近年都市部で、グレーの舗装が施された道路を見かけるようになりました。一体どのような理由があるのでしょうか。
■都市部特有の「猛暑」 やわらげる効果
道路の舗装は黒いアスファルトが一般的ですが、近年都市部ではグレーの舗装を見かけるようになりました。
一体どのような理由があるのでしょうか。
グレーの舗装路面が採用され始めた背景として、都市部で深刻化している「ヒートアイランド現象」があります。
ヒートアイランド現象とは、都市の気温が郊外よりも高くなる現象です。都市の気温分布図を描くと、高温域が島のような形状に分布することからヒートアイランド現象と呼ばれるようになりました。
特に日本では、東京都市圏で顕著なヒートアイランド現象が見られます。気温分布図に表すと、23区部を中心に高温域が広がる一方で、多摩地域などでは土や緑地などの占める割合が都心部より多く、表面温度は低い傾向です。
このヒートアイランド現象の要因として、主にふたつの理由があります。
まずひとつ目が「地表面の人工化」です。アスファルト舗装やビルの増加などにより、それまで土や緑地だった場所が人工物で覆われるようになりました。
もし土や緑地があれば、水蒸気が気化熱として作用し熱を逃がしますが、これらの減少により気温上昇を引き起こしてしまうのです。
特に都市部では道路の面積が10~20%を占めており、夏季になるとアスファルト舗装は表面温度が約60℃に達することもあり、ヒートアイランド現象の非常に大きな要因となっています。
さらに、コンクリートなど熱を吸収する建造物の増加や、太陽熱反射率の低下なども高温化の原因とされています。
そしてもうひとつが、「人工排熱の増加」です。
都市生活では空調や照明、クルマ、工場などは欠かせませんが、これらから排出される熱の増加も要因になるのです。そして、それが大きな都市ではまとまって大量の熱が生み出され、気温上昇の一因になります。
こうしたヒートアイランド現象の対策として、グレーの舗装が施されるようになったのです。
実はグレー色の舗装道路には、主に「遮熱性舗装」「保水性舗装」とふたつの種類があり、同じように思えてもまったく性質が異なっています。
遮熱性舗装とは、赤外線を反射させる樹脂を表面に塗ったり、遮熱モルタルを充てんしたりすることで、道路の蓄熱を防ぐ仕組みです。施工費用は通常のアスファルトと比較し、約4倍となりますが、ヒートアイランド現象の対策には効果的といえます。
いっぽうの保水性舗装とは、舗装内部に雨水を保水させ、水が蒸発する際の気化熱で路面温度の上昇を抑制する仕組みです。
しかし、デメリットもあります。効果が持続する期間が3日程度と短く、3日以上雨が降らない場合は、散水車によるメンテナンスが必要になります。
このため、主に一般道路や自動車専用道路では遮熱性舗装が採用されている傾向にあります。
性質は異なるもののいずれのグレー色舗装とも、一般的な黒色のアスファルト舗装道路と比較して、路面温度を10度以上も低下させる効果があり、ヒートアイランド現象への有効な対策として期待されています。
ちなみに東京都では、東京オリンピックにおける「競技環境整備」の一環として、グレー色の舗装道路が施工され、現在も継続されています。
2023年3月末現在で、保水性舗装を約22km、遮熱性舗装を約168kmの合計190kmにわたり施工済みです。
今後、この施工範囲の拡大が進めば、都市部での猛暑は少し和らぐかもしれません。