長55.8kmの道路です。これまで、国道452号と重複する区間を含め38.5kmが供用済みとなっていましたが、美唄市と芦別市の間にある山間部のルート、17.3kmの開通により、全面開通に至りました。
なお総工費は追加工事なども含めて259億円だったと言います。
そんな美唄富良野線の開通を受けて、SNSでは「美唄富良野線開通でどれだけ短縮するのかと思ったら4分だった…」、「美唄富良野線、ウン十年かけて作って4分しか短縮できないのは悪手では?」 など、否定的な声も見られます。
この4分というのは、札幌から富良野へ行く場合に短縮される時間のこと。
美唄富良野線の全面開通前は、道央道の三笠インターチェンジを下りて道道岩見沢三笠線を使い2時間1分かかっていました。
それが、美唄インターチェンジで下り美唄富良野線を使えば、1時間57分の所要時間になるということです。
たしかに4分というと、それほど大きな時間短縮には感じません。美唄富良野線の開通で得られるメリットは、あまりないのでしょうか。
■なぜ美唄富良野線は出来たのか? その理由とは
ここで、先ほども取り上げた、札幌から富良野へのルートをあらためて見てみましょう。
札幌から三笠あるいは美唄までは、道央道を走るので従来のルートも新たなルートも直線的で走りやすい道です。
しかし、道央道を下りてからのルートには、大きく異なる部分があります。
従来のルートで岩見沢三笠線を走りきった後、国道452号に入り富良野へ向かいます。
この国道452号の区間は急なカーブが続き、走るのに注意が必要です。
カーブの多い区間を過ぎると、美唄富良野線の以前より開通しているルートと合流します。
一方、美唄富良野線で今回、開通した部分には全長654mの「東美唄トンネル」、全長1821mの「幌子トンネル」が貫通し、可能な限り直線的になるようにした経路設計の努力がうかがえます。
短縮される時間はわずか4分とはいえ、ドライバーが感じるストレスや事故のリスクを軽減するのが、美唄富良野線だといえるでしょう。
何より、ラベンダー畑やドラマ「北の国から」のロケ地として全国的に知られる富良野へのアクセスが向上することは、地元の人々だけでなく観光客にとってもメリットがあります。
ルートが複数できれば、こうした観光シーズンに走る車が分散されますし、降雪時や万が一、災害が発生した際も物資輸送ができないリスクを減らせるでしょう。
実際、北海道開発局も美唄富良野線建設の目的を、「南空知地域と上川南部地域の短絡ルートが形成され、農産物流の支援、観光アクセス向上等に寄与します」としています。
そんな美唄富良野線について、北海道空知総合振興局札幌建設管理部の担当者は次のようなコメントしています。
「今回、新たに開通する美唄市から芦別市までの区間は、約40年という長期の工事を経て完成しました。
この路線の開通により、観光地へのアクセスが良くなり、物流がスムーズになることで地域経済の活性化が期待されています。
さらに、道路網の多重化により災害時の迂回路も確保され、地域の安全性が一層高まります。
ぜひ、この新しい道路を利用して、地域の魅力や便利さを実感してください」
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やはりルートの選択肢が増えることや新たな設計の道路ができることは、短縮される時間は限られていても、通航する人にとっては少なくないメリットがありそうです。
なお2024年の冬において、美唄富良野線は安全面での検討を行うため、美唄ダムから国道452号までの区間で通行止めとなる予定です。