日産を象徴するスーパースポーツカー「GT-R」(R35型)の生産終了がついに来年2025年となってしまいました。次期「“R36”GT-R」がどうなるか、考察します。
■17年続いた「“R35”GT-R」の歴史もいよいよ終焉へ
日産を象徴するスーパースポーツカー「GT-R」(R35型)は、2007年発売から15年以上にわたって常に進化を続けてきましたが、来年2025年に生産を終えることが発表されました。
2024年9月現在、日産から後継モデルの次期「“R36”GT-R」に関する情報は発表されていません。新型GT-Rはどのようなカタチで再登場するのでしょうか。
日本が世界に誇るスーパースポーツカー、日産「GT-R」。日産を象徴するモデルですが、もはや「日本の宝」と言って過言ではないでしょう。
現行R35 GT-Rのデビューは2007年12月でした。今からもう17年ほど前のことです。
ただR35 GT-Rは開発当初から短期間のフルモデルチェンジを前提とせず、改良を重ねて熟成させていくことにしていた背景があります。
そのため輸入車に多く見られる「イヤーモデル」制を採用し、年次改良を重ねていく手法が取られています。
多くの国産車は2、3年でマイナーチェンジを実施しながら、おおむねデビュー5年から6年でフルモデルチェンジという周期をとっているので、17年というモデルスパンは異例です。
デビューしてから今までの約17年の間には、安全や環境に関わる規制が大きく強化されていきました。
年次改良でその対応を進めていきましたが、年々厳しくなる環境性能にスポーツカーが対応していくのはとても大変なこと。2020年代に入るとR35 GT-Rの存続が危うくなり、次期新型「R36 GT-R」の噂を見聞きする機会が増えていきました。
2021年9月に発表された2022年モデルおよび特別仕様車「Premium edition T-Spec」と「Track edition engineered by NISMO T-spec」は「R35 GT-R」最後のモデルかともささやかれていたところ、2023年1月に2024年モデルの発表があり、同月開催された「東京オートサロン 2023」で、特別仕様車「Premium edition T-Spec」「Track edition engineered by NISMO T-spec」のお披露目が行われ、大注目を集めました。
2022年モデルの次が難しいとされた理由のひとつに、厳しくなった排気音の音圧規制がありました。
2024年モデルが発売できた背景に、排気音の周波数の調整にかなり苦労したものの規定値以内に収められたことがあったと開発責任者が語っていました。
2022年の時点でデビューから15年が経過しており、基本設計の古さは否めません。
いまだに6速ATというギア数の少ないトランスミッションを搭載したスポーツカーはR35 GT-Rぐらいになってしまいました。
しかし熟成に熟成を重ねたR35 GT-R 2024年モデルは、試乗したモータージャーナリストをはじめ非常に高い評価をしています。
そして2024年3月14日、日産はGT-Rの「2025年モデル」を発表します。
しかしいっぽうで日産は、2025年モデルを「GT-Rの集大成」とし、2025年モデルを最終モデルにすることと、2025年8月を目処に生産を終了することが伝えられました。
■新型「“R36”GT-R」はどんなクルマになるのか
2023年10月に開催された第1回「ジャパンモビリティショー 2023(JMS2023)」で日産は「ハイパーフォース」と名付けた1台のBEV(バッテリーEV:電気自動車)コンセプトカーを初披露しました。
同ショーで披露されたBEVコンセプトカーシリーズ最後の1台であり、その姿は次期“R36”GT-R(新型GT-R)を想起させる斬新なものでした。
日産は「R35 GT-R 2024年モデル」の発表と生産終了のアナウンスに際し、次期型の研究開発を行うことを明言しています。
そんな流れをみる限り、新型GT-RがBEVとなる可能性は十分にあります。
既に市販化されている日産のBEV「アリア e-4ORCE」は、4輪ブレーキと前後2モーターを統合電子制御する4WDシステムを搭載し、その実力はGT-Rに匹敵するレベルとも評価されています。
かと言って、日産を代表するスーパースポーツカーの次期型が、既存の「e-4ORCE」に少し手を加えて搭載するといったお手軽な手法を取るとは思えません。
思い起こせばR35 GT-Rの4WDシステムはトランスアクスル方式を採用し、後輪側に配置したクラッチ・トランスミッションなどのユニットから、わざわざ前輪へドライブシャフトを戻すという「行って来い」的構造で世界中を驚かせていました。
新型GT-Rでも、世界があっと驚くような新しい仕掛けがあることに期待してしまいます。
デザインのヒントは、JMS2023で登場したハイパーフォースにありそうです。
GT-Rのご先祖である歴代の日産「“スカイライン” GT-R」は、一部の例外を除けば、2ドアクーペのしっかりとした箱型ボディと丸形4灯テールライトをアイデンティティとしています。
スカイラインから独立して誕生した現行のR35 GT-R、そしてハイパーフォースにもそうしたアイコンはしっかりと継承されていることから、まだ見ぬ新型GT-Rでもしっかり継承されるでしょう。
またSNSなどには、世界のCGアーティストたちが思い思いに予想するレンダリング(イメージCG)が公開されていて、新型GT-Rを予想するのに大きなヒントとなりそうです。
なかでも、2022年にAvante Design社とデザインディレクターのRoman Miah氏が共同で制作した新型GT-Rのレンダリングは、あたらしさのなかに歴代スカイライン GT-Rをオマージュしたデザインを取り込んだスタイリングで注目を集めました。
しかも単なるCGに留まらず、現行R35 GT-Rをベースにしたコンプリートカー、その名も「R36 GT-R」として市販する動きまであるというから驚きます。
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ハイパーフォースは、高強度カーボンボディに全固体電池と高出力なモーター、そして進化版e-4ORCEを組み合わせ、最高出力1000kWを発揮する超強烈なパフォーマンスを誇るといいます。
確かにそれはそれで、GT-Rらしい「物凄いクルマ」となりそうです。
ただ筆者(自動車ライター 佐藤 亨)としては、GT-Rがエンジンを搭載せずBEVになってしまうのは寂しい気もしています。
上記の新技術のなかでも、特に全固体電池に関しては技術が確立されたものではなく、市販車へ実装するまでにはまだ数年単位で開発期間がかかるでしょう。
そのつなぎとして、高出力なエンジンを基軸としたハイブリッド車の新型GT-Rが登場する可能性についても、密かに期待したいと思います。